「不在で戻ってきた荷物」――この一件が、EC事業の現場では想像以上に重い。
件数自体は注文全体の数パーセントに過ぎない。しかし、その1件ごとに、OMS(受注管理システム)での注文取り消し、基幹システムへの個別仕訳登録、お客様への返金可否の判断、そして「せっかく買ってくれたのに届かなかった」という顧客体験の毀損が同時に発生する。
本記事では、定期便・ギフト・高単価商材・生鮮食品など、業種を横断して深刻化する「持ち戻り問題」の構造を、現場の声とともに整理する。そして、配送追跡メールの開封率64%[2]という購入後最大の接点を活かして持ち戻りそのものを未然に減らす、自動リマインダーというアプローチを紹介する。
「持ち戻り」とは、配送員が配達に伺った際に受取人不在で荷物を渡せず、配送会社の営業所まで一旦戻る状態を指す。再配達依頼があれば再度配達されるが、依頼がなければ保管期限(通常7日間)[3]を過ぎて差出人(EC事業者)に返送される。
国土交通省が公表する「宅配便の再配達率サンプル調査」[1]によれば、宅配便の再配達率は近年改善傾向にあり、令和7年(2025年)10月時点で約8.3%となっている。直近の推移は以下の通りだ。
政府の削減目標(2025年度7.5%程度)[1]には届かないものの、改善は着実に進んでいる。一方で、令和6年度のEC市場は物販系分野で約15.2兆円、宅配便取扱個数は年間約50億個に達しており[1]、母数の拡大によって再配達依頼が行われないまま事業者に持ち戻る荷物の絶対数は依然として無視できない。EC全体の注文数に対する持ち戻り率は数パーセントだが、注文数が増えればそのまま件数も比例して増える。
そしてEC事業者の多くにとって、この「数パーセント」は件数の小ささに反して非常に重い意味を持つ。
持ち戻りの最大の特徴は、戻ってきた商品をスムーズに再販在庫に戻せない点にある。
生鮮・冷凍食品・スイーツ・パン・乳製品といったカテゴリは、温度帯保証が崩れた時点でほぼ100%が廃棄対象となる。コスメや健康食品も、配送往復後の品質保証ができないため再販を控えるブランドが多い。高単価アパレル・ブランド品では、外箱・タグ・包装の状態がそのまま商品価値であり、戻ってきた在庫の再販価値が大きく下がる。家電・精密機器も同様の構造を抱えている。
つまり「持ち戻り=そのまま売上損失」になりやすいのは、特定業種に限らない。商材特性や品質保証ポリシーによって、多くのEC事業者が共通して直面している構造である。
持ち戻り時の対応ポリシーは事業者によって大きく分かれる。あるブランドは「お客様の不在による持ち戻りのため、全額請求のまま返金なし」、別のブランドは「お客様の不在には責任があるが、ブランドとして全額返金で対応」。
どちらを選んでも痛い。返金なしの場合は「届かなかったのに請求された」という顧客体験の毀損を抱える。返金ありの場合はそれに加えて現場の事務工数が大きく膨らむ。実は、後者のほうが企業としては苦しいケースが多い。
あるEC事業者は次のように語る。
「持ち戻りの件数自体は多くない。ただ、戻ってきた1件1件について、通常の販売として売上計上できないのでOMS上で注文の取り消しが必要になり、その他収益のような科目で基幹システムに一件ずつ手動登録する作業が発生する。返金処理も含めると、件数は少なくても1件あたりのインパクトが大きい」
これは「単純な事務作業の話」ではない。持ち戻り対応は、財務・物流・CSの3部門にまたがって個別判断が要求される、構造的に重い業務なのである。
EC購入には、他の購買行動にはない"楽しみ"が含まれる。誕生日のギフト、自分へのご褒美コスメ、月に一度の定期便、家族のための日用品。「届く瞬間」そのものが商品体験の一部になっている。
その荷物が不在で持ち戻り、再配達依頼もされないまま保管期限を迎えたとき、顧客が抱くのは「自分のミスで台無しにしてしまった」という気持ちだ。これはブランド側に直接的なクレームとして来ないだけに、静かにLTVを蝕む。
EC事業者にとって「お客様に受け取ってもらう」ことは、単なる配送タスクではなくブランド体験の完遂に直結している。
ここまでの構造を一度整理する。食品ECにおける持ち戻り1件は、以下の3つの損失を同時に発生させている。
件数こそ小さいが、1件あたりに発生するコスト総量は、通常の注文1件の利益を簡単に飲み込む。多くのEC事業者にとって、持ち戻りは"見えない赤字センター"になっている。
これだけインパクトの大きい持ち戻りが、なぜ多くのEC事業者で対策の優先順位を上げられないままになっているのか。理由は3つある。
1つ目は、持ち戻りが「配送会社の問題」だと認識されていること。発送後の不在対応はヤマト運輸・佐川急便・日本郵便など配送会社が担い、ECからは見えにくい。実態として持ち戻りは配送会社の通知1通で済まされ、EC側は最終的に戻ってきた商品の在庫処理だけに直面する構図だ。
2つ目は、持ち戻りを"発生確率の問題"だと諦めていること。受取人の都合は事業者ではコントロールできない、と多くのEC事業者が考えている。
3つ目は、配送会社からの不在通知メールが、顧客に読まれていないこと。配送会社の自動通知は事務的な文面で、顧客がメールを開いても「自分の荷物の話」だと気づきにくい場合がある。結果、再配達依頼がされないまま保管期限を迎えてしまう。
しかし、配送追跡メールの開封率は実は64%[2]もある。これは別の見方をすれば、適切な接点さえあれば、持ち戻りは"事業者側からアプローチできる"問題だということだ。
Recustomerでは、配送追跡サービスに統合された機能として「不在通知リマインダー」[4]を提供している。これは、配送会社からの持ち戻り(不在)ステータスを自動で検知し、ブランド側のメールアドレス・デザインで顧客にリマインダーメールを送る仕組みである。
業種を問わず、持ち戻りに悩むEC事業者にとって効くポイントは以下の3つだ。
① ブランドからの「受け取ってください」が届く
配送会社の事務的な不在通知ではなく、自社ブランドの言葉と世界観で「お待ちしています」を伝えられる。生鮮・冷凍品では「鮮度が落ちる前に」、ギフト商材では「お受け取りをお忘れではありませんか」など、商材特性に合わせたメッセージそのものが商品体験の一部になる。
② 再配達依頼率を底上げできる
配送会社の通知1通だけだったところに、ブランド側からのリマインダーが加わる。開封率64%の接点から送られる「あなたの荷物が営業所で保管されています」というメッセージは、配送会社の通知よりも顧客の能動的な行動を引き出しやすい。
③ 工数の発生源そのものを減らせる
持ち戻りが戻ってくる前に再配達につながれば、OMS取消・基幹システム登録・返金対応といった一連の手作業は発生そのものが消える。1件あたりの対応コストが重いEC事業者にとって、これが最大の効果だ。
不在通知リマインダーは「送れば効く」ものではなく、設計次第で効果が大きく変わる。商材を問わず最低限押さえておきたい設計ポイントを整理する。
ECにおける持ち戻りは、件数の小ささに反して、売上・工数・CXを同時に蝕む構造的な損失である。多くのEC事業者がこれを「配送会社の問題」「発生確率の問題」と捉え、対策を後回しにしてきた。
しかし、配送追跡メールの開封率64%という事実は、別のことを示唆している。持ち戻りは事業者側からアプローチできる接点があり、未然に防げる損失だということだ。
本記事のポイントをまとめる。
Q. 不在通知リマインダーは配送会社の通知メールと重複しませんか?
A. 配送会社の通知に加えて、ブランド側からのリマインダーが届く形になります。配送会社の通知は事務的で気づかれにくいケースが多く、ブランドからのリマインダーは開封率・行動率ともに高い傾向があります。再配達完了を検知すれば自動停止するため、重複送信は発生しません。
Q. どのような業種で特に効果が出やすいですか?
A. 食品EC(生鮮・冷凍・スイーツ)、定期便(サブスクリプション)、ギフト・贈答品、高単価アパレル・ブランド品、コスメ・健康食品など、持ち戻り商品の再販が難しく、1件あたりの売上・工数・CXインパクトが大きい領域で特に効果が出やすい傾向があります。ただし、再配達率の改善効果自体は業種を問わず期待できます。
Q. 持ち戻り対応で「返金なし(全額請求のまま)」のポリシーを取っている場合、リマインダーの意味はありますか?
A. むしろこのポリシーの事業者ほど、リマインダーの価値が高くなります。返金なしのままだと「届かなかったのに請求された」という体験が残り、ブランドへの不信を生みます。再配達につながれば、その体験そのものを発生させずに済みます。
Q. 対応している配送会社は?
A. Recustomer配送追跡では、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便・DHLの配送ステータスに対応しています。複数配送会社を併用している食品ECでも、配送会社ごとの個別対応は不要です。
Q. メールの文面はどこまで自由にカスタマイズできますか?
A. 件名・本文・差出人名・差出人アドレス・送信タイミングまで自由に設定できます。ブランドのトーン&マナーや、商品特性(冷凍/チルド/常温)に応じた文面を出し分けることも可能です。
Q. 導入にはどの程度の工数がかかりますか?
A. Recustomer配送追跡を既に導入済みの場合、不在通知リマインダーは設定画面から有効化するだけで利用できます。新規導入の場合も、配送会社の追跡APIとの連携はRecustomer側で構築済みのため、ストア側で実装工数を負担する必要はありません。
「不在通知リマインダー」の業種別設計パターン、文面サンプル、導入効果の試算について、詳しい資料をご用意しています。持ち戻りを"見えない赤字"のままにせず、防げる損失として捉え直すきっかけとしてご活用ください。
※本記事の現場引用は、EC事業者へのヒアリングをもとに匿名化のうえ再構成しています。