はじめに
国内EC市場は年間1兆円規模で拡大を続けていますが、日本の人口減少は確実に進行しています。越境ECはもはや「将来の選択肢」ではなく、成長を維持するための必須戦略へと変わりつつあります。
2026年3月2日、購入後体験プラットフォーム「Recustomer」を運営するRecustomer株式会社は、東南アジア唯一のShopify Platinum PartnerであるJumpstart Commerce社との戦略的提携を発表しました。
これに伴い、同日、国内・越境ECのフロントランナーが集結する「THE CROSS-BORDER EC SUMMIT 2026」を開催。本レポートでは、アジア市場への本格展開を掲げるRecustomer、現地の実装支援を担うJumpstart、そして国内ECのグロースを支えるR6Bの3社が登壇した、記者会見およびサミットの様子を余すことなくお届けします!

会場全景 — THE CROSS-BORDER EC SUMMIT 2026
セッション1: Recustomer 戦略的提携 記者会見
Recustomerの事業概要と成長戦略
Recustomer CEO 柴田泰弘が登壇し、同社の事業と成長戦略について発表しました。「ショッピングの不安・摩擦・コストの解消」をミッションに掲げるRecustomerは、2022年のプロダクトリリース以降、急速に導入企業を拡大しています。
Recustomerが解決する課題
ECにおいて購入をためらわせる最大の要因は、返品・配送・決済・サイズに対する不安です。さらに、カスタマーサポートの問い合わせの大半は購入後の対応に集中しています。Recustomerはこれらの課題を、返品・交換、配送追跡、注文キャンセル、決済という4つのプロダクトで包括的に解決するプラットフォームを提供しています。
■ プラットフォームの主要プロダクト

東南アジアEC市場の巨大なポテンシャル
Jumpstart Commerce CEO Xavier Lee氏は、東南アジアEC市場の最新データと、日本ブランドが市場参入する際の実践的な知見を共有しました。Jumpstart CommerceはShopifyプラチナパートナーとして、Dior、Paula's Choice、The Body Shop、Dover Street Marketなどグローバルブランドを支援しています。
Xavier Lee氏(Jumpstart Commerce CEO)による基調講演
■ 東南アジアEC市場の主要データ
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指標
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数値
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デジタル消費者数
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4億200万人
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デジタルウォレット保有率
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70%
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1日あたりオンライン時間
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8時間
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越境EC GMV見込み
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850億ドル
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これらの数字が示すのは、東南アジアが世界で最もデジタルに親和性の高い消費市場のひとつであるという事実です。越境ECのGMVは850億ドル規模に達する見込みであり、日本のEC事業者にとって巨大な成長機会が広がっています。
■ 国別ハイライト
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国
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特徴
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インドネシア
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最大市場・人口約3億人
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フィリピン
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2021年にオンライン小売93%成長
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シンガポール
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小国ながらオンライン販売270億ドル
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市場参入で押さえるべきポイント
ただし、東南アジア市場への参入は単純ではありません。Xavier Lee氏は、成功のために押さえるべきいくつかの重要なポイントを指摘しました。
まず、約2億7,000万人のムスリム消費者に対応するためのハラール認証。国ごとに異なるVAT/GST制度への準拠も必須です。決済面では、フィリピン・ベトナム・インドネシアにおいて取引の70%を占める代金引換(COD)への対応が不可欠となります。
消費者の商品発見チャネルも大きく変化しています。デスクトップ検索からTikTokやInstagram、ライブコマースへの移行が急速に進み、ライブコマースだけでGMVに176億ドルの貢献があるとされています。
セッション2: クロスボーダーECサミット 2026
テーマ:「世界基準の視点で見直す ── 日本と海外の違いから導くECの勝ち筋とは」
Recustomer辻野のモデレートのもと、Xavier Lee氏、R6B代表取締役 師橋淳一氏、R6B 久保氏、R6B 寺田氏によるパネルディスカッションが行われました。R6Bは日本国内No.1のShopify構築会社であり、約70社のグローバル向け越境ECサイトを構築。
パネルディスカッション — 左から辻野、Xavier Lee氏、R6B社 師橋氏、久保氏、寺田氏
■ 返品率の違い
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市場
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返品率
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日本
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3〜5%
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シンガポール
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約20%
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SEA全体
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最大30%
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パネルディスカッションで最も注目を集めたテーマのひとつが、返品率の違いです。日本では3〜5%にとどまる返品率が、シンガポールでは約20%、SEA全体では最大30%に達します。この差は、SEA市場では返品率が高いことを前提としたビジネス設計が求められることを意味しています。
重要なのは、返品を「損失」としてではなく「再購入への入口」として捉え直す発想です。返品をストアクレジットやロイヤルティポイントで返し、再購入につなげる仕組みが効果的であり、まさにRecustomerの返品・交換プラットフォームが価値を発揮する領域です。
カスタマーサポートの現地基準
東南アジアでは、サポートはチャットボットによる24時間365日対応がすでに標準となっています。AI対応が人間よりも速い応答を実現している事例も増えており、マーケットプレイスでは値引き交渉が常態化しているため、brand.com(自社EC)では割引コードを活用した差別化戦略が求められます。
ローカライズの効果
「英語対応だけでは不十分」—これはパネリスト全員が共通して強調したポイントです。現地語へのローカライズにより、CVR(コンバージョン率)が40%向上した実績が報告されました。言語対応は単なる翻訳ではなく、売上に直結する投資であることが改めて示されました。
セッション3: 国内EC・海外ECの勝ち筋
伸びている企業の共通項
パネルディスカッションを通じて浮かび上がった、越境ECで成長を遂げている企業の共通項は明確でした。ひとつは徹底したローカライズ意識。もうひとつは素早い意思決定と行動力です。現地の消費者が当たり前と考える体験を、妥協なく提供できるかどうかが成否を分けます。
AIとライブコマースの融合
新たなトレンドとして注目されているのが、AIとライブコマースの融合です。L'OréalがAIアバターによる24時間ライブコマースを実施するなど、テクノロジーの活用が進んでいます。AIアバターはエンターテインメント性でコンバージョンを高め、ファッションブランドへの広がりが注目されています。
AIエージェント対応
ChatGPTやGeminiがECサイトへの集客チャネルとなる時代が到来しつつあります。構造化データの整備を含むAIエージェント対応は、今後のECにおいて不可欠な施策です。SEOに加えて「AEO(AI Engine Optimization)」を意識した取り組みが重要になるでしょう。
双方向の越境EC
越境ECは一方通行ではありません。日本から東南アジアへの展開では、メイドインジャパンのブランド力がまだ健在であり、成功の鍵はローカライズの徹底にあります。一方、東南アジアから日本への参入においては、時間指定配送やCS品質の高さなど、日本市場特有の要件が参入障壁となっています。
まとめ: 3社提携の意義
クロスボーダーECサミット 2026 パネルディスカッション全景
今回の記者会見で発表されたRecustomer × Jumpstart Commerce × R6Bの3社提携は、日本のEC事業者が東南アジア市場に進出する際の3つの柱を網羅しています。
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パートナー
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提供する価値
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Recustomer
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購入後体験(返品・交換・保証等)のプラットフォーム。SEAの高い返品率への対応基盤
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Jumpstart Commerce
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東南アジア市場に精通したShopifyプラチナパートナー。物流・決済・ローカライズの現地知見
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R6B
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国内No.1 Shopify構築会社。約70社のグローバルEC構築実績とアメリカ子会社の運営ノウハウ
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日本の人口減少が進む中、東南アジアの4億人超のデジタル消費者は、EC事業者にとって無視できない成長機会です。越境ECは「余裕があればやる挑戦」ではなく、持続的な成長のための必須戦略です。
メイドインジャパンのブランド力は東南アジアで依然として高く評価されています。しかし、ローカライズされたUI/UX、複数決済手段への対応、現地水準の返品体験、チャットボットによる24時間カスタマーサポートなど、現地の消費者が「当然」と考える体験を提供できなければ、そのブランド力を活かすことはできません。
3社の提携により、EC構築からローカライズ、購入後体験の最適化まで、越境EC展開に必要な要素をワンストップで支援する体制が整いました。東南アジアという巨大市場への扉は、今まさに開かれています。
お問い合わせ
越境ECの展開やRecustomerの導入にご関心をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
東南アジア市場への展開についての個別相談や、購入後体験の改善に関するデモのご依頼も承っております。
2025年返品・交換レポート:https://recustomer.me/returns-and-exchanges-report-2025
資料請求:https://recustomer.me/books
本レポートは、Recustomer 2026 記者会見 & THE CROSS-BORDER EC SUMMIT 2026 の内容をもとに作成されました。