
課題
・知名度が低いブランドのため、サイズや品質の不安から初回購入ハードルが高かった
・実店舗で試着ができず、顧客に商品の良さを届けるきっかけが掴めずにいた
・手動での返品対応に限界があり、返品・交換ポリシーを制限せざるを得なかった
活用
・Recustomerを導入し「到着後7日以内は返品・サイズ交換無料」というポリシーを新設
・「返品・キャンセル」の自動化で、業務負荷を下げつつ自由度の高い返品対応を実現
・「お試し購入」や「配送追跡」も活用し、購入前の不安解消と購入後の顧客接点を強化
効果
・導入2ヶ月でアパレルコレクションのコンバージョン率が約3倍に上昇
・「返品できる」安心感から、初回から複数点を購入する顧客が増加
・「サイズ違いを両方試す」等の提案が可能になり、納得感のある購入体験でロイヤル顧客増加
「届くと気に入ってもらえるのに、初回購入のハードルが高い」――立ち上げ期のブランドが直面する課題を、SWOON SUPPLYは「返品マーケティング」の発想で乗り越えました。
Recustomerを導入後、初回から複数購入する顧客が増加し、顧客のLTVも向上。本記事では、前年比最大2倍の成長を支える顧客との関係構築の秘訣、Recustomerの「返品・キャンセル」「お試し購入」「配送追跡」を活用した購入体験の設計、そしてブランドの今後について、SWOON SUPPLY の藤井伸之さん(のぶさん)にお聞きしました。
SWOON SUPPLY ブランドサイト:https://kibacoworks.com/
鎌倉発のブランドが、自社ECで急成長
鎌倉に工房を構えるKIBACOWORKS。同社の歴史は、木製雑貨の製造販売から始まりました。創業当初は、木製のiPhoneケースやモーテルキー、サングラスなど、「木という素材を使いながらも、今っぽいもの」を作ることにこだわってきたといいます。

▲ECサイトより
創業からしばらくの間は、OEM事業を中心に運営。自社ブランド事業に本格的に注力し始めたのは2019年10月でした。2021年1月にはアパレルブランド「SWOON SUPPLY(スウーンサプライ)」を立ち上げ、ECの運営も本格化。同ブランドは、2025年8月にSWOON SUPPLY株式会社として独立を果たしました。2025年に入ってからも、毎月前年同月比1.5~2倍という成長を続けています。
SWOON SUPPLYを率いるのは、同社の代表取締役でデザイナーの藤井伸之さん(以下、のぶさん)。顧客層は「自分みたいな人」と、のぶさんは言います。
「ペルソナという概念があると知って、実際に複数のお客さんにインタビューをしてみました。表面的には年齢や属性が違っていても、趣味や好きなものについて深く聞いていくと、オシャレカフェより大衆居酒屋が好きだったり、高級マンションよりも古民家が好きだったりして、『俺じゃん!』って思うんです。
SWOON SUPPLYのお客さんは、自分の仲間や友達のような人です。そういう人に『こうなりたいな』と思ってもらえるのが、ブランドをやっている自分のような人間だったり、SWOON SUPPLYがコラボしているショップのオーナーだったりするのだと思います」(のぶさん)

▲ECサイトより
SWOON SUPPLYのお客さんの多くは、Instagramをきっかけにブランドを知ります。そこで展開するコミュニケーションも、友達と話すようなスタイルです。
「DMで商品に対する問い合わせも受け付けますが、本当にこの感じで喋るんです。言葉遣いは全然丁寧ではないのですが、ホスピタリティは大事にしているので、『丁寧な接客をありがとうございます』ってよく言われますね」(のぶさん)
DMの内容は、純粋な問い合わせだけではありません。のぶさんのストーリーに対するリアクションや、「今日面白いことがあったよ」という雑談をすることも。「個人アカウントだと勘違いする人がいる」というのぶさんの言葉にもうなずけるくらい、「人」対「人」のやり取りを大事にしている様子が伝わります。
商品デザインの制作過程も、着想の段階や、作りかけの段階からストーリーに投稿し、お客さんとの会話のきっかけにしています。

「作ったデザインが気に入ったのでスマホの待ち受けにした、と投稿したら、『自分もその待ち受け画像が欲しい』というDMが来て。『欲しい人にはお渡しします』と呼びかけたら、一晩で200件ものDMが届きました。発売前からデザインを待ち受けにしてもらい、毎日ブランドに触れてもらったことで、売上にも良い影響がありました。アイテムの発売日に多くの方にお買い上げいただき、初日の売上が爆発的に伸びました」(のぶさん)
「初回購入のハードルを下げる」方法をずっと探していた
急成長を遂げているSWOON SUPPLYですが、のぶさんがアパレルに本格的に注力し始めた直後は、大きな壁に直面していました。それは「知名度がないアパレルブランドの商品をECで買ってもらうのは、ハードルが高い」という課題でした。
特にアパレルは、「サイズは合うのか」「品質は大丈夫なのか」といった不安を抱えやすい商品カテゴリー。SWOON SUPPLYの場合、実店舗で試すことができず、ブランド立ち上げ直後でレビューも少ないといった状況から、初めて購入するハードルが高くなってしまっていたのです。
一方で、実際に購入したお客さんのレビューでは、満足の声が多く寄せられていました。
「商品が届いたら、とても気に入ってもらえて『生地いいですね』とか『デザインすごく気に入りました』という声をいただきます。でも、最初に手に取ってもらうのが本当に難しい。そのハードルを下げる方法を、ずっと考えていました」(のぶさん)
のぶさんはそのようなタイミングで、Recustomerのウェビナーを視聴。そこで紹介された「返品マーケティング」という考え方に、強くひかれたといいます。
「めちゃくちゃおもしろい!と思って。ウェビナーを見終わってすぐ『Recustomer返品・キャンセル』のShopifyアプリをインストールしていました」(のぶさん)
URL:https://apps.shopify.com/recustomer
▲返品マーケティングとは
返品マーケティングとは、返品にかかる業務を効率化することで自由度の高い返品ポリシーを用意し、購入のハードルを下げ、購入率の向上につなげていく発想です。お客さまに「もし合わなければ返品できる」という安心感を提供することで、無理のないかたちで、購入の後押しが可能になります。
一度手に取ってもらうことさえできれば、商品の良さを実感いただける。そのようなSWOON SUPPLYの状況に、返品マーケティングの考え方はぴったり合致しました。
Recustomer導入後、お客さまの購買行動に生じた変化とは?
SWOON SUPPLYが2022年春から導入している「Recustomer返品・キャンセル」は、返品・交換に関するオペレーションを構築するツールです。お客さまからの返品・交換をメールで受け付け、人が手作業で手続きする場合、対応できる件数には限界が出てしまいます。その結果、返品・交換のポリシーを狭く設定せざるを得ない、という制約が生まれていました。
これに対し、「Recustomer返品・キャンセル」は、主に2つの機能を軸に、お客さまの購入体験の向上と業務効率化を同時に叶えます。
1つ目は「返品・交換受付センターの構築」。お客さまは受付画面に注文番号と郵便番号、またはメールアドレスを入力するだけで、返品のリクエストを送信できます。
2つ目は「自動承認・拒否機能」。あらかじめ設定したロジックに基づき、返品・交換リクエストを自動で承認または拒否し、ステータスを進めてくれるものです。事業者が目視でメール内容を確認して返品可否を判断し、手続きを行う、という作業が不要になります。

▲Recustomer返品・キャンセルの画面イメージ
SWOON SUPPLYでは、「商品到着から7日以内であれば無料でサイズ交換・返品を承る」というポリシーを新設。すると導入から2ヵ月で、アパレルコレクションのコンバージョン率が約3倍上昇するなど、短期間で定量的な影響を実感できたといいます。
さらに、一人ひとりのお客さまの購買行動にも変化が現れました。
「Recustomerの導入前は、初回の購入で複数のアイテムをお買い上げいただくことは少なかったんです。最初に1点買って、しばらくしてもう1点買って、3回目くらいから複数購入、という買い方が大半でした。導入後は、初回から3点、4点と複数購入をしてくれる人が増えました。返品できるという安心感が、『それならこれも買ってみよう』という行動を後押ししたのだと思います」(のぶさん)

DMやチャットでの接客の際も、返品可能とお伝えすることが「最後の一押し」になっているそうです。
「アパレルのお問い合わせのほとんどが、サイズに関するものなんです。サイズを悩んでいるお客さんに、『返品無料なので、自宅で試着してみてください』『LにするかXLにするか悩んでいるなら、両方買って気に入った方だけ残しては?』と言えるようになりました。そう提案すると、ほぼすべての方が納得して購入してくれます」(のぶさん)
「懸念していた返品率の上昇もほとんど見られなかった」と、のぶさん。「知らないブランド」という不安を取り除くことで購入のハードルを下げつつ、実際の返品は増やさないという運用が実現しています。
ロイヤル顧客を増やす秘訣は、「最初の購入体験」を良いものにすること
ゼロから立ち上げたブランドを大きくしていく中で、のぶさんが実感したのは「お客さんへの初期の対応がとても重要」ということです。その象徴的な例として、あるお客さんのエピソードを明かしてくれました。
「初回購入の際、沢山のご質問を頂き、接客に時間がかかったお客さんがいました。一人で接客をやっているので、対応するのは大変だったのですが、サイズ感や配送の方法、ブランドのストーリーについて徹底的に会話をしました。
すると、その方は『こんなブランド、出会ったことない』と言って気に入ってくれて。ぴったりのサイズが見つかってからは、多数のアイテムをお買い上げくださるお客さまになりました。ただ購入するというよりも、応援してくれる、ブランドを盛り上げてくれる存在です。最初の対応が大切と気づけたのも、Recustomerと出会って、返品マーケティングという考え方を知ったことが大きかったです」(のぶさん)

また、Recustomerをはじめとする、お客さんの検討をしやすくするテクノロジーを導入していることそのものが、ブランドへの信頼につながっている側面もあるそうです。
「Recustomerのほかにも、サイズレコメンドのツールを入れているのですが、『ユーザーのことをすごく考えてくれているブランドですね』と言われたことが何度もあります」(のぶさん)
最初の接点での丁寧な対応が、長期的な信頼関係とロイヤルティを生む――。それを支える基盤の一つに、Recustomerがあると言えるでしょう。
「配送追跡」「お試し購入」も導入。成果につなげるコツは「繰り返し周知すること」
SWOON SUPPLYは、「返品・キャンセル」以外のRecustomerのサービスも積極的に活用しています。
「Recustomer 配送追跡」は、お客さまが配送状況を手軽に確認できる機能です。ECサイト上で配送状況を確認できるほか、「出荷」「配送中」といったステータスを、メールやプッシュ通知でお知らせすることも可能に。導入時に「びっくりするぐらいのクリック率」(のぶさん)を確認したことから、通知画面でおすすめ商品をアピールする運用も行っていると言います。
「Recustomer お試し購入」も、ECが抱える「実物が見られない」不安を解消する機能です。注文時には決済を行わず、商品が自宅に到着し、「お試し期間」が終了してから、返送商品の金額を差し引いた注文代金が自動的に決済される仕組みです。顧客は気に入った商品はそのまま手元に残し、返品したい商品のみ、返送手続きを行うことになります。
▲Recustomerのプロダクト
「これもよく使われていて、複数購入の数がさらに増えました。『いたずらかな?』と思うくらい多くの点数を購入いただいたお客さまもいたのですが、そのまま全部購入いただきました。サイズ違いを複数購入するよりも、複数の異なる商品をお試しする顧客が多いという傾向も、興味深いです」(のぶさん)。
Recutomer製品を使いこなし、お客さまとの結びつきを強めているSWOON SUPPLY。お客さまが購入を迷ったとき、「返品無料」「お試し購入可能」を思い出してもらえるよう、さまざまな接点で繰り返し周知をしています。
「ECサイトでは、アパレルのページを来訪した人には『7日間返品・サイズ交換無料』のポップアップを出しています。メルマガやLINEでも、繰り返しお知らせしていますね。一回だけでは誰にも伝わらないので、ことあるごとに、なにかに絡めて伝えるようにしています」(のぶさん)

▲ECサイトのチャットでも、お試し購入をアピールしている
ブランドの世界観を言語化し、「語れるストーリーがある」状態を目指す
SWOON SUPPLYはさらなる成長に向けて複数の取り組みを進めています。中でも注力しているのが、ブランドの世界観の言語化です。
「商品にはストーリーがあり、いろいろな思いを込めて作っていますが、まだ伝えきれてないなと感じます。今は、買った人が誰かに、『その服かっこいいね』と言われた時に語ってもらえるようなストーリーを準備しています。たまたまSWOON SUPPLYを知って、『かっこいいから買ってみた』という人が、2回目、3回目も買い続けてくれたり、『ここの服しか着ない』というほど好きになってくれたりするには、必要な要素だなと思います」(のぶさん)
たとえば昨年、7〜8ヶ月という時間をかけて、コンセプトを策定。人生を全部書き出すところから始め、自身の価値観や、ブランドへの思いを言語化していきました。発表すると、InstagramストーリーでたくさんのDMが届きました。

▲コンセプト策定の様子は、noteでも発信している
今年、11月には実店舗もオープン。毎日1、2組、お客さんが工房に尋ねてきてくれるようになったのが、店舗化のきっかけでした。最初は人が多く集まる鎌倉の観光地にお店を構えることを検討していましたが、これまで使ってきた工房を、そのまま店舗にすることに。
「お客さんは、半分くらいが県外からわざわざ来てくれます。工房を見て、『インスタライブで見てる光景だ』『いつも写真撮っているのここですよね』みたいな会話をするんです。たぶん“聖地”的な感覚があるのかなと思って。全国から来てくれる人たちは、おしゃれな場所にある店舗ではなく、『いつもインスタで上がってる工房と、それがある街』が見たいんだなと思って」(のぶさん)
ブランド名の浸透も重要な課題です。KIBACOWORKS全体におけるSWOON SUPPLYの売上構成は、2022年には10%前後だったところから、現在は80%と成長。

「元はといえばKIBACOWORKSも、誰も知らなかったブランドですが、今ではみんなが「キバコさん、キバコさん」と呼んでくれるようになった。同じように、SWOON SUPPLYも親しみを持って呼んでもらえるブランドにしたいです」(のぶさん)
Recustomerの活用も継続していく予定で、「プロダクト改善の要望にも細かく答えてくれるのが助かる」とのぶさんは語ります。商品の品質、お客さまとの関係性、そしてブランドの世界観。すべてを磨き上げながら、SWOON SUPPLYは愛され続ける存在へと成長を続けていきます。
貴重なお話をありがとうございました!
Recustomerは今後もEC事業者様の購入体験における課題解決を推進してまいります。