
2026年7月から、Visa・Mastercardのオーソリ(仮売上)有効期限が最長60〜90日間から25日間に大幅短縮されます。予約販売・受注生産・入荷待ちを行うEC事業者にとって、決済フローの根幹を揺るがす変更です。
ec-force、カラーミーショップ、PAY.JPなどの主要プラットフォームが既に緊急告知を出しており、対応は待ったなしの状況です。この記事では、25日ルールの背景から影響範囲、カート別の対応状況、3つの対策オプション、さらには再オーソリ自動化にまつわる特許リスクまで、EC事業者が知るべきことをすべて解説します。
この記事の要点(30秒で読める)
- 何が変わる? オーソリ有効期限が60-90日→25日間に短縮。海外発行カードは7日間
- 誰が影響? 注文〜発送が25日を超えるEC事業者(予約販売・受注生産・入荷待ち)
- 何が起きる? 超過分は自動キャンセル。顧客に再決済を依頼→離脱・売上消失リスク急増
- どう対策? 手動(非現実的)/ 出荷前1回(リスク残存)/ 自動再オーソリソリューション導入(最も確実、特許あり)
オーソリ(与信)とは
オーソリ(Authorization、与信)とは、クレジットカード決済において商品代金分の利用限度額を一時的に確保する処理です。決済代行業者の間では「仮売上」とも呼ばれます。
ECサイトでの決済は以下の2段階で処理されます。
- オーソリ(与信) ― カードの利用限度額のうち商品代金分を一時的に確保。購入者への請求は発生しない
- キャプチャ(実売上) ― 商品発送後に、確保していた金額を実際に請求(売上確定)する
つまりオーソリは「この金額を後で請求します」という予約であり、キャプチャが「実際に請求しました」という確定です。この2段階方式により、キャンセルや金額変更に柔軟に対応できます。
25日ルールとは ― 何がどう変わるのか
2026年7月以降、Visa・Mastercardのオーソリ有効期限が最長60〜90日間から25日間に大幅短縮されます。これが通称「25日ルール」です。
変更前後の比較
| 項目 |
変更前 |
変更後(2026年7月〜) |
| 仮売上の有効期間 |
最長60〜90日間 |
25日間(海外発行カード: 7日間) |
| 期限超過時 |
決済代行会社により異なる |
自動キャンセル |
| カード有効性確認の仮売上 |
可能 |
2026年9月30日以降禁止 |
| 実売上への切替 |
有効期間内ならいつでも |
25日以内に必須 |
25日を超過した仮売上は決済代行サービス側で自動キャンセルされます。売上を確定したい場合は購入者に改めて決済をお願いする必要がありますが、再決済時にカード限度額不足や購入意欲低下で失敗するリスクが高く、事実上の売上消失です。
なぜ今、期限が短縮されるのか
1. 不正利用被害の急増
日本クレジット協会の発表によると、2024年のクレジットカード不正利用被害額は過去最多の555.0億円に達しました。2020年の2倍以上であり、被害の92.5%がインターネット取引における「番号盗用」です。カードブランドはオーソリ期限短縮で安全性を高める方針を打ち出しています。
2. Visaの国際ルール統一
Visaの最新Core Rules(2026年7月25日発効)では、取引種別ごとに以下のオーソリ期限が定められています。
| 取引種別 |
標準オーソリ期限 |
| CNP取引(ECサイト等) |
10暦日 |
| 対面取引(店舗POS) |
5暦日 |
| 継続課金・分割払い |
5暦日 |
| 宿泊・クルーズ・レンタカー |
30暦日 |
| Extended Authorization Service(EAS)利用時 |
最大30暦日(手数料0.08%) |
日本の「25日」は、Visaの標準10日にEAS等を活用した延長措置です。国際基準が短期化しており、日本だけが例外でいられる状況ではなくなっています。
3. 3Dセキュア2.0義務化との連動
2025年4月から全EC事業者に3Dセキュア2.0の導入が義務化されました(経済産業省ガイドラインに基づく法的要請)。未対応は決済事業者との契約解除につながる可能性もあります。
影響を受けるEC事業者
注文から発送までに25日以上かかるEC事業者が直接的な影響を受けます。
| ビジネスモデル |
典型的なリードタイム |
影響度 |
| 予約販売 |
2週間〜数ヶ月 |
深刻 |
| 受注生産 |
3〜8週間 |
深刻 |
| 入荷待ち |
数週間〜数ヶ月 |
深刻 |
| お取り置きサービス |
1〜4週間 |
中〜高 |
| 越境EC |
―(7日ルール適用) |
深刻 |
海外発行カードはさらに厳しい「7日ルール」
PAY.JPは2026年8月から、海外発行カードに対するオーソリ期限を最大7日間に制限することを発表しています。7日を超えるリクエストは自動的に7日に短縮されます。
| カード発行地域 |
オーソリ期限 |
7日超リクエスト時 |
| 日本国内発行 |
最大25日間 |
リクエスト通り |
| 海外発行 |
最大7日間 |
7日に自動短縮 |
7日を超えて売上確定した場合、「オーソリ未取得」を理由としたチャージバック(売上の強制返金)が成立します。越境ECや海外顧客がいるストアは要注意です。
カート・決済代行事業者別の対応状況まとめ
| プラットフォーム |
告知状況 |
対応内容 |
| ec-force |
緊急告知済 |
ブランドレギュレーション強化を案内。再オーソリバッチ機能を提供 |
| カラーミーショップ |
告知済(6/5) |
仮売上モードが対象。25日以内の実売上切替と再オーソリを推奨 |
| PAY.JP |
告知済 |
海外カード7日制限(2026年8月〜)。API仕様変更予定 |
| Shopify |
部分対応 |
Shopify Payments利用者は3DS済み。予約販売アプリは各アプリ依存 |
| GMOペイメントゲートウェイ |
API提供 |
再オーソリAPI(単発)を提供。自動ループは加盟店側で構築が必要 |
いずれのプラットフォームも「再オーソリAPIは提供するが、自動で繰り返す仕組みは事業者の責任」というスタンスです。
対策は3つ ― それぞれのメリットとリスク
対策1: 手動で再オーソリ
- メリット: システム投資ゼロ。特許リスクなし
- デメリット: 業務負荷が膨大。月50件以上では現実的に不可能
対策2: 注文時にキャプチャを実行する
- メリット: オーソリ切れの心配がない
- デメリット: カード会社の規約に抵触する可能性。会計処理が必要。顧客体験の悪化
対策3: 自動再オーソリソリューションの導入
- メリット: 完全自動。顧客の再操作ゼロ。決済成功率100%を目指せる唯一の方法
- 注意: この制御ロジックはRecustomer社が特許取得済み。独自開発は法的リスクあり
3つの対策の比較
| 対策 |
自動化 |
決済成功率 |
特許リスク |
適する規模 |
| 手動再オーソリ |
なし |
低い |
なし |
月10件未満 |
| 出荷前1回再オーソリ |
一部 |
中程度 |
なし |
月10-50件 |
| 自動再オーソリ(ソリューション導入) |
完全 |
最高 |
自社開発はNG |
月50件以上 |
再オーソリの自動化と特許リスク
特許第7721200号(Recustomer社)
以下の一連の制御ロジックに対して特許が認められています。
- オーソリの有効期限が切れる前に、自動で再オーソリを繰り返し実行して与信を維持する
- 「出荷(購入確定)」などのイベントを検知して、自動更新をストップさせ、実売上に移行する
GMOやSBPS等が提供する「再オーソリAPI」自体は特許に触れません。APIはあくまで「部品」です。問題になるのは、この部品を使って「自動ループ+出荷フック停止」の仕組みを独自構築した場合です。
| 実装パターン |
特許リスク |
| 決済代行のAPIを手動で呼び出す |
なし(安全) |
| 出荷前に1回だけ自動で再オーソリ |
なし(安全) |
| 期限前に自動で繰り返し再オーソリ+出荷検知で自動停止 |
侵害リスク大 |
EC事業者のアクションタイムライン
| 時期 |
やるべきこと |
| 今すぐ |
自社の「注文〜発送」リードタイムを棚卸し。25日を超える商品があるか確認 |
| 6月中 |
決済代行・カートの25日ルール対応状況を確認。再オーソリ機能の有無をチェック |
| 2026年7月 |
25日以内に実売上完了するフロー確立。または自動再オーソリソリューション導入 |
| 2026年8月 |
海外発行カードの7日ルール適用開始。越境EC事業者は追加対応 |
| 2026年9月30日 |
カード有効性確認の仮売上処理が完全禁止。代替手段への移行 |
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よくある質問
Q. オーソリの有効期限は何日ですか?
2026年7月以降、Visa・Mastercardのオーソリ有効期限は25日間に短縮されます。従来は最長60〜90日間でした。海外発行カードはさらに短く7日間に制限されます。
Q. 25日ルールで影響を受けるEC事業者は?
予約販売、受注生産、入荷待ち、お取り置きサービスなど、注文から発送まで25日以上かかるEC事業者が影響を受けます。
Q. オーソリが切れたらどうなりますか?
決済代行サービス側で自動キャンセルされます。購入者に再決済をお願いする必要がありますが、限度額超過や購入意欲低下で失敗するリスクが高まります。
Q. 再オーソリとは何ですか?
再オーソリ(再与信)とは、有効期限切れ前に新たなオーソリを取得し直す処理です。GMOやSBPS等がAPIを提供していますが、自動で繰り返す仕組みは別途構築が必要です。
Q. 再オーソリの自動化を自社開発してもいいですか?
注意が必要です。自動繰り返し+出荷検知停止のロジックはRecustomer社が特許(第7721200号)を取得済み。独自実装は侵害リスクがあります。
Q. JCBやAMEXも対象ですか?
現時点で25日ルールを打ち出しているのはVisa・Mastercardです。JCB・AMEXも追随する可能性があり、決済代行会社の告知を定期確認してください。
Q. 海外発行カードのオーソリ期限は?
最大7日間です。PAY.JP等は2026年8月以降、7日超のリクエストを自動短縮します。期間超過の売上確定はチャージバックリスクがあります。
Q. 「カード有効性確認の仮売上処理」の禁止とは?
2026年9月30日以降、売上目的でない有効性確認の仮売上が禁止されます。Account Verification等の別手段への移行が必要です。
まとめ
- 2026年7月〜、Visa・Mastercardのオーソリ有効期限が60-90日→25日に短縮
- 海外発行カードは7日間に制限。越境ECは特に注意
- 25日超過の仮売上は自動キャンセル。事実上の売上消失
- 2026年9月30日以降はカード有効性確認目的の仮売上も禁止
- 対策は3つ: 手動 / 単発自動 / 自動再オーソリソリューション(最も確実)
- 「自動ループ+出荷フック停止」は特許(第7721200号)で保護済み。独自開発は法的リスクあり
- ec-force・カラーミーショップ等の主要カートは既に緊急告知済み
- 今すぐ、注文〜発送リードタイムを確認して対策を始めるべき
出典・参考文献
- カラーミーショップ「VISA・Mastercardのルール変更に伴うクレジットカード決済の仕様変更について」(2026年6月5日)
- ec-force「Visa / Mastercard のブランドレギュレーション強化についてのご案内」
- PAY.JP「海外発行カードで取得できるオーソリ期限を「最大7日まで」に制限いたします」(2026年3月)
- Visa「Visa Core Rules and Visa Product and Service Rules」(2026年7月25日発効)
- 一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の発生状況」(2024年: 被害額555.0億円)
- フラッグシップ株式会社「3Dセキュア2.0義務化とEC事業者の対応指針」
- Chargebacks911「Visa Authorization Rules: Changes to Time Frames & Options」
予約販売の売上を、1件も逃さない。
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