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「返品」をネガティブな作業から、顧客満足と事業成長の源泉へ。「ミライスピーカー」が実践する購入後体験とは

 

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課題

・事業急拡大に伴い「60日間返金保証」の返品オペレーション負荷が増大
・返品条件の確認に1件約5分を要し、ミスが許されない重圧で現場が疲弊
・手動管理で「保証期間外」等の対応に時間を奪われ、コア業務を圧迫

 

活用

・注文データ連携で「返品条件を満たす顧客」のみ申請可能なフローを構築

・シニア層にも分かりやすいUIで、ステータス自動通知で顧客の不安を解消

・返品理由データの分析でマーケティング施策を促進

 

効果

・1件あたり3〜4分の工数を削減し、判断業務を無くして実務のみに集中可能に

・進捗の可視化により、カスタマーサポートへの状況確認問い合わせが減少

・データに基づく使用提案で返品率自体を低減させ、キャンペーン時の条件変更も柔軟に対応可能に

 

「聞こえ」にお困りの方へ、言葉をくっきりと届ける特許技術「曲面サウンド」を採用した『ミライスピーカー』。テレビCMやデジタルマーケティングを通じて急速に認知を拡大し、シニア世代を中心に多くのユーザーから支持を集めています。


しかし、事業の急成長と共に課題となったのが、同社が顧客への「安心」として掲げていた「60日間返金保証」に伴う返品オペレーションの負荷でした。今回は、マーケティング本部 ロジスティクス部 部長の山縣 央亮氏と、同本部 コミュニケーション戦略部でCSを担当する田邊氏に、Recustomer導入の背景と、返品データを活用した顧客体験(CX)向上の取り組みについて詳しくお話を伺いました。


MIRAI SPEAKER ブランドサイト:https://miraispeaker.com/

 

「Warmth, Uniqueness, Inclusion」100年の人生をテクノロジーで豊かにする

 

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▲Recustomer導入ブランド「MIRAI SPEAKER」ECサイト

 

── まずは、お二人の現在の役割とミッションについて教えてください。

山縣氏:
コミュニケーション戦略部でカスタマーサポートなど会社の課題に沿ったミッションを担当しておりました。現在は、ロジスティクス部の部長を務めています。以前はコミュニケーション戦略部の中に物流機能があったのですが、事業規模の拡大に伴い物量が増加したため、今年(2025年)7月に独立した部門となりました。


現在のミッションは、事業計画実現のための物流体制の構築や管理、受注処理、そしてRecustomerが大きく関わる「リバースロジスティクス(返品物流)」の設計・運用です。

 

田邊氏:
私はコミュニケーション戦略部にて、主にコールセンターの管理を担当しています。応対品質の向上や応答率の管理などが主な業務ですが、返品率も重要なKPIの一つになっているため、Recustomerを活用しながら返品周りの数値管理や改善にも取り組んでいます。

 

── 現在のEC事業の運営体制はどのような規模感なのでしょうか?
山縣氏・田邊氏:
私たちのチームは比較的コンパクトな体制で運営しています。販売促進やプロモーションを担うマーケティングメンバーが5名。そしてCS(カスタマーサポート)部門は、お客様対応を行うコールセンターのスタッフが5名、そのエスカレーション対応や品質管理、データ分析を行う社内の運用メンバーが5名という構成です。


少数精鋭で回しているからこそ、ツールによる効率化や、各メンバーが連携して顧客体験を高めていくことが不可欠な環境です。

 

── 「ミライスピーカー」という画期的なプロダクトを展開されていますが、改めて事業内容と大切にされている価値観についてお聞かせください。
山縣氏:
私たちは、「聞こえ」にお困りの方でも音量を上げずに、言葉をクリアに届けるミライスピーカーの開発・製造・販売を行っています。一般的なスピーカーとは異なり、振動板が平板を湾曲させた曲面になっているのが最大の特徴です。この独自技術「曲面サウンド」により、聞こえにお困りの方や高齢者の方でも言葉が聞き取りやすくなります


私たちが大切にしている価値観(バリュー)は、「Warmth(温かさ)」「Uniqueness(独自性)」「Inclusion(包括性)」の3つです。誰一人取り残さない、温かみのある独自の技術で社会に貢献することを指針としています。

 

mirai speaker shikumi▲ミライスピーカー・ミニの内部構造

 

── シニア層がメインターゲットになるかと思いますが、顧客体験(CX)の設計で意識されていることはありますか?
山縣氏: Webサイトなどのタッチポイントでは、文字の大きさや言葉の選び方に配慮し、ECに不慣れな方でも安心して購入いただける設計を心がけています。ただ、「高齢者向け=地味、和風」といったステレオタイプには陥らないよう、デザインのトーン&マナーには注意しています。また、今までにない新しい価値を提供するプロダクトだからこそ、購入後の丁寧なフォローアップも重要視しています。

 

例えば、商品到着の約3日後に「サポートメール」を自動配信する設計を構築しました。お客様が使い始めて「あれ?」と思うタイミングに合わせて、「お困りごとはないですか」といったメールをお送りし、使い方のコツやトラブルシューティングを先回りしてお届けしています。

 

使い方が分からずに効果を感じられないまま返品されてしまうことを防ぐためにも、こうした能動的なサポートを心がけており、実際に返品率の低減にも繋がっています。

 

田邊氏:
購入前のお問い合わせでは、「設置は簡単ですか?」というご質問を多くいただきます。ご自身用だけでなく、ご両親へのプレゼントとして検討されている方が、「機械が苦手な親でも使えるか」を心配されてご連絡いただくケースが多いですね。そうした声に寄り添い、不安を取り除くことも重要なCXだと捉えています。

 

1件あたり5分以上の確認作業。急成長の裏で増加していた返品対応

 

── Recustomer導入前、どのような課題を抱えていたのでしょうか?
山縣氏:
2022年頃、ECでの売上が急激に伸びていた時期のことです。当時から、お客様に試していただくため「返金保証」を実施していたため、どうしても一定数の返品が発生します。当時は専用のフォームもなく、お客様に必要事項を申請していただき、その情報を目視で確認して管理していました。

 

最大の問題は、「返品条件の確認」に膨大な時間がかかっていたことです。

 

当時は誰でも申請ができてしまう状態だったため、「購入から100日経過している(返品期間が過ぎている)」「そもそも購入履歴がない」「公式整備済みリユース品を購入している(返金保証対象外)」といった申請が混在していました。1件の返品申請に対し、「このお客様は正規の購入者か」「購入日はいつか」「返品期間内か」を確認し実際に返金するのに、平均して約5分。これを私ともう1名のスタッフの2名体制で行っていたのですが、注文件数が増えるにつれて作業量が肥大化し、1日数時間をこの確認作業だけに費やす状態になっていました。

 

返品交換-通常フロー▲確認作業以外も工程が多い返品交換プロセス

 

── 1件5分が積み重なると、相当な業務量ですね。

山縣氏:
はい。しかも「返金」というお金に関わる業務なので、ミスが許されないというプレッシャーもあります。「処理を間違えてはいけない」という心理的負担と、終わりの見えない作業量で、現場はかなり疲弊していました。「これはシステム化しないと成長に対して組織が持たない」と痛感し、導入を検討し始めました。

 

── Recustomerを知ったきっかけと、導入の決め手を教えてください。

山縣氏:
当時、使用していたカートシステムの製品名と【返品】【自動化】のキーワードで検索してRecustomerに出会いました。


選定の絶対条件は、「注文情報と連動して、対象者だけが返品申請できること」でした。Recustomerはカートシステムの注文データと連携し、購入日や購入商品をベースに「返品可能期間内かどうか」を自動判定してくれます。人件費とシステム利用料を天秤にかけた際、明らかにシステムを導入した方がコストパフォーマンスが良いという試算が出たため、導入を決断しました。

 

導入の効果:シニア層でも迷わない操作性と、現場の負担軽減

 

── 導入後の業務フローの変化や、具体的な効果について教えてください。
山縣氏:
最も劇的な変化があったのは、やはり工数の削減です。Recustomer導入後は、システムが自動で「返品条件を満たしているお客様」だけを通してくれるため、私たちが管理画面を開いた時点で、その申請はすべて「正規の返品依頼」であることが保証されています。

 

これにより、以前は1件あたり5分かかっていた確認作業のうち、3〜4分は削減できました。Yes/Noの判断や条件確認という「作業」がごっそりなくなり、実務的な処理だけに集中できるようになったのは本当に大きいです。

 

── シニア層のお客様が多い中で、Webシステムによる返品手続きへの移行はスムーズでしたか?

山縣氏:
実は、そこが一番の懸念点でした。「Webでの申請が難しくて、結局電話対応が増えるのではないか」と心配していたのですが、蓋を開けてみるとトラブルはほとんどありませんでした

RecustomerのUIがシンプルで分かりやすいため、多くのお客様が問題なくご自身で申請を完了されています。もちろん、どうしても操作が難しいというお客様には、お電話で注文情報を伺い、私たちが代理でシステム入力を行う運用でカバーしていますが、全体として非常にスムーズに運用に乗せることができました。

 

「誰でも使いやすいシステム」であることは、シニア層がメインターゲットのプロダクトを扱う私たちにとって非常に重要なポイントでしたね。

 

 

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▲Recustomer返品・キャンセルの画面イメージ

 

── 顧客体験(CX)の面ではどのような変化がありましたか?

田邊氏:
お客様の「不安」を解消できた点が大きいです。


以前のアナログな運用では、お客様が商品を返送してから実際に返金されるまでの間、弊社から連絡をする仕組みがありませんでした。そのため、「荷物は届いたのか?」「いつ返金されるのか?」といったお問い合わせをいただくことがありました。


Recustomer導入後は、着荷確認や返金処理のステータスに合わせて、「返品を受け付けました」「返金処理が完了しました」といった通知メールが自動送信されます。進捗が可視化されることでお客様も安心できますし、結果としてカスタマーサポートへの状況確認の問い合わせも減りました

 

「データ」が変えた商品開発とコミュニケーション。返品理由から見えた突破口

 

── 返品対応の効率化だけでなく、返品理由のデータを分析してサービス改善に活かしているとお聞きしました。

山縣氏:
はい。Recustomerでは返品理由のアンケート項目を自由に設定できるので、詳細なデータを取得できます。このデータをCRMツールに取り込み分析することで、非常に興味深い事実が判明しました。


以前、返品に至ったケースを振り返りながら使い方や視聴環境を深堀していくと「好みに合わせた使い方を案内すること」が満足度につながる重要なポイントだということが見えてきました。


例えば、テレビによっては設定を変えることで、テレビ本体とイヤホン端子に接続したミライスピーカーの両方から音を出すことが可能です。こうすると、音に厚みが欲しい方にはより快適にテレビをお楽しみいただけます。

 

返品データの集計・分析

▲返品データの可視化が可能


── それは大きな発見ですね!そこからどのようなアクションを起こされたのですか?

山縣氏:
「それなら、最初から推奨しよう」ということになり、お好みに合わせた使い方をまとめたチラシを作成し、商品に同梱するようにしました。さらにWebサイト上のQ&Aも拡充しました。この施策を実施した結果、実際に返品率を低減させることができました。また、必要なオプション品を用意するなど、商品戦略にもデータが活かされています


返品データを「単なる返品処理の記録」で終わらせず、プロダクトの改善やコミュニケーションの最適化に繋げられた好例だと思います。


── 返品ポリシーの柔軟な変更も、マーケティング施策として活用されているそうですね。

山縣氏:
そうですね。キャンペーンに合わせて「通常60日の保証期間を、今だけ90日に延長」といった施策を打つことがあります。


以前の手動管理なら「この人はキャンペーン期間中の購入だから90日、この人は通常だから60日…」と管理が煩雑になりミスのもとでしたが、Recustomerなら商品IDごとにポリシーを設定するだけで、システムが購入日に応じて自動判定してくれます。マーケティング側が実施したい施策を、バックエンドの負荷を気にせずスピーディーに実行できる環境が整いました。

 

コストの削減▲動的な返品ポリシーで柔軟な設定が可能

 

今後の展望:購入後体験で、更なる効率化と顧客満足度向上へ

 

── 最後に、改めて貴社にとって「返品」とはどのような位置づけでしょうか。

山縣氏:
私たちの製品は実際に体験した方の9割程の方に効果を実感していただいております。しかし効果には個人差があります。だからこそ、万が一合わなかった場合の「出口戦略」としての返品対応は、お客様への誠意であり、購入のハードルを下げるための重要なマーケティング施策の一つです。


また、公式整備済みリユース品の販売など、SDGsの観点からも「戻ってきた商品をどう活かすか」は重要です。Recustomerは、単に返品を自動化するツールではなく、こうした私たちの「お客様に寄り添う姿勢」や「商品の循環」を支えるインフラだと感じています。今後もこの基盤を活用し、より多くの方に「聞こえる」喜びを届けていきたいですね。

編集後記

「返品」という業務は、多くのEC事業者にとってコストや手間でしかないと考えられがちです。しかしミライスピーカー様のお話からは、返品対応を「顧客の信頼を得るための重要接点」と捉え、さらにそこから得られたデータを製品改善に活かすという、極めて前向きで戦略的な姿勢が伺えました

「1件5分の確認作業」からの解放が、同社の掲げる「Warmth(温かさ)」のある顧客対応への注力を可能にし、結果として事業成長を加速させている。まさにDXによる課題解決の理想的な形です。

 

 

 

 

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