
国土交通省は2026年7月10日、宅配便の受け取り方法に関する最新調査結果を発表し、宅配ボックスや置き配などの「非対面受け取り」の利用率が31.0%と、初めて3割を超えたことを明らかにしました。一方で再配達率は7.6%と、政府がかつて掲げた「6%」という目標には依然として届いていません。
この調査結果は、EC市場の拡大とトラックドライバー不足が同時進行するなかで、荷物の「受け取り方」がどこまで変わってきているかを示す一次データです。EC事業者にとっては、配送体験の設計を見直す具体的な根拠になります。
この記事の要点(30秒で読める)
- 何が起きた? 国交省調査(2026年7月10日発表)で、宅配便の非対面受け取り利用率が31.0%と初めて3割を突破
- 再配達率は? 7.6%(前回比▲0.7pt)。ただし都市部は8.5%と高止まり
- 政府目標との差は? 旧目標「再配達率6%」は未達のまま。新大綱は「非対面受取率50%(2030年度)」へ指標を転換
- 背景は? EC市場拡大とドライバー不足(物流の2024年問題)で、受け取り行動自体を変える政策にシフト
- EC事業者は? 受取方法の選択肢提示、置き配の不安解消(可視化)、持ち戻り削減の3点が急務
非対面受け取り(置き配)とは
非対面受け取りとは、宅配ボックス・置き配・宅配ロッカー・コンビニ受け取りなど、配達員と対面せずに荷物を受け取る方法の総称です。国土交通省はこれらを「多様な受取方法」と呼び、再配達削減の切り札として宅配便の標準サービスへ位置づける方針を進めています。
特に「置き配」は、玄関先や指定の場所に荷物を届け置く方式として急速に普及しています。「置き配」の定義や事業者ごとのサービス比較は「置き配とは?メリットや課題と「置き配サービス3社」を比較」で詳しく解説しています。
国交省調査が示す実態 ― 非対面受け取り31%、再配達率7.6%
今回の調査は令和8年4月(2026年4月1日〜30日)を対象期間とし、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便など大手宅配事業者のデータをもとに集計されています。結果は次の通りです。
| 指標 |
今回(令和8年4月) |
前回(令和7年10月)比 |
| 非対面受け取り利用率 |
31.0% |
+1.1pt(初めて3割超え) |
| 再配達率 |
7.6% |
▲0.7pt |
再配達率は地域によって差が大きいことも今回の調査で明らかになっています。
| 地域区分 |
再配達率 |
| 都市部 |
8.5%(高止まり) |
| 都市部近郊 |
7.2% |
| 地方 |
6.0% |
不在時の再配達(持ち戻り)が発生した場合の工数・機会損失については「ECの「持ち戻り」が現場を疲弊させる ― 工数・売上・CXでの三重損失と、不在通知リマインダーという解」でも詳しく取り上げています。
なぜ「再配達率6%」の目標を捨て、新たな指標に切り替えたのか
2021年度〜2025年度の「総合物流施策大綱」は、再配達率を6%まで引き下げる目標を掲げていましたが、令和6年度時点でも8〜9%台にとどまり、達成できませんでした。そこで2026年度〜2030年度の新たな大綱(令和8年3月31日閣議決定)では、指標そのものを転換しています。
新大綱が掲げるのは「多様な受取方法の利用率を、2025年2月時点の25.6%から2030年度までに50%程度へ引き上げる」という目標です。再配達を「減らす」努力から、受け取り方そのものを「変える」努力へ、政策の主眼が移ったことを意味します。
なぜ今、非対面受け取りの普及が急がれるのか
背景にあるのは、EC市場の拡大とトラックドライバー不足という物流業界の構造問題です。電子商取引の急拡大で宅配便の取扱個数が増え続ける一方、人口減少・少子高齢化によりドライバー不足は深刻化しています。
再配達は積み荷の再輸送によるCO2排出量の増加にもつながり、社会的なコストとしても無視できない規模になっています。国土交通省は、置き配を宅配便の「標準サービス」に追加する方針もあわせて示しており、対面受け取りを前提としてきた宅配の基本ルール自体が転換点を迎えています。
日本のEC事業者への示唆 ― 配送体験設計で今すぐ着手すべきこと
非対面受け取りが「標準」になっていく流れは、EC事業者にとって単なる物流業界の話ではありません。購入後の配送体験そのものを見直す機会と捉えるべきです。
1. チェックアウトで受取方法の選択肢を明示する
置き配・宅配ボックス・コンビニ受け取りなどの選択肢を、注文時点で顧客自身に選ばせる導線を用意することが第一歩です。配送会社任せにせず、自社の購入フローの中で受取方法を提示することで、非対面受け取りの利用を後押しできます。
2. 置き配の不安は「可視化」で解消する
置き配の最大の障壁は、盗難・破損への不安と「本当に届いたか分からない」という心理的な不安です。配達完了通知や自社ブランドの追跡ページで配送状況をリアルタイムに共有することで、顧客の不安を軽減できます。
Recustomerが配送追跡サービスを利用する39ストア・約600万通のデータ(2026年1月〜4月)を分析したところ、配送追跡メールの平均開封率は64.0%と、一般的なECメルマガ(15〜20%)を大きく上回りました。「自分の荷物がいつ届くか」は顧客にとって完全に"自分ごと"の情報だからこそ、この接点は再配達削減の説明や再購入導線としても活用できます。詳細は「配送追跡メールの開封率は64% ― 配送会社任せが招く機会損失と、ECリピート率を改善する活用法」で解説しています。
3. 持ち戻り(不在→再配達)を減らすリマインダーを用意する
非対面受け取りを選ばなかった顧客が不在にした場合、荷物は持ち戻りとなり、再配達の工数と機会損失が発生します。配達予定を事前に知らせるリマインダー通知は、再配達そのものを未然に防ぐ実務的な打ち手です。
4. 都市部で事業を展開するECほど対応が急務
今回の調査では、地方が6.0%まで低下した一方、都市部は8.5%で高止まりしています。都市部の顧客比率が高いECほど、非対面受け取りの選択肢提示と配送状況の可視化に投資するリターンが大きいと言えます。
配送体験の可視化で、再配達も問い合わせも減らす
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よくある質問
Q. 宅配便の「非対面受け取り」とは何ですか?
宅配ボックスや置き配、宅配ロッカー、コンビニ受け取りなど、配達員と対面せずに荷物を受け取る方法の総称です。国土交通省は再配達削減の切り札として、これらを宅配便の標準サービスに位置づける方針を進めています。
Q. 非対面受け取りの利用率は現在どれくらいですか?
2026年7月10日発表の調査(令和8年4月調査)によると、非対面受け取りの利用率は約31.0%で、前回調査から1.1ポイント増加し、初めて3割を超えました。
Q. 宅配便の再配達率は今どのくらいですか?
同調査では再配達率は約7.6%(前回比▲0.7pt)でした。地域別では地方6.0%、都市部近郊7.2%、都市部8.5%と、都市部で高止まりする傾向が続いています。
Q. 政府は再配達率をどこまで下げる目標を掲げていましたか?
2021年度〜2025年度の「総合物流施策大綱」では、再配達率を6%まで引き下げる目標を掲げていましたが、令和6年度時点でも8〜9%台にとどまり、達成できませんでした。
Q. なぜ政府目標の指標が「再配達率」から変わったのですか?
2026年度〜2030年度の新たな大綱(令和8年3月31日閣議決定)では、再配達率の数値目標に代えて、「多様な受取方法の利用率」を2025年2月時点の25.6%から2030年度までに50%程度へ引き上げる目標が新たに位置づけられました。
Q. EC事業者は非対面受け取りの普及にどう対応すべきですか?
チェックアウト画面での受取方法の選択肢提示、置き配の不安を解消する配送状況の可視化、不在による持ち戻りを防ぐリマインダー通知の3点が、今すぐ着手できる実務的な対応です。
まとめ
- 国交省調査(2026年7月10日発表)で、宅配便の非対面受け取り利用率が31.0%と初めて3割を突破
- 再配達率は7.6%(前回比▲0.7pt)。ただし都市部は8.5%で高止まり
- 旧大綱の「再配達率6%」目標は未達のまま終了し、新大綱は「非対面受取率50%(2030年度)」に指標を転換
- 背景にはEC市場拡大とトラックドライバー不足があり、受け取り行動そのものを変える政策にシフトしている
- EC事業者は受取方法の選択肢提示・配送状況の可視化・持ち戻り削減のリマインダーの3点に今すぐ着手すべき
- 配送追跡メールの開封率は64.0%と高く、再配達削減と再購入導線の両方に活用できる接点である
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出典・参考文献
- 国土交通省「報道発表資料:宅配便の多様な受取方法の利用率は約31.0%〜前回調査(令和7年10月)に比べ1.1%増加〜」(2026年7月10日)
- ECのミカタ「宅配便「多様な受取方法利用率」約31.0%「再配達率」約7.6%に 国土交通省調査」
- LNEWS「国交省/大手宅配事業者、宅配ボックスなど「非対面」での受け取りが3割超に」
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