
コード決済を悪用した「返金詐欺」に関する消費生活センターへの相談が、2026年1-3月期に過去最多の5,107件に達したことがわかりました。かっこ株式会社と株式会社リンクが2026年8月4日に公開した「キャッシュレスセキュリティレポート」による数値で、統計を開始した2023年と比較して約2.2倍に増加しています。
同じ時期にクレジットカードの不正利用被害額は前年同期比で約41%減少しており、カード不正が抑えられる一方で、消費者自身に送金操作をさせる新しいタイプの詐欺が急拡大するという、対照的な現象が起きています。国民生活センターは2026年8月17日にも、令和8年熊本地震に便乗した最新の被害事例を公表したばかりです。
この記事では、コード決済の「返金詐欺」がどのような手口で、なぜ今急増しているのかを整理したうえで、日本のEC事業者が自社のブランドを悪用されないため、また正規の返金オペレーションを見直すために取るべき実務対応を解説します。
この記事の要点(30秒で読める)
- 何が起きた? コード決済悪用の「返金詐欺」相談が2026年1-3月期に過去最多5,107件(2023年比2.2倍)
- 一方でカード不正は減少:クレジットカード不正利用被害額は前年同期比約41%減(113.6億円)
- 手口は? 「返金する」「支援すると多めに返ってくる」と称してコード決済の送金操作を誘導
- 直近の事例:2026年8月、令和8年熊本地震に便乗した被災地支援詐欺をNITAが公表
- EC事業者への示唆:自社のなりすまし対策と、返金オペレーションの一本化・自動化・可視化
コード決済を悪用した「返金詐欺」とは
コード決済を悪用した返金詐欺とは、事業者や公式アカウントを装って接触し、「返金する」という名目でPayPayなどのコード決済アプリを操作させ、実際には被害者自身に相手への送金をさせてしまう詐欺の手口です。正規の返金手続きでは消費者側が何かを支払う操作は発生しないため、この構造そのものが詐欺の特徴です。
典型的な誘い文句は「〇〇Payで返金します」というもので、国民生活センターは2023年から繰り返しこの手口に注意喚起を出しています。QRコードの読み込みや画面共有アプリの悪用など、手口は年々巧妙化しています。
過去最多5,107件 ― 統計の詳細と最新事例
かっこ株式会社と株式会社リンクが共同公開した「キャッシュレスセキュリティレポート(2026年1-3月版)」(2026年8月4日発表)によると、コード決済を悪用した返金詐欺の消費生活センター相談は5,107件で過去最多を記録しました。統計を開始した2023年との比較では約2.2倍の増加です。
同レポートでは対照的に、クレジットカード不正利用被害額は113.6億円で前年同期比約41%減少、カード情報流出件数も3,463件で前年同期比約82%減少したことも報告されています。レポートはこの減少を「2025年3月のEMV 3-Dセキュア義務化の効果が現れている」と分析しています。
直近では、国民生活センターが2026年8月17日、令和8年熊本地震に便乗した最新の被害事例を公表しました。関東地方の50歳代女性が、SNSでフォローしていた飲食店アカウントを装うDMから「被災地支援で購入額より多く返金される」と誘われてLINEグループに参加し、最初は1,000円の支払いに対し1,200円が実際に返金されたため信用。その後複数回のやり取りを経て10万円を決済したところ返金されず、さらに「15万円払えば10万円返す」と持ちかけられて不審に思い支払いを止めた、という事例です。
| 指標 |
2026年1-3月期 |
前年・基準比 |
| コード決済悪用の返金詐欺 相談件数 |
5,107件(過去最多) |
2023年比 約2.2倍 |
| クレジットカード不正利用被害額 |
113.6億円 |
前年同期比 約41%減 |
| カード情報流出件数 |
3,463件 |
前年同期比 約82%減 |
クレジットカードのチャージバック対策全般については「EC事業者のためのチャージバック対策ガイド」でも解説していますので、あわせてご参照ください。
なぜ今、返金詐欺が急増しているのか
返金詐欺が急増している最大の背景は、3Dセキュア義務化によってカード情報を盗む型の不正が難しくなったことで、詐欺の手口が「被害者自身に操作させる」ソーシャルエンジニアリング型へとシフトしていることです。クレジットカード不正の被害額が減少する一方で相談件数が過去最多になったという対照的な数字は、この構造変化を裏付けています。
米国のフレンドリーフロード急増についても以前取り上げましたが(「米国のチャージバックが急増、フレンドリーフロードの実態」)、決済にまつわる不正・詐欺は国や手口を変えながら形を変え続けているのが実情です。
加えて、コード決済の普及によって個人が日常的に送金操作を行う機会が増えたこと、そして災害という社会不安に便乗する手口が周期的に繰り返される点も見逃せません。事業者側の返金連絡がメール・電話・SNSのDMなど複数チャネルに分散していることも、消費者が「本物の連絡」と「詐欺」を見分けにくくしている構造的な要因です。
日本のEC事業者への示唆
この動きから日本のEC事業者が学ぶべきことは、自社ブランドが詐欺の「なりすまし」に使われないための対策と、正規の返金オペレーションそのものを見直すことの2点です。いずれも今すぐ着手できる実務アクションです。
1. 「なりすまし」対策の明文化
公式SNSアカウント一覧をサイト上に明示し、DMや個人アカウントから決済・送金を案内することは一切ないと、FAQや返品・キャンセルページに明記します。既存顧客が不審な連絡を受けた際に「公式ではない」と即座に判断できる情報を用意しておくことが重要です。
2. 返金連絡チャネルの一本化
返金の通知は必ずマイページまたは登録メールアドレス宛の自動通知のみで行い、コード決済の個人間送金機能や外部QRコードを使った返金は行わないという運用ルールを定め、顧客向けに周知します。
3. 返金プロセスの自動化・可視化
手動での個別連絡による返金対応が多いほど、顧客は詐欺の連絡と正規の連絡を区別しにくくなります。返金・キャンセル処理をシステム上で完結させ、顧客がマイページで返金ステータスをいつでも自分で確認できるようにしておけば、外部からの「なりすまし返金連絡」自体に顧客が違和感を持ちやすくなります。
4. 問い合わせ急増への備え
相談件数の急増は、EC事業者への問い合わせ増加にもつながります。返金状況をセルフサービスで確認できる導線を用意しておくことで、真偽不明の連絡に関するカスタマーサポートの対応負荷を抑えられます。決済・返金にまつわる基本用語の整理は「EC決済用語集50選」でも解説しています。
ポイント:返金オペレーションの「見える化」は不正対策にもなる
返金・キャンセルの申請から入金までをシステムで一気通貫にし、顧客がステータスをセルフで確認できる状態にしておくことは、業務効率化だけでなく、詐欺のなりすまし連絡を顧客自身が見破りやすくする副次効果も持ちます。
よくある質問
Q. コード決済を悪用した「返金詐欺」とはどんな詐欺ですか?
ネット通販の返金手続きや被災地支援などを装って接触し、コード決済アプリを操作させることで、実際には返金ではなく相手への送金をさせてしまう詐欺です。「〇〇Payで返金します」という誘い文句が典型的な入口です。
Q. なぜ2026年に相談件数が過去最多になったのですか?
かっこ株式会社とリンクのレポートによると、2026年1-3月期の相談件数は5,107件で、統計開始の2023年比約2.2倍に増加しました。3Dセキュア義務化でカード情報盗用型の不正が難しくなった分、手口が本人に操作させる型にシフトしていることが背景です。
Q. 具体的にどんな手口が使われていますか?
2026年8月に公表された事例では、SNSの飲食店アカウントを装うDMから被害者をLINEに誘導し、被災地支援と称して少額の返金で信用させたうえで、高額決済をさせて返金しないという手口が報告されています。
Q. クレジットカード不正利用の被害額はむしろ減っているのに、なぜ詐欺全体は増えているのですか?
2026年1-3月期のクレジットカード不正利用被害額は前年同期比約41%減の113.6億円でした。3Dセキュア義務化でカード情報を盗んで悪用する不正は減った一方、被害者自身に送金させる返金詐欺のような手口に不正の重心が移っていると分析されています。
Q. 自社のECサイトやSNSアカウントが「なりすまし」に使われないためにできることは?
公式SNSアカウントを明示し、DMで決済や送金を案内することはないとFAQに明記します。あわせて、返金連絡はマイページや公式サイト経由の通知のみで行い、外部のQRコードや個人間送金での返金は一切行わないという運用ルールを周知します。
Q. 万が一、顧客がこの詐欺の被害に遭った場合、EC事業者はどう対応すべきですか?
自社を騙る詐欺の相談を受けた場合は、コード決済サービス事業者と警察への相談を案内し、公式チャネルで注意喚起を発信します。国民生活センターは相談窓口として消費者ホットライン「188」を案内しています。
Q. 正規の返金オペレーションはどう設計するのが望ましいですか?
返金の申請から入金までをシステム上で完結させ、顧客がマイページで返金ステータスをいつでも確認できるようにすることが望ましい設計です。手動の個別連絡が多いほど、詐欺の連絡と正規の連絡を顧客が区別しにくくなります。
まとめ
- コード決済悪用の「返金詐欺」相談が2026年1-3月期に過去最多5,107件(2023年比2.2倍)を記録
- 同時期にクレジットカード不正利用被害額は約41%減少し、詐欺の手口がソーシャルエンジニアリング型にシフト
- 直近では令和8年熊本地震に便乗した被災地支援詐欺の事例を国民生活センターが2026年8月に公表
- EC事業者は「なりすまし」対策の明文化と、返金連絡チャネルの一本化が急務
- 返金・キャンセル処理の自動化・可視化は、業務効率化だけでなく詐欺対策としても有効
参考・出典
- かっこ株式会社「キャッシュレスセキュリティレポート2026年1-3月を公開」PR TIMES(2026年8月4日)
- 国民生活センター「【速報】被災地支援をうたう不審なSNS上のダイレクトメッセージ(DM)に注意!−〇〇Pay詐欺の手口も−」(2026年8月17日発表)
- ITmedia NEWS「災害便乗の"〇〇Pay詐欺"に注意喚起 最初は多めに返金→信用したら10万円被害 国民生活センター」(2026年8月18日)
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