
課題
・複数ブランドのEC統合に伴い、返品・キャンセル対応の業務負荷がCS部門に集中
・問い合わせの約70%が営業時間外に発生、手続き完了までにお客様を待たせていた
・ 日々の定型業務の処理に追われ、売上貢献に繋がる施策にリソースを割けずにいた
活用
・返品・キャンセル受付から自動返金処理までの一連のプロセスを自動化
・自動化により生まれた時間を活かし、CSが「接客・購入後体験(CX)の向上」を担う体制を構築
・顧客の声を収集・分析し、ECサイトの改善やマーケティング施策へ還元するデータ活用体制へ移行予定
効果
・返品・キャンセル対応の人的工数を大幅に削減し、CS業務全体の効率化を実現
・手続きの即時自動化により、購入後のお客様のストレスを解消
・購入後体験の向上によりロイヤル顧客化を促進し、LTV(顧客生涯価値)の向上を実現
50以上のブランドを擁する株式会社TSIのアパレルECプラットフォーム「mix.tokyo」。予定されていたECサイト統合に伴い、返品・キャンセル対応の負荷がさらに増加することを見据え、同社は統合タイミングの段階で、Recustomerの導入を決断。
膨らむことが予測された業務負荷を未然に防ぎ、CSを「守りのコスト部門」から「攻めの収益貢献部門」へと転換した改革の舞台裏を、カスタマーサポート課 課長の河内様と、シナリオ設計を担当された天野様にお話を伺いました。
ブランド横断プラットフォームと顧客起点のCX設計

▲(左から)株式会社TSI デジタルビジネス事業部 カスタマーサポート課 天野氏、同 課長 河内氏、Recustomer株式会社 山角
ーまず、お二人の役割について教えてください
河内様: デジタルビジネス事業部 カスタマーサポート課にて、弊社ECサイトのお客様対応全般のマネジメントと、カスタマーサポート組織の統括を担当しております。
天野様: 同じくカスタマーサポート課にて、約10年間、ECサイトのカスタマーサポート業務に従事しております。Recustomer導入時にはシナリオの設計と設定を担当いたしました。
ーEC事業の運営体制について教えてください
河内様: mix.tokyoは50以上のTSIブランドを横断するECプラットフォームとして運営しており、それぞれのブランド事業部・マーチャンダイジング・マーケティング・物流など多くの部署が関わっています。カスタマーサポートは、お客様からのお問い合わせ対応を一次窓口として担いつつ、現場で集まる声を関連部署にフィードバックしていく、横断的なハブとしての役割を担っています。
河内様: カスタマーサポートの視点では、この「ブランド横断型」という特徴こそが大きな挑戦でもあります。ブランドごとに異なるサイズ感、イメージ、そういったオンライン特有の不安をいかに取り除き、店舗のような安心感を提供できるかが課題でした。
ー重視している戦略について教えてください
河内様: マーケティング戦略も「とにかく売る」ということを重視する戦略から、顧客からの信頼を積み上げていく方向に大きく転換しているところです。我々CSの役割も、守りの業務はもちろん大きいのですが、そこにとどまらずに、データ活用を通じて事業成長そのものに貢献していく組織を目指しています。
ー顧客体験で大切にしている点は何でしょうか
河内様: カスタマーサポートとして、迅速で的確な対応をすること、お客様の問題を速やかに解決することは当然です。それに加えて、現場でVOC(お客様の声)から潜在的なニーズを汲み取って、ブランド事業部だけでなく社内各部署へ連携していくことも非常に重要だと考えています。
最終的にお客様に「選んで良かった」と思っていただける顧客体験の循環をつくっていきたい。そういった部分が、我々CS組織としての存在価値であると考えています。
統合前に立ちはだかった「手動対応」と「ルール不統一」
ーRecustomer 導入前にはどのような課題がありましたか
河内様: 大きく2つありました。
1つ目は、返品・交換・キャンセル対応がCS業務に占める割合の大きさです。これらの対応はすべて人が一件ずつ手作業でこなしており、現場の負担は非常に大きい状態でした。
そして、同時にmix.tokyoへのブランドサイト統合プロジェクトも進行していたため、CS以外の業務にもリソースを大きく割く必要がありました。本来であれば顧客体験向上につながる業務改善や、マニュアルの整理、オペレーション改善といった業務に手を回したいのに、それらがすべて後回しになってしまっている。そうした状況に強い危機感がありました。
天野様: お客様の側から見ても、返品の手続きにおいてお手間をおかけしてしまっている場面が多かったと感じています。窓口がメールか電話しかなかったため、お問い合わせをいただく時間によっては回答までにお時間が発生し、内容によっては複数回のやり取りが発生してしまうこともありました。
もうひとつの大きな課題が、統合に伴うキャンセル・返品ルールの統一でした。複数のブランドそれぞれでキャンセル・返品ルールがバラバラの状態だったため、統合によって「以前はこうだった」というお問い合わせや、新しい手続き方法が分からないというお問い合わせが増えるリスクがありました。
購入体験の向上と業務効率化を両立する仕組みを求めて

▲TSIブランド公式モールmix.tokyo
https://mix.tokyo/
ーRecustomer 導入のきっかけは何でしたか
河内様: ブランド統合を進めるにあたって、CSルールの統一と返品・キャンセル対応の自動化は避けて通れないテーマだったため、購入後体験を一気通貫で支えるソリューションを探していた中でRecustomerを知りました。
ー導入の決め手は何でしたか
河内様: 最終的な決め手となったのは、お客様の購入体験(CX)の向上と、現場の業務効率化を高いレベルで両立できる点でした。
短期的なコスト削減だけを考えれば、極論として「返品・キャンセルは原則不可」とする選択肢もあるかもしれません。しかし、それでは購買の機会損失が圧倒的に大きくなってしまいます。
それよりも、返品をスムーズに行える仕組みを整えることで、お客様に大きな安心感を提供し、購入ハードルを下げることが重要だと考えました。同時に、自動化によって現場の負荷も大幅に軽減できます。返品をお断りすること自体がオペレーターにとっても心理的なストレスになりますから、そこを解消できることも含め、単なる効率化にとどまらない価値があると感じました。
キャンセル自動化90%、返品申請82%。守りから攻めへ転換するCS

▲Recustomer返品・キャンセルの画面イメージ
ー導入後の効果について、定量・定性の両面で教えてください
河内様: まず定量面では、キャンセル対応の約90%で自動化が実現しました。また、返品申請についても全体の約82%をRecustomerで受け付けており、一部の手動承認を除いたプロセスの大部分を自動化できています。
いずれも営業時間外を含めて多くのお客様がセルフでお手続きを完結できるようになり、CSが対応していた手間と時間が大きく圧縮されました。
定性面では、対応品質の均一化と公平性の向上が大きいです。人による属人対応だと、対応のムラやオペレーターごとのスタイルの違いがどうしても出てしまいますが、それが大きく解消されました。
そして、CSの業務時間そのものが「守りの業務」から「攻めの業務」へシフトしたことが、組織として最も大きな変化です。後回しになっていた業務見直し、マニュアル整備、オペレーション改善、業務基盤の強化にリソースを割けるようになり、最終的に業務全体の品質向上にもつながっています。
天野様: お客様目線では、ルールが分かりやすく、納得しやすい設計になったことが効果として大きいと思います。キャンセル・返品のルールを明確にしたことでお客様がご自身で判断しやすくなり、システム上で一貫してルールを提示することで「なぜできるのか / できないのか」が腑に落ちやすくなった。納得感のあるコミュニケーションにつながっているのではないかと感じています。
実際に、数字にも結果が表れています。通常の購入者と比較して、キャンセルを経験された方のLTVは約2倍、さらに返品を経験された方のLTVにいたっては約3.7倍という高い数値が出ています。不満や不安に繋がりやすい「返品・キャンセル」という体験をプラスの体験へと転換することが、結果としてブランドへの強い信頼形成に繋がっている。まさに、ロイヤル顧客に「より良い購入後体験」を提供することの重要性が、数字としても証明された形になります。
ー特に便利だと感じている機能はありますか
天野様: セルフサービス化された返品・キャンセル申請フローですね。注文番号からの本人確認、申請理由・使用状況・お客様コメントといった必要情報をすべて選択式+任意の自由入力にすることで、お客様が迷わず手続きを完了できる設計になっています。
加えて、写真アップロード機能によって、不良対応のような、従来は複数回メールが往復していたケースも、スムーズに進められるようになりました。
そして、24時間ご自身でキャンセル・返品ができる点も大きいです。実際に、お客様からのキャンセル希望の約70%が、夜間や休日といった弊社の営業時間外に発生していました。EC利用のピーク時間は夜やお休みの日が中心ですから、お客様の購買行動の時間と企業の営業時間のギャップを、システムが埋めてくれる意味は非常に大きいと感じています。
ECの返品は「自宅での試着」。購入後体験がLTV向上に直結
ー「返品しやすさ」がLTV向上に繋がっているというお話は、ECのあり方を覆す面白い視点ですね。
河内様: 実店舗とECの決定的な違いは、購入前に「手元に商品がないこと」です。アパレルECにおいて、サイズ感や素材感に対する不安はどうしても避けられません。
だからこそ私たちは、「ECにおける返品という行為は、実店舗で『試着』をしてみる感覚に非常に近い」と考えているんです。「返品しやすさ」を提供するというのは、単に「返しやすくする」のが目的ではなく、お客様に「自宅で気軽に試着する楽しさや安心感」を持っていただくための機会の提供なんです。
万が一サイズが合わなくても、スムーズに返品できる環境があるからこそ、「じゃあ、mix.tokyo内の別のブランドも試してみよう」と、ブランドを横断した新しい出会いにも繋がっていきます。
実際、ロイヤリティの高いお客様(ロイヤル顧客)ほど、この仕組みを「自宅での試着」として上手く実用されている傾向があります。複数サイズを同時に注文して、自宅で着比べてみて、自分に合うものだけを残して他を返品する、という買い方をされているんですね。
ー返品を「試着」と捉えることで、顧客との関係性そのものが変わると。
天野様: そうですね。以前の手動対応の時は、返品やキャンセルが発生すると、手続きの遅れなどから「体験の分断」が起きてしまい、次の購入に繋がりづらい側面がありました。しかし今では、手続き自体が購入体験の一部として、非常にポジティブに受け入れられている感覚があります。
ECのカスタマーサポートは、単にお問い合わせを捌く場所ではありません。安心して買える体験を作り、長期的な信頼関係を築くための「起点」として、これからのEC事業において重要な役割を担っていると確信しています。
購入後データを戦略資産へ。長期的な顧客関係をつくる次の一手とは
ー今後どのような取り組みに力を入れていかれますか
河内様: 購入後データの戦略的な活用です。返品・交換の理由データは、お客様の思考やブランドに対する課題を映し出す重要な情報です。これを継続的に蓄積し、新商品開発や適切なサイズ展開、色味の最適化に還元していきたいと考えています。
人手の対応だけではどうしても限界が来てしまうので、自動的にデータが蓄積されて分析・参照できる環境整備には、十分な時間をかける価値があると感じています。

▲返品データを自動集計をすることが可能
天野様: シナリオ設計の面では、ここまでの運用で見えてきたお客様の動きや、ブランドごとの特性を反映したアップデートを続けていきたいです。導入時に作ったシナリオは、運用してみて初めて気付くことが多くあり、出てきた課題を一つひとつ潰しながら改善を継続していく形になります。
ーRecustomer に今後期待することは何でしょうか
河内様: 購入後体験はEC事業者にとってこれからますます重要になる領域だと感じています。Recustomerには、データを蓄積するだけでなく、そこから次のアクションへつなげる分析・示唆出しの部分も、引き続き強化していっていただけると、我々のような複数ブランドを抱える事業者にとって大きな武器になると期待しています。
ーこれから購入後体験(CX)の改革や、CSの自動化・収益貢献化に取り組もうとしているEC事業者の方々へアドバイスをお願いします。
天野様: まずは「自社の現状をしっかりと把握すること」から始めるのが大切だと思います。現在行っている定型業務と、最終的にお客様に提供したい理想の体験をすべて洗い出し、照らし合わせながらシナリオを作っていく。これが最初のステップです。
どんなに時間をかけて完璧なシナリオを作ったつもりでも、実際に運用を始めてみると、必ず想定外の課題やお客様の細かな動きが見えてきます。大切なのは、最初から100点を目指すことではなく、運用しながら出てきた課題を「一つひとつ現場で潰していく」という形で、継続的にアップデートしていく姿勢だと思います。
河内様: 返品やキャンセル、交換といった一見ネガティブな対応は、人の手だけでやろうとするとどうしても限界が来てしまいます。だからこそ、まずはそれらを自動的に蓄積・可視化できる「仕組み」を整える環境整備に、時間をかける価値があります。
定型業務をシステムに任せて現場に時間的な余白を生み出し、可視化されたお客様の声(VOC)を商品改善やサイト改善へと還元していく。このポジティブな循環を少しずつでも回し始めることが、結果としてリピート率やLTVの向上、そしてCS組織の存在価値を高めることに繋がります。
ー最後に、mix.tokyo の今後の展望をお聞かせください
河内様: mix.tokyoは、お客様が複数ブランドを横断して「自分らしいファッション」に出会える場所であり続けたいと考えています。たとえば、あるブランドで購入されたお客様が、システムを通じて別のブランドを試してみる。万一サイズや雰囲気が合わなくても安心して返品できる環境があるからこそ、「試してみよう」とブランドを横断する動きが生まれます。
その安心して試せる体験こそが、ブランド統合プラットフォームとしてのmix.tokyoの強みだと考えています。CS部門としても、購入後体験の改革を起点に、お客様一人ひとりとの関係性を長く積み上げていけるような事業成長に貢献していきたいと思っています。
【編集後記】
今回の取材を通じて強く印象に残ったのは、「返品しやすさ」をコストではなくブランドの資産として捉え直すというmix.tokyo様の姿勢でした。 返品の自動化は現場の「効率化」にと思われがちですが、お二人の視点は「お客様の安心感」や「ブランドを横断した新しい出会い」、そして「LTVの向上」という購買体験全体を貫くストーリーへと繋がっていました。
CSを「守りのコスト部門」から「攻めの収益貢献部門」へと進化させていく姿は、購入後というデータを持つCS組織が、今後のEC事業において重要な存在になり得るかを示しています。50以上のブランドを擁する大規模プラットフォームでの先進的な取り組みは、規模を問わず多くのEC事業者にとって重要なヒントになるはずです。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 返品をしやすくすると、返品率が上がって利益が圧迫されませんか?
A. 結論から言うと、返品しやすくしても返品率は上がりません。
Recustomerが2,600万件以上の実データを分析した結果、導入前後の返品率に変化はなく、利用期間が長くなっても返品率が上がらないことが証明されています。
理由は3つあります。
- 動機の違い: 顧客が返品するのは「返品する動機がある」から、手続きが簡単だからといって満足している商品を返品する人はいません。
- 衝動買いの抑制: 返品ルールが明確になることで、かえって安易な購入が減ります。
- 商品の改善: 蓄積された返品理由データをもとにサイズガイドや写真を改善できるため、中長期的に返品原因そのものを減らせます。
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mix.tokyo様のスムーズな返品を経験した顧客のLTVは約3.7倍に跳ね上がる、という実績の通り、「返品しやすさ」はリスクではなく、返品率を維持したままロイヤル顧客を育てるための投資と言えます。
Q2. 返品・キャンセルのセルフサービス化はどこまで進められますか?
A.mix.tokyo様の事例では、キャンセルの自動化率90%、返品申請の自動化率82%(一部手動対応も含む)まで到達しています。注文番号からの本人確認、申請理由・使用状況の選択式入力、写真アップロード機能、任意のコメント入力までをセルフ完結できる設計にすることで、お客様は営業時間外でも手続きを完了できます。
Q3. カスタマーサポート(CS)を「守りのコスト部門」から「攻めの収益貢献部門」へと転換するには、まず何から始めるべきですか?
A. まずは、返品・キャンセル対応などの「定型的な問い合わせ対応」を徹底的に自動化・システム化し、現場のオペレーターがお客様と向き合うための「時間的な余白」を生み出すことから始まります。
削減できたリソースを、チャットでのアクティブな接客や、購入後体験(CX)の向上、VOC(お客様の声)の分析・サイト改善へのフィードバックといった「能動的なアクション」へシフトさせていくことが、収益貢献部門へと進化するための確実な第一歩となります。