
2026年7月1日、Visa・Mastercardのオーソリ有効期限を60〜90日間から最大25日間に短縮する「25日ルール」が施行されました。本記事を執筆している時点で施行からおよそ1ヶ月が経過し、EC予約販売の現場では実際に何が起きているのかという「観測結果」が見え始めています。
施行前は「7月から何が起きるか」という警戒が中心でしたが、施行後のいまは「実際に何が起きたか」「事業者はどう対応したか」に論点が移っています。
この記事では、施行後に顕在化した問題、影響が大きかった業界、事業者がとった暫定対応とその限界、そして次に控える2026年9月30日の規制への備えまでを整理します。断定できない他社動向については、観測された傾向として事実と分けて記述しています。
この記事の要点(30秒で読める)
- 25日ルールとは: 2026年7月1日施行。Visa・Mastercardのオーソリ有効期限が最大25日間(海外発行カードは最大7日間)に短縮
- 顕在化した3つの問題: 決済エラーの増加 / 予約販売の一時停止 / 前受金・売上計上をめぐる会計混乱
- 影響が大きい業態: 発送まで25日を超えるリードタイムの長い予約販売・受注生産
- 暫定対応の限界: 発送前キャプチャは規約違反リスク、予約中止は機会損失に直結
- 次の締切: 2026年9月30日、カード有効性確認目的の仮売上処理が禁止
25日ルールとは ― 2026年7月1日施行から現在地の整理
25日ルールとは、Visa・Mastercardのオーソリ(仮売上)有効期限を、従来の60〜90日間から最大25日間に短縮した国際ルールのことです。海外発行カードについてはさらに短く、最大7日間に制限されています。
2026年7月1日の施行から本記事執筆時点でおよそ1ヶ月が経過しました。発送まで25日を超えるリードタイムを抱える予約販売・受注生産のEC事業者にとって、この1ヶ月は「対応が間に合っていたか」が実際の決済結果として現れる期間になりました。
ルールの詳細な背景や数字の根拠は「オーソリ25日ルールとは?」で解説しています。ここでは施行後に何が起きたかに焦点を当てます。
施行後に顕在化した3つの問題(決済エラー / 予約停止 / 会計混乱)
施行後の1ヶ月で顕在化した問題は、大きく決済エラーの増加、予約販売の一時停止、会計処理の混乱の3つに整理できます。いずれも「25日を超えるリードタイム」という同じ構造的要因から派生しています。
1. 決済エラーの増加
発送まで25日を超える予約商品で、対策を講じていなかった注文についてオーソリが自動的に失効し、発送直前に決済エラーとなるケースが報告されています。エラーの原因切り分けと対処法は「予約販売の決済エラーが起きたら」で詳しく解説しています。
2. 予約販売の一時停止
決済トラブルを避けるため、リードタイムの長い商品カテゴリで予約受付を一時的に停止・縮小する動きがあるという声も聞かれます。安全策ではありますが、需要確保の機会そのものを手放す判断でもあります。
3. 前受金・売上計上をめぐる会計混乱
オーソリの再取得や失効のタイミングが変わったことで、経理側で前受金の管理や売上計上のタイミングに混乱が生じているケースもあります。会計処理の基本的な考え方は「予約販売の売上計上はいつ?」を参照してください。
影響が大きかった業界・販売形態
25日ルールの影響は一様ではなく、発送までのリードタイムが長い業界ほど深刻です。業界別の影響度は次のように整理できます。
特にフィギュア・ホビーのように海外生産で発売まで数ヶ月を要する業界は、25日という期限を単発の対応で乗り切ることが構造的に難しく、影響が最も顕著という声が上がっています。業界横断の詳細は「【業界別】EC予約販売の決済対応ガイド 2026」にまとめています。
事業者がとった暫定対応とその限界(発送前キャプチャ・予約中止)
施行直後の対応として多く見られたのが、発送前キャプチャと予約販売の一時中止という2つの暫定策です。いずれも決済トラブルそのものは回避できますが、別のリスクとトレードオフになっています。
発送前キャプチャの限界
オーソリの失効を避けるために、商品を発送する前に売上を確定(キャプチャ)してしまう対応です。この方法はオーソリ切れそのものは回避できますが、商品を引き渡す前に代金を確定させる形になるため、Visa・Mastercardの規約に抵触するリスクがあります。詳しくは「予約商品の「発送前キャプチャ」はVisa/Mastercard規約違反?」で解説しています。
予約中止の限界
リードタイムの長い予約商品の受付自体を止めてしまう対応です。決済トラブルは確実に避けられますが、その予約販売が担っていた需要確保・在庫リスク軽減という効果も同時に失われます。機会損失の規模感は「予約販売の機会損失シミュレーション」で試算できます。
どちらの対応も、決済という一点のリスクを避けるために、別の経営上のリスク(規約違反・売上機会の喪失)を引き受ける構造になっています。恒久的な解決には、与信を規約の範囲内で維持し続ける仕組みが必要です。
カート・決済代行各社の対応状況アップデート
施行から1ヶ月が経過し、カート・決済代行各社の対応状況にも動きがあります。主要各社は再オーソリに相当するAPIやガイダンスの提供を進めていますが、事業者側での運用構築が必要という基本構造は施行前と変わっていません。
カート別の対応状況は「【カート別】オーソリ期限25日短縮の対応状況」、決済代行別の対応状況は「【決済代行別】オーソリ期限25日短縮の対応状況」で随時アップデートしています。ルール変更の全体像は「【2026年版】Visa・Mastercard ルール変更一覧」を参照してください。
次の締切(2026年9月30日 仮売上禁止)への備え
25日ルールへの対応で手一杯になりがちですが、次の締切はすでに決まっています。2026年9月30日、カードの有効性確認のみを目的とした仮売上処理が禁止されます。
25日ルールが「期限の短縮」だったのに対し、この規制は「特定目的での仮売上そのものの禁止」です。0円や少額のオーソリで有効性だけを確認する運用を行っている場合、影響範囲を早めに点検しておく必要があります。詳細は「2026年9月30日「カード有効性確認目的の仮売上」禁止とは」で解説しています。
締切は連続する
25日ルール(7月)と仮売上禁止(9月)は別々の規制ですが、いずれもオーソリ・仮売上の運用を見直す圧力として同じ方向に働いています。1つずつ場当たり的に対応するより、決済運用全体を恒久的な仕組みで見直す方が、次の締切にも備えやすくなります。
恒久対策としての自動再オーソリ
施行後1ヶ月の観測から見えてきたのは、単発の暫定対応では次々と訪れる締切に追いつけないという現実です。恒久対策としては、期限が近いオーソリを自動で検知し、繰り返し再オーソリを行った上で、出荷を検知して自動的に売上確定へ切り替える仕組みが必要になります。
この一連の制御ロジックは、手動運用はもちろん、出荷前1回だけの単発自動化でも件数が増えるほど破綻しやすい領域です。手動・単発自動・自動ループという3パターンの比較は「再オーソリ(再与信)とは?」で詳しく整理しています。
Recustomerは、この自動で繰り返し再オーソリを行い、出荷を検知して自動更新をストップさせ実売上に移行する一連の制御ロジックについて特許(第7721200号)を取得しています。予約購入のように発送までリードタイムが発生するケースでも、この特許技術をベースにした決済枠の自動維持・更新が可能です。自社でゼロから自動ループを構築する場合、開発・保守コストの負担に加えて、今後もカードブランドのルール改定のたびに追随開発が必要になります。
よくある質問
Q. 25日ルールはいつ施行されましたか?
2026年7月1日に施行されました。Visa・Mastercardのオーソリ有効期限が従来の60〜90日間から最大25日間に短縮され、海外発行カードはさらに短く最大7日間に制限されています。
Q. 施行後に実際にどんな問題が起きていますか?
決済エラーの増加、予約販売の一時停止、前受金・売上計上をめぐる経理側の混乱という3つの問題が顕在化しています。発送まで25日を超えるリードタイムの長い予約販売・受注生産で特に影響が大きいという声が上がっています。
Q. 発送前キャプチャで対応するのは問題ないですか?
発送前にキャプチャ(売上確定)してしまう対応は、商品を引き渡す前に代金を確定させる形になるため、Visa・Mastercardの規約に抵触するリスクがあります。恒久対策としては推奨されない暫定回避策です。
Q. 予約販売を中止すれば安全ですか?
決済トラブルは避けられますが、予約販売自体が生み出していた需要確保・機会損失防止の効果も失われます。規約違反のリスクを避ける一方で、売上機会そのものを手放す判断になります。
Q. 次に来る規制は何ですか?
2026年9月30日に、カードの有効性確認のみを目的とした仮売上処理が禁止されます。25日ルールが期限の短縮だったのに対し、こちらは特定の目的での仮売上そのものを禁止する規制です。
Q. カートや決済代行各社の対応は進んでいますか?
主要なカート・決済代行会社は再オーソリに相当するAPIやガイダンスの提供を進めています。ただし提供されるのは単発の機能であり、期限管理や自動繰り返しの仕組みは事業者側で構築する必要がある点は施行前と変わっていません。
Q. 恒久対策として何をすればいいですか?
期限が近いオーソリを自動で検知し、繰り返し再オーソリを行った上で出荷時に自動的に売上確定へ切り替える仕組みの導入が恒久対策になります。手動運用や単発の自動化では件数が増えるほど破綻しやすいためです。
まとめ
- 25日ルールは2026年7月1日に施行され、本記事執筆時点で約1ヶ月が経過
- 施行後に顕在化したのは決済エラー・予約停止・会計混乱の3つの問題
- 影響が大きいのはフィギュア・ホビーや家具・受注生産などリードタイムの長い業界
- 暫定対応の発送前キャプチャは規約違反リスク、予約中止は機会損失というトレードオフを抱える
- 次の締切は2026年9月30日の仮売上禁止。締切は連続して訪れる
- 恒久対策は自動で繰り返し再オーソリし、出荷検知で自動停止する仕組みの導入
出典・参考文献
- Visa「Visa Core Rules and Visa Product and Service Rules」(2026年7月25日発効)
- PAY.JP「海外発行カードで取得できるオーソリ期限を「最大7日まで」に制限いたします」(2026年3月)
- 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)「特許第7721200号」(Recustomer社・自動再オーソリ制御)
- 本記事における事業者の対応動向は、施行後に観測された一般的な傾向としてまとめたものであり、特定企業を指すものではありません
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