
2026年7月の国内ECでは、上昇率上位10カテゴリのすべてが前月比2.3倍以上という需要の急変動が起きました。Shopify Japanが2026年8月6日に発表した、同社プラットフォーム上の国内販売動向によるものです。スポーツ用品からアイスクリーム、コスメ、食器まで、業種の異なるカテゴリが同じ1か月で一斉に跳ねています。
売れる瞬間をどう作るかには多くの関心が向きます。一方で、需要が数倍になれば在庫・出荷・カスタマーサポートの負荷も同じ倍率で増えます。この記事では2026年7月のデータを起点に、需要が短期間で数倍に振れることを前提として、在庫切れ・配送・返品という購入後の3領域をどう設計しておくかを整理します。
2026年7月、国内ECで需要が動いたカテゴリ
Shopify Japanは2026年8月6日、日本国内のShopify事業者の販売データを集計した2026年7月の国内販売動向を発表しました。比較対象は2026年6月です。上昇率の上位10カテゴリは次のとおりです。
| 順位 | カテゴリ | 前月比 |
| 1 | スポーツユニフォーム/レプリカジャージ | +806.5%(約9倍) |
| 2 | スポーツ応援グッズ | +382.2%(約4.8倍) |
| 3 | エンターテインメント系トレーディングカード | +268.3%(約3.7倍) |
| 4 | アイスクリーム | +165.5%(約2.7倍) |
| 5 | トレー・お盆 | +163.2%(約2.6倍) |
| 6 | アイライナー | +155.8%(約2.6倍) |
| 7 | リキュール | +147.2%(約2.5倍) |
| 8 | スキンケアキット・セット | +144.2%(約2.4倍) |
| 9 | 自動車用サンシェード | +136.3%(約2.4倍) |
| 10 | 食器セット | +131.6%(約2.3倍) |
このほか、家庭用防虫剤が+103.3%、ぶどうが+73.3%、ハンディファン・ミストが+58.2%と発表されています。
並べてみると、需要の理由が1つに揃っていないことが分かります。スポーツ用品とトレーディングカードはイベントや大会という「日付」に、アイスクリームとサンシェードと防虫剤は気候に、アイライナーとスキンケアキットは季節のトレンドに、トレー・食器セットは家庭内の利用場面に紐づいています。同じ月に、まったく別の理由で立ち上がった需要が並んでいるということです。
Shopify Japanのカントリーマネージャー馬場道生氏も、消費者の関心や購買行動は季節だけでなくイベントや社会的なトレンド、商品の利用場面など、さまざまな要素によって短期間で変化するとコメントしています。裏を返せば、自社の商材が「特需とは縁がない」と言い切れるカテゴリはほとんどありません。
「1か月で数倍」がECの購入後に生む3つの負荷
需要が数倍になったとき、負荷は注文の瞬間だけでは終わりません。時間差をつけて3つの形で現れます。
1. 在庫切れ ― 仕入れが需要の立ち上がりに追いつかない
月単位で数倍という変動幅は、通常の発注サイクルで吸収できる範囲を超えます。結果として、最も売れているタイミングで在庫切れ表示が並ぶという事態が起きます。ここで失われるのは目の前の1件の売上だけではありません。買えなかった購入者は競合サイトで同じ商品を探すため、需要のピークそのものを他社に渡すことになります。
2. 出荷・配送の遅延と、それに伴う問い合わせの増加
注文が数倍になれば、倉庫のピッキング・梱包・集荷の各工程が詰まります。通常なら翌日出荷できていたものが2〜3日ずれるだけで、購入者にとっては「注文したのに動きがない」状態になります。そして配送に関する不安は、そのまま問い合わせとしてカスタマーサポートに届きます。出荷が遅れている時期は、CSの人員も同時に足りなくなっている時期です。
3. 返品・キャンセルは、売上のピークより遅れて来る
返品は商品が届いた後に発生するため、売上のピークから数日から数週間遅れて到達します。特需で人員を厚くした体制を元に戻したころに、返品の波が来るということです。イベント需要の商材であれば「使う日を過ぎたのでもう不要」という申し出も加わります。
返品率はカテゴリによって大きく異なり、同じ増加率でも返品件数のインパクトは変わります。自社カテゴリの水準は業界別の返品率の平均で確認しておくとよいでしょう。
在庫切れを「機会損失」で終わらせない受け皿を先に作る
需要の急増そのものは事前に読み切れません。読み切れない以上、備えるべきは予測精度ではなく「読み違えたときの受け皿」です。
具体的には、在庫がゼロになった時点で購入導線を閉じるのではなく、予約注文または再入荷時の購入予約として受け続けられる状態にしておくことです。在庫切れ表示のまま放置した場合との差は、その1か月の売上ではなく、購入者がそのサイトを再訪する習慣が残るかどうかに出ます。欠品を売上に変える考え方は「在庫切れ」のままにしていませんかで海外事例をもとに整理しています。
ここで実務上の論点になるのが、カードの与信(オーソリ)の有効期限です。注文時に確保した与信には期限があり、入荷・出荷までの日数が長いと期限切れによる未回収が発生します。Visa Core RulesはEC標準のオーソリ有効期間を10暦日、延長リクエストを行った場合で最大30暦日と定めており、国内の決済代行各社はこれに準拠して、余裕を持たせた25日程度を実務上の期限として設定する動きを2026年に進めています。適用の開始時期は決済代行会社ごとに異なるため、自社が契約している事業者の告知を個別に確認してください。背景の詳細はオーソリ25日ルールとはにまとめています。
予約や再入荷での受注を売上に変えるには、この与信を出荷の瞬間まで維持しておく仕組みが必要です。Recustomerの予約購入・再入荷確保では、注文時に与信のみを確保し、再オーソリで枠を維持したうえで、出荷のタイミングで売上を確定させる運用ができます。詳細はRecustomer Secureについて詳しく見るから確認できます。
「まだ届かない」を問い合わせにしない配送追跡の設計
出荷が詰まる時期に問い合わせが増えるのは、遅延そのものよりも「いまどうなっているか分からない」ことが原因です。逆に言えば、状況を先に伝えられていれば、同じ遅延でも問い合わせは発生しません。
配送に関する連絡は、購入者がよく読む数少ないメールでもあります。Recustomerの実測では、39ストア・約600万通(2026年1〜4月)の配送追跡メールの平均開封率は64.0%でした。特需で新規購入者が一気に増える時期は、この接点がブランドの第一印象を決めます。活用方法は配送追跡メールの開封率は64%で解説しています。
準備しておくことは3つです。第1に、出荷遅延が見込まれる場合の告知文面をあらかじめ用意しておくこと。第2に、注文後から配達完了までのステータスを購入者が自分で確認できる導線を置くこと。第3に、遅延時に「いつ届くか」ではなく「いま何が起きていて、次にいつ連絡するか」を伝えることです。
特需の後に来る返品・キャンセルを、人員で吸収しない
需要が数倍になった月の返品・キャンセルを、その都度メールで個別対応していると、対応工数は注文数の増加率をそのまま追いかけます。特需の直後に人員を増やすことは現実的ではないため、増加分は自動化で吸収する設計にしておく必要があります。
設計の要点は次の4つです。
- 返品の可否をルールで自動判断する(カテゴリ別の受付期間、カスタム品の対象外設定など)
- 返品理由が「サイズが合わない」等の場合は、返金より先に交換を提示して売上を残す
- 出荷前のキャンセルは購入者が自分で完了できるようにし、CSを経由させない
- 返送は集荷連携で完結させ、購入者に持ち込みの手間をかけない
特に出荷前のキャンセルは、特需期に増えやすい一方で、人が対応する価値がほとんどない領域です。ここを自己解決に回すだけで、CSは本当に判断が必要な問い合わせに時間を使えるようになります。
よくある質問
Q. Shopifyの国内販売動向は、自社ECの需要予測にそのまま使えますか?
そのままの数値を自社の予測値として使うことはおすすめしません。集計対象は日本国内のShopify事業者の販売データであり、具体的な集計方法や母数は公表されていないためです。使い方としては、需要予測の材料ではなく「自社のカテゴリでも1か月で数倍の変動が起こりうる」という前提を確認するための材料と考えるのが適切です。
Q. 需要が急増したとき、購入後の対応で最初に手をつけるべきことは何ですか?
在庫切れ商品の購入導線と、出荷遅延の告知の2つです。在庫切れは放置している間ずっと需要が競合に流れ続けるため、予約または再入荷購入の受け皿を用意することが最優先になります。次に、出荷が遅れる見込みが立った時点で先に伝えることで、問い合わせの発生そのものを減らせます。
Q. 在庫がない商品を予約販売に切り替えるとき、決済で注意すべき点は?
注文時に確保したカードの与信に有効期限がある点です。Visa Core RulesはEC標準で10暦日、延長リクエストを行った場合で最大30暦日と定めており、国内の決済代行各社はこれに準拠して25日程度を実務上の期限として設定する動きを進めています。適用時期は決済代行会社ごとに異なるため、入荷までの想定日数が期限を超える場合は、与信を維持する仕組みを先に用意しておく必要があります。
Q. 特需カテゴリの返品対応は、通常商材と何を変えるべきですか?
受付期間の起算日と、カスタム品・イベント商材の扱いです。返品の受付期間は注文日ではなく商品の到着日を起算にしておかないと、出荷が遅れた分だけ購入者の実質的な検討期間が短くなります。また、名入れなどのカスタム品や使用日が決まっている商材を返品対象外にする場合は、購入前に見える場所へ表示しておくことが条件になります。
まとめ
2026年7月の国内ECでは、上昇率上位10カテゴリのすべてが前月比2.3倍以上となり、スポーツ用品からアイスクリーム、コスメ、食器まで、理由の異なる需要が同じ月に一斉に立ち上がりました。需要の急変動は特定の業種の話ではなく、どのカテゴリにも起こりうる前提として扱うべき段階に来ています。
備えるべきは予測精度ではなく、読み違えたときの受け皿です。在庫切れは購入導線を閉じずに予約・再入荷で受け続ける。出荷遅延は問い合わせが来る前に伝える。返品・キャンセルの増加分は人員ではなく自動化で吸収する。この3つは、需要が来てからでは整えられません。
特需は、新規購入者にブランドを初めて体験してもらう機会でもあります。その体験の大半は、注文ボタンを押した後に決まります。
出典・参考文献
- Shopify Japan株式会社「Shopify、2026年7月の国内販売動向を発表」(2026年8月6日)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000170.000034630.html
- Visa「Visa Core Rules and Visa Product and Service Rules」(オーソリ有効期間の規定)https://usa.visa.com/dam/VCOM/download/about-visa/visa-rules-public.pdf
- Recustomer実測(39ストア・約600万通、2026年1〜4月)配送追跡メール平均開封率64.0%。詳細は配送追跡メールの開封率は64%を参照
需要の波に合わせて人を増やせないなら、購入後の対応を仕組みで吸収するしかありません。Recustomerは、返品・交換・キャンセルの受付から返送の集荷、配送追跡、在庫切れ時の予約・再入荷購入までを一つの管理画面で自動化できるサービスです。特需期のCS負荷を抑えながら、機会損失と返品による売上の目減りを同時に減らせます。
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