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  • Ryosuke Yamazumi

「送料無料」の看板が消えていく ― 物流の2026年問題で相次ぐEC送料改定、日本のEC事業者が今すべきこと

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2026年8月、「送料無料」を掲げてきた複数の日本のEC事業者が、相次いで送料改定・送料無料ラインの引き上げを発表しています。リボン・ラッピング用品の東京リボン株式会社(8月21日出荷分より)、シューズブランドのPATRICK(9月1日改定)、健康食品通販のSK本舗(8月23日改定)、愛媛県の食品D2C「無茶々園」(8月26日発表)と、業種を問わない広がりを見せています。

 

背景にあるのは、運送会社からの値上げ要請だけではありません。2026年4月に全面施行された改正物流効率化法、いわゆる「物流の2026年問題」により、荷主企業にも物流コストの適正負担と効率化への関与が制度として求められるようになったことが重なっています。

 

この記事では、2026年8月に相次いだ送料改定の具体的な事例、その背景にある制度変更、そして日本のEC事業者が送料設計と配送体験をどう見直すべきかを解説します。

この記事の要点(30秒で読める)

  • 何が起きた? 2026年8月、東京リボン・PATRICK・SK本舗・無茶々園など複数のEC事業者が送料改定・送料無料ラインの引き上げを相次いで発表
  • なぜ? 運送コスト高騰に加え、2026年4月施行の改正物流効率化法(物流の2026年問題)で荷主にも物流効率化への関与が制度化された
  • 制度の中身は? 年間9万トン以上を扱う「特定荷主」(約3,200社)に物流統括管理者(CLO)の選任義務。違反は100万円以下の罰金
  • 法律面の論点は? 消費者庁は2023年12月、「送料無料」表示の誤認を避けるための自主的な見直しを事業者に要請済み
  • EC事業者への示唆は? 値上げ告知の丁寧さと、配送追跡など送料以外の体験価値の強化がセットで必要

 

「物流の2026年問題」とは

「物流の2026年問題」とは、2026年4月に全面施行された改正物流効率化法(正式名称:物資の流通の効率化に関する法律)により、荷主企業にも物流の効率化・適正負担への関与が制度として義務付けられたことを指します。2024年の時間外労働規制強化(いわゆる「2024年問題」)がトラック事業者側の課題だったのに対し、2026年問題は荷主側に踏み込んだ規制という点が特徴です。

 

具体的には、年間9万トン以上の貨物を取り扱う「特定荷主」(国土交通省の試算で全国約3,200社)に対し、物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任と、中長期計画の作成・定期報告が義務付けられました。CLOは現場の物流担当者ではなく、経営幹部の立場から自社の物流全体を統括する責任者と位置づけられており、違反時には100万円以下の罰金が科されます。

 

EC事業者の多くは直接「特定荷主」に該当する規模ではありませんが、委託先の運送会社や卸元が特定荷主・特定事業者としてコスト構造の見直しを迫られており、その負担が運賃改定という形でEC事業者側にも波及しています。

 

2026年8月に相次いだ送料改定の具体事例

2026年8月だけで、業種の異なる複数のEC事業者が送料改定を公表しています。いずれも「運送コストの上昇」「現行送料の維持が困難」という理由が共通しています。

 

事業者 業種 発表日 / 適用日 改定内容
東京リボン株式会社 リボン・ラッピング用品 発表8/5 / 適用8/21出荷分〜 運送各社からの大幅な送料値上げを受け改定(金額は個別案内)
PATRICK シューズブランド 発表8/7 / 適用9/1〜 本州・四国・九州 660円→990円、無料ライン11,000円→15,400円
SK本舗 健康食品通販 発表8/24 / 適用8/23〜 300円→500円(5,500円未満)、無料ラインは5,500円以上で維持
無茶々園 食品D2C(愛媛) 発表8/26 北海道・沖縄への配送維持が困難になったための改定

 

PATRICKの事例は特に具体的で、本州・四国・九州の送料を660円から990円へ、北海道は880円から1,210円へ、沖縄は1,320円から1,650円へと引き上げ、送料無料ラインも11,000円以上から15,400円以上へと引き上げています。無茶々園のように、離島・遠隔地への配送維持そのものが困難になっているという声が上がっている点も見逃せません。

 

なぜ今、送料改定が相次いでいるのか

送料改定が相次ぐ背景には、(1)運送会社側のコスト構造の変化、(2)荷主側への規制強化、(3)「送料無料」表示への行政の目という3つの要因が重なっています。

 

1. 運送コストの継続的な上昇

ドライバー不足と燃料費・人件費の高騰は2024年問題以降続く構造的な課題です。日本郵便のゆうパックも2026年10月に平均10%の値上げが予定されており、大手キャリアの運賃改定は今後も続く見通しです(関連記事: ゆうパック値上げとEC事業者が見直すべき送料設計)。

 

2. 改正物流効率化法による荷主側への規制強化

前述の通り、2026年4月の全面施行により、特定荷主にはCLO選任・中長期計画・定期報告が義務化されました。委託元・卸元がこの対応コストを負う中で、川下のEC事業者にも運賃転嫁の圧力が及んでいます。

 

3. 「送料無料」表示への行政の目

消費者庁は2023年12月、「送料当社負担」「送料無料」といった表示が、実際には商品価格に送料相当分が上乗せされているだけではないかという誤認を招きかねないとして、EC事業者に表示の自主的な見直しを求める方針を示しています。今回の送料改定ラッシュは、こうした行政の姿勢とも軌を一にする動きと言えます。

 

日本のEC事業者への示唆

送料改定そのものは避けられない事業者が増える中、重要なのは「値上げの伝え方」と「送料以外で提供できる体験価値」です。以下の3点を具体的なアクションとして検討してください。

 

1. 値上げの理由を先回りして説明する

PATRICKや東京リボンの告知はいずれも「運送コストの上昇」という理由を明記しています。値上げの背景(2026年問題・運送会社の値上げ要請)を具体的に説明することで、顧客の納得感を高められます。

 

2. 「送料無料」表示のリスクを点検する

消費者庁の見直し要請を踏まえ、自社の送料表示が「送料込み」「送料当社負担」なのか「送料無料(条件あり)」なのかを整理し、誤認を招く表現がないか点検することを推奨します。

 

3. 配送体験の充実で送料値上げの影響を和らげる

送料が上がっても、配送状況をリアルタイムで把握できる追跡体験や、到着予定日の正確な通知があれば「安心して待てる」という体験価値でカバーできます。送料改定のタイミングは、配送追跡体験を見直す好機でもあります(関連記事: 「非対面受け取り」3割突破に見る配送体験の設計)。

まとめ

  • 2026年8月、東京リボン・PATRICK・SK本舗・無茶々園など複数のEC事業者が送料改定・送料無料ライン引き上げを発表
  • 背景には運送コスト高騰に加え、2026年4月施行の改正物流効率化法(物流の2026年問題)による荷主側への規制強化がある
  • 年間9万トン以上を扱う「特定荷主」約3,200社には物流統括管理者(CLO)選任が義務化。違反は100万円以下の罰金
  • 消費者庁は「送料無料」表示の誤認防止のため自主的な見直しを要請済み
  • EC事業者は値上げ理由の丁寧な説明と、配送追跡など体験価値の強化をセットで検討すべき

 

よくある質問

 

Q. なぜ2026年8月に送料改定・送料無料ラインの引き上げが相次いでいるのですか?

運送会社からの運賃値上げ要請に加え、2026年4月に全面施行された改正物流効率化法(物流の2026年問題)により、荷主企業にも物流コストの適正な負担が求められるようになったためです。東京リボン、PATRICK、SK本舗、無茶々園など複数のEC事業者が2026年8月に相次いで送料改定を発表しています。

 

Q. 「物流の2026年問題」とは何ですか?

2026年4月に全面施行された改正物流効率化法により、年間9万トン以上の貨物を取り扱う「特定荷主」(国交省試算で約3,200社)に、物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の作成・定期報告が義務付けられた制度変更のことです。違反した場合は100万円以下の罰金が科されます。

 

Q. 物流統括管理者(CLO)とは何ですか?

CLO(Chief Logistics Officer)は、経営幹部の立場から自社の物流全体を統括する責任者です。改正物流効率化法により、年間9万トン以上の貨物を扱う特定荷主に選任が義務付けられており、トラックドライバーへの負荷低減や中長期計画の策定・報告を担います。

 

Q. 送料無料表示を見直す際、法律上の注意点はありますか?

消費者庁は2023年12月、「送料無料」等の表示について、実際は商品価格に送料が上乗せされているのではないかという誤認を避けるため、EC事業者に表示の自主的な見直しを求める方針を示しています。送料を明確に区分する、または「送料込み」等へ表現を改めるといった対応が求められます。

 

Q. 送料値上げでカゴ落ち・離脱が増えないようにするにはどうすればいいですか?

値上げの理由(運送コスト高騰・2026年問題)を事前に丁寧に告知し、値上げ後も配送状況が分かる追跡体験や到着予定日の通知など、送料以外の体験価値を強化することが有効です。価格改定の告知タイミングと合わせて、配送体験全体の満足度を上げる施策を検討することが重要です。

 

Q. 配送体験そのものを改善することで送料値上げの影響を和らげられますか?

送料が上がっても、配送状況の可視化や到着予定日の正確な通知など「安心して待てる」体験を提供できれば、顧客満足度の低下を抑えられます。実際に配送追跡の充実は問い合わせ削減や再購入率向上につながることが報告されています。

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参考・出典

  1. 東京リボン株式会社「送料改定のお知らせ」(2026年8月5日発表)
  2. PATRICK OFFICIAL ONLINE SHOP「配送料および送料無料条件改定のお知らせ」(2026年8月7日発表)
  3. SK本舗「国内通常配送の送料改定のお知らせ」(2026年8月24日発表)
  4. 無茶々園「送料改定のお知らせ」(2026年8月26日発表)
  5. 国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)

 

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