
一般社団法人日本クレジット協会(JCA)は2026年9月7日、2026年第2四半期(4〜6月)のクレジットカード不正利用被害額が107.7億円だったと公表しました。第1四半期(113.6億円)と比べて約5.2%減少した計算になります。
ただし内訳を見ると、カード情報を盗み取って非対面のオンライン取引で使う「番号盗用被害」が100.1億円と、全体の92.9%を占めています。被害総額が減少傾向にある一方で、ECサイトを主戦場とする番号盗用の構造は変わっていません。この記事では、最新統計の中身と、日本のEC事業者が今見直すべき不正対策を解説します。
この記事の要点(30秒で読める)
- 2026年Q2の被害額は? クレジットカード不正利用被害額107.7億円(前期比5.2%減)
- 主因は? 「番号盗用被害」100.1億円が全体の92.9%を占める
- 国内・海外は? 番号盗用被害のうち国内67.0億円(66.9%)、海外33.1億円(33.1%)
- 発生率は? 不正利用発生率は0.029%(前期比0.004ポイント減)
- なぜ油断できない? 3Dセキュア義務化でチャージバックは減っても、番号盗用そのものは高止まり
「番号盗用被害」とは
番号盗用被害とは、第三者が不正に入手したクレジットカード番号を使い、カードを偽造することなくECサイトなど非対面のオンライン取引で不正に決済を行う被害のことです。フィッシングサイトや情報漏えい、マルウェアなどによって流出したカード番号・有効期限・セキュリティコードの組み合わせが悪用されるケースが中心です。
日本クレジット協会は、クレジットカード不正利用被害額を「偽造カード被害」「番号盗用被害」「その他不正利用被害」の3つに区分して集計しています。偽造カードは物理的なカードそのものを複製する手口ですが、番号盗用はカード実物を必要としないため、ECのように対面確認のない取引で発生しやすいという特徴があります。
オーソリ(仮売上)やキャプチャ(売上確定)の基礎知識は「オーソリ(仮売上)とは? EC決済の仕組みをわかりやすく解説」でも解説しています。
JCA最新統計の詳細 ― 何が分かったか
2026年第2四半期の不正利用被害額は107.7億円で、第1四半期の113.6億円から5.9億円減少しました。内訳を四半期ごとに比較すると、次のようになります。
| 期間 |
不正利用被害額 |
偽造カード被害 |
番号盗用被害 |
その他不正利用被害 |
不正利用発生率 |
| 2026年Q1(1〜3月) |
113.6億円 |
1.5億円 |
106.0億円 |
6.1億円 |
0.033% |
| 2026年Q2(4〜6月) |
107.7億円 |
1.4億円 |
100.1億円 |
6.2億円 |
0.029% |
構成比で見ると、番号盗用被害はQ1が93.3%、Q2が92.9%とほぼ横ばいで、依然として被害額全体の9割超を占め続けています。2025年通年の不正利用被害額は510.5億円(前年の555.0億円から減少)であり、2026年上半期(221.3億円)はそのペースをやや下回る水準です。
番号盗用被害の国内・海外内訳では、2026年第2四半期は国内被害額67.0億円(66.9%)、海外被害額33.1億円(33.1%)となっており、国内での被害が海外の約2倍を占めています。
なぜ「被害額は減っているのに油断できない」のか
2025年4月に全EC事業者へ義務化されたEMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)により、本人認証を経た取引ではEC事業者が直接負担する不正利用チャージバックが減少しやすくなりました。これが被害額全体の減少傾向の一因と見られています。
一方で、決済セキュリティの専門企業である株式会社アクルは、「3Dセキュアによって不正利用に起因するチャージバックがEC事業者に見えにくくなった」としつつ、「チャージバックが見えなくなった=不正がなくなった、ではない」と指摘しています。同社は、不正対策のKPIを「不正件数ゼロ」から「決済承認率の維持・改善」へ転換すべきだと提言しています。
実際、番号盗用被害額は2026年第2四半期も100.1億円と高水準が続いています。3Dセキュアは「なりすまし決済の成立」を防ぐ効果はあっても、「カード番号が盗まれること自体」を防ぐものではありません。フィッシングや情報漏えいによるカード情報の窃取は今後も継続すると見るべきです。
日本のEC事業者への示唆
被害額の減少という数字だけを見て「対策は十分」と判断するのは早計です。EC事業者が今見直すべきポイントは、大きく3つあります。
1. リスクベース認証の設定を定期的に見直す
3Dセキュア2.0はリスクの高い取引だけ追加認証を求める「リスクベース認証」が基本です。加盟店側のリスク判定ルールが甘いままだと、番号盗用による不正取引がfrictionless(認証なし)で通過してしまう可能性があります。決済代行会社と連携し、判定基準の見直しを定期的に行うことが重要です。
2. 不正利用に伴う返金・キャンセル対応のオペレーションを整備する
番号盗用による不正取引は、発覚後にチャージバックや返金・出荷停止の対応が発生します。件数が増えるほど、検知から返金・キャンセルまでの一連の対応を手作業で回すのは業務負荷が大きくなります。予約販売や受注生産のようにリードタイムが長い取引では、再オーソリのたびに不正確認のタイミングが増える点にも注意が必要です。
3. 指標を「不正件数」だけでなく「決済承認率」でも見る
不正対策を強化しすぎると、正規の顧客の決済まで弾いてしまい、機会損失につながります。不正利用の被害額・件数と合わせて、決済承認率という指標でバランスを確認する運用への転換が、業界内でも提言され始めています。
チャージバックとキャンセル対応はセットで設計する
不正利用の検知から返金・キャンセルまでの一連のオペレーションを整備しておくことは、番号盗用の被害を最小化するだけでなく、正規顧客からの返品・交換・キャンセル対応の効率化にも直結します。詳しくは「EC事業者のためのチャージバック対策ガイド」もあわせてご覧ください。
次の一歩を、負担の軽い順に選べます
いきなりご相談でなくてもかまいません。情報収集の段階なら資料から、具体的にご検討中ならオンラインでの個別相談をご利用ください。
よくある質問
Q. 「番号盗用被害」とは何ですか?
第三者が不正に入手したクレジットカード番号を使い、カードを偽造することなくECサイトなど非対面のオンライン取引で不正に決済を行う被害です。日本クレジット協会の統計では、不正利用被害の内訳の中で一貫して最大の割合を占めています。
Q. 2026年第2四半期のクレジットカード不正利用被害額はいくらですか?
2026年9月7日に日本クレジット協会が公表した統計によると、107.7億円(第1四半期比5.2%減)です。内訳は偽造カード被害1.4億円、番号盗用被害100.1億円、その他不正利用被害6.2億円で、番号盗用被害が92.9%を占めます。
Q. 被害額が減っているのに、なぜ油断できないのですか?
2025年4月の3Dセキュア義務化でEC事業者が直接負担するチャージバックは減少しましたが、専門家は「不正が見えにくくなっただけ」と指摘しています。番号盗用被害額自体は100億円超と高水準が続いており、カード情報の窃取は継続しています。
Q. EC事業者は不正利用対策としてまず何をすべきですか?
リスクベース認証の判定基準を定期的に見直すこと、不正利用時の返金・キャンセル・出荷停止のオペレーションを整備すること、そして指標を「不正件数」だけでなく「決済承認率」でも捉えることが重要です。
Q. 3Dセキュア2.0義務化で不正利用はなくなったのですか?
なくなってはいません。本人認証を経た正規の取引についてEC事業者が負担するチャージバックは減少しましたが、番号盗用を中心とした不正利用被害額自体は2026年も継続して発生しています。
Q. 不正利用発生率とは何ですか?
クレジットカード不正利用被害額を、消費者が利用したクレジットカードショッピング信用供与額で割った比率です。2026年第2四半期は0.029%で、第1四半期の0.033%から0.004ポイント低下しました。
Q. 番号盗用被害は国内と海外どちらが多いですか?
2026年第2四半期の番号盗用被害額100.1億円のうち、国内被害額が67.0億円(66.9%)、海外被害額が33.1億円(33.1%)と、国内での被害が海外の約2倍を占めています。
まとめ
- 2026年第2四半期のクレジットカード不正利用被害額は107.7億円(前期比5.2%減)
- 内訳は番号盗用被害が100.1億円(92.9%)と大半を占める
- 番号盗用被害の内訳は国内67.0億円・海外33.1億円
- 不正利用発生率は0.029%(前期比0.004ポイント減)
- 3Dセキュア義務化でチャージバックは見えにくくなったが、不正自体は継続している
- EC事業者はリスクベース認証の見直し・返金対応の整備・決済承認率の可視化を進めるべき
参考・出典
- 一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の発生状況(四半期:主要事業者ベース)」(2026年9月7日公表)
- ECのミカタ「2026年第2四半期、クレカの不正利用被害額 前期比5.2%減 日本クレジット協会調査」(2026年9月11日)
- 株式会社アクル「クレジットカード不正対策の目的が大きく変わった?EC事業者は何のために不正対策を行うべきか」(2026年1月21日)
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