
SHEINは2026年10月15日、大阪に国内2拠点目となる返品倉庫を設置し、同年9月から運営を始めたと発表しました。注目すべきは倉庫の数ではなく、返品の移動距離と処理の滞留を減らし、返金を待つ時間そのものを購入後体験の改善対象にした点です。
同社によると、稼働開始後の第1週には、自社販売商品の集荷から倉庫到着、処理完了までが前週比で約8時間短縮されました。日本のEC事業者にとっても、返品は返金コストで終わる業務ではなく、問い合わせ、顧客離脱、在庫回転、交換による売上維持をまとめて左右する経営テーマです。
返品物流(リバースロジスティクス)とは
返品物流とは、顧客から商品を回収し、倉庫で受領・検品したうえで、返金、交換、再販、修理、廃棄などへ振り分ける一連の流れです。商品を顧客へ届ける通常の物流とは逆向きに動くため、リバースロジスティクスとも呼ばれます。
返品申請がオンラインで完了しても、顧客にとって返品体験が終わるわけではありません。返送、倉庫到着、検品、返金承認、金融機関への反映まで情報が途切れると、「荷物は届いたか」「返金はいつか」という問い合わせが増えます。
| 工程 |
起こりやすい滞留 |
利益への影響 |
| 返送 | 遠い返送先、発送方法の迷い | 問い合わせ増、返品放棄による不満 |
| 受領・検品 | 繁忙期の集中、注文情報との照合 | 返金遅延、再販機会の減少 |
| 返金・交換 | 承認待ち、部門間の引き継ぎ | 顧客離脱、返金による売上消失 |
SHEINの国内2拠点体制で何が変わったのか
SHEINは2022年3月から埼玉の返品倉庫を運営してきました。今回の大阪拠点は関西、山陽・山陰、四国、九州を担当し、埼玉拠点は関東、東北、信越、北陸、東海、北海道、沖縄を担当します。
西日本から埼玉へ集約していた返品を大阪でも受けることで、関西周辺の輸送距離を短くし、二拠点で処理量を分散します。同社は、セールや購入ピーク時にも処理スピードを安定させる狙いを説明しています。
数字の読み方: 約8時間短縮は、大阪倉庫の稼働開始後の第1週と前週を比べたSHEIN公表値です。長期平均や他社でも同じ効果が出ることを示す数値ではないため、自社では地域別の基準値を置いて検証する必要があります。
SHEIN公式FAQでは、返送品を倉庫で受領した後、5営業日以内に検品と返金手続きを完了すると案内しています。返金状況を注文履歴から確認でき、集荷から14日以上ステータスが更新されない場合の問い合わせ方法も示しています。
なぜ返金までの時間が売上・利益に直結するのか
返品処理が遅いと、同じ顧客から「到着確認」と「返金予定」の問い合わせが発生します。担当者の工数だけでなく、回答を待つ顧客の不安が次回購入の判断に残るため、購入後対応の遅れは将来売上にも影響します。
もう一つの影響は在庫です。返品商品が倉庫に届いても、検品と在庫計上が終わらなければ販売できません。季節性の高い商品ほど、数日の遅れが値下げや販売機会の喪失につながります。
さらに、返品理由に合う交換品を提案できれば、返金で消えるはずだった売上を残せます。拠点の近さだけでなく、返品申請時の選択肢、交換在庫の確保、返金までの進捗通知を一つの業務として設計することが重要です。
日本のEC事業責任者が実行すべき4つのこと
1. 「返金日数」を一つの数字にまとめない
返品申請から返送開始、倉庫到着、検品完了、返金処理、顧客の口座反映までを分けて計測します。地域別、商品カテゴリ別、返送方法別に並べると、倉庫を増やすべきか、検品を改善すべきか、通知を直すべきかが見えます。
2. 拠点新設の前に返送ルーティングを試す
中小ECがいきなり自社倉庫を二つ持つ必要はありません。西日本の返品だけ外部倉庫へ振り分ける、繁忙期だけ処理能力を追加するなど、対象地域と期間を限定して所要時間と費用を比較できます。
3. 交換を返金の後工程にしない
返金が完了してから買い直しを促すと、顧客はいったん離脱します。返品理由がサイズや色であれば、申請時に交換可能な在庫を示し、交換を選べるようにすると、売上を保ったまま課題を解決しやすくなります。
4. 例外時の連絡を先回りする
通常の処理日数を超えた注文、倉庫で照合できない返送品、検品で確認が必要な商品を自動で抽出します。顧客から連絡が来る前に、現在地と次の更新予定を知らせれば、問い合わせを減らしながら信頼を守れます。
| KPI |
見る目的 |
| 返送開始から返金完了までの時間 | 地域・工程ごとの滞留を特定する |
| 返品1件当たり問い合わせ率 | 進捗情報の不足を把握する |
| 交換転換率 | 返金で消える売上をどれだけ残せたか測る |
| 再販可能在庫への復帰時間 | 値下げと販売機会損失を抑える |
よくある質問
Q: 返品物流(リバースロジスティクス)とは何ですか?
A: 顧客から返品された商品を回収し、倉庫で受領・検品したうえで、返金、交換、再販、廃棄などへ振り分ける一連の物流と業務です。
Q: SHEINは大阪の返品倉庫で何を変えましたか?
A: 埼玉に加えて大阪へ国内2拠点目の返品倉庫を設け、東日本と西日本で返品を分散処理する体制にしました。
Q: 約8時間短縮とは何の時間ですか?
A: SHEIN自社販売商品の集荷から倉庫到着、処理完了までの返品物流全工程に要した時間です。大阪倉庫稼働開始後の第1週を前週と比べた同社公表値です。
Q: 返品拠点を増やせば必ず返金が速くなりますか?
A: 必ずではありません。輸送距離だけでなく、受付情報の連携、検品能力、返金承認、決済事業者や金融機関の処理時間も返金完了までの時間に影響します。
Q: 中小ECも返品倉庫を複数持つべきですか?
A: 自社拠点の新設が最初の選択とは限りません。地域別の返品量と所要時間を可視化し、返送先の振り分けや外部倉庫の活用を小さく試す方法があります。
Q: 返品業務の成果は何で測ればよいですか?
A: 返送開始から返金完了までの時間、問い合わせ率、交換転換率、再販可能在庫へ戻るまでの時間、返品1件当たり処理費用を追います。
まとめ
- SHEINは大阪に国内2拠点目の返品倉庫を設け、東西で返品を分散処理する体制を整えた
- 稼働初週には、集荷から処理完了までの全工程が前週比で約8時間短縮された
- 返金スピードは、問い合わせ、再購入、交換転換、返品在庫の再販機会に影響する
- 日本のECは工程別・地域別に時間を測り、返送ルーティング、交換導線、例外通知を一体で改善する
次の一歩を、負担の軽い順に選べます
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参考・出典