
2026年7月15日(水)、渋谷・東京カルチャーカルチャーにて、オフラインイベント「Shopifyで広げる顧客接点 AI時代の『新規獲得』と『購入後体験』のいま」が開催されました。forest株式会社の主催、Shopify Japan株式会社とRecustomer株式会社の共催による勉強会で、EC事業の責任者・担当者の方々にご来場いただきました。
イベントの詳細は開催案内ページをご覧ください。
広告費の高騰やAIによる購買行動の変化を背景に、「顧客接点をどう広げるか」「獲得した顧客とどう長く付き合うか」は、いまEC事業者に共通するテーマです。本イベントでは3つのトークセッションを通じて、顧客接点の全体像からブランドの実践、そして購入後体験まで、一気通貫で議論が交わされました。モデレーターを務めたのは、主催・forest株式会社CMOの石川森生氏。各登壇者から実践知を引き出しながら、3つのセッションをリードしました。
本記事では、当社Recustomer 代表取締役CEOの柴田康弘が登壇したセッション「購入後体験の価値」の内容を中心に、当日の様子をレポートします。

「購入後体験」はなぜいま重要なのか
Recustomerは、返品・交換管理、注文キャンセル、配送追跡といった「購入後」の体験を設計するSaaSとして、国内500ブランド以上に導入され、年間20万件以上の返品・交換を処理しています。アパレルを中心にエンタメや飲食など幅広い業種に広がっており、Shopifyをはじめとする国内主要ECプラットフォームと連携しています。
セッションの冒頭で柴田が投げかけたのは、「集客への投資に比べて、購入後の体験への投資は後回しにされがち」という問題提起でした。AIの活用で集客の効率が上がっていく時代だからこそ、買ったあとの体験——商品が届くまでの不安、サイズが合わなかったときの手間——を減らすことが、ブランドの本質的な差別化につながる。これがセッション全体を貫くメッセージです。

返品・交換を「コスト」から「チャンス」へ
最初のトピックは返品・交換です。柴田はまず、返品ポリシーの緩和が業界を横断した競争圧力になっているという市場環境を紹介しました。象徴的な例として挙げたのがマットレス業界です。海外プレイヤーが「120日間返品可能」を掲げて日本市場に参入した結果、国内メーカーも追従せざるを得なくなりました。消費者から選ばれるための返品ハードルの引き下げは、もはや不可逆な流れになりつつあります。
では、増える返品にどう向き合うか。柴田が示したのは、返金ではなく「交換」に誘導することで売上を守るというアプローチです。
セッションで紹介された実績データ
- Recustomer導入ブランドの平均交換転換率は25%。返品申請の4件に1件が返金ではなく交換に置き換わり、売上が維持される
- 返金で終わった顧客のリピート率は5%。一方、交換で完了した顧客のリピート率は25%と、5倍の差がつく
返金してしまえば売上が消えるだけでなく、その顧客が戻ってくる可能性も大きく下がります。新規顧客の獲得コストまで含めて考えれば、交換への誘導はLTVの観点で非常に大きな効果を持つ、と柴田は強調しました。また海外では、返金を現金ではなくストアクレジットやクーポンで行うことが一般的になっており、日本でも同様の選択肢を広げていきたいと展望を語りました。
購入後のデータが生む価値 ― Shopify標準機能との違い
モデレーターの石川氏からは、「Shopifyの標準機能でも返品管理はできるのでは?」という会場の関心を代弁する問いが投げかけられました。
柴田の答えは、日本のEC運用の複雑さにあります。返品の受付条件、送料の負担ルール、セール時の期間限定ポリシー、さらにCS・物流(SCM)・経理と部門をまたぐ社内オペレーション——日本のエンタープライズ事業者の返品運用は非常に多岐にわたり、グローバル標準の機能だけではカバーしきれない領域が残ります。ロジレスをはじめとするOMS/WMSや配送会社など、国内物流プレイヤーとの深いAPI連携も、国内で開発を続けるRecustomerの強みです。
もうひとつの柱として紹介されたのが配送追跡プロダクトです。1つの注文につき平均4〜5回の配送通知を、キャリアのサイトではなく自社ブランドのECサイト上で届けます。
- 「商品を買った直後」というエンゲージメントが最も高いタイミングで、自然な文脈のクロスセルが可能になる
-
- 配送確認ページ上でおすすめ商品を訴求することで、導入ブランドでは配達後5日以内の追加購入率が約4ポイント向上している
そして柴田が「AIの時代にこそ効いてくる」と語ったのが、購入後データの蓄積です。返品申請、キャンセル、配送追跡ページのクリック、通知メールの開封といった購入後の行動データを、注文・顧客・商品に紐づけて一元管理する。返品理由も「袖が長い」「丈が短い」といった粒度で収集して製造側にフィードバックすれば、返品率そのものを下げていけます。AIによる分析や施策自動化が当たり前になるほど、元データのリッチさが競争優位の源泉になる——これがRecustomerの描くデータ戦略です。
予約販売に迫る「オーソリ25日ルール」
セッション後半では、いまEC事業者が対応を迫られている決済ルールの変更が取り上げられました。Visa・Mastercardがクレジットカードのオーソリ(与信枠確保)の有効期限を従来の60〜90日から30日へ短縮する方針を発表し、国内の各決済代行会社ではこれに合わせて25日で運用する対応が進んでいます。
影響を受けるのは、次のようなケースです。
- 長期の予約販売で、オーソリの有効期限内に出荷できないケース
- 予約商品を注文時に全額即時決済して販売しているケース
特に2つ目の「全額即時決済」は広く行われていますが、柴田は3つのリスクを指摘しました。
- 規約違反リスク: Visa/Mastercardの規約違反にあたる
- 会計上のリスク: 出荷前は売上計上できない
- チャージバックのリスク: 商品未着でチャージバックを申し立てられた場合、事業者側が100%敗訴する
従来の救済措置として使われてきた「1〜2円のオーソリを投げ直す」手法も禁止されるため、残された対応策はオーソリを取り直す「再オーソリ(再与信)」機能の活用になります。Recustomerでは、この再オーソリを自動化する予約販売向けソリューション「Recustomer Secure」を提供しています。オーソリの有効期限が切れる前に自動で再オーソリを行って与信枠を維持し、出荷のタイミングで実売上に移行するため、件数の多い予約販売でも規約に沿った決済運用が可能です。
興味深いのは、これが規約対応にとどまらないという点です。柴田が紹介した消費者アンケートでは、予約商品の全額即時決済に約70%が心理的抵抗を感じ、約60%が予約注文のキャンセル経験があるという結果が出ています。キャンセル理由の上位は「待ち時間の長さ」と「全額引き落としへの抵抗」。消費者が重視するのは、具体的なお届け予定日とその変更可否でした。決済タイミングの設計は、コンバージョンとキャンセル率に直結する体験設計の問題でもあるのです。
セッションのまとめ ― 購入後体験は「資産」になる
セッションの締めくくりで柴田が改めて強調したのは、購入後体験への投資の「時間軸」です。集客施策の効果が一過性になりがちなのに対し、購入後体験の改善は、仕組みとして一度作れば以降のすべての注文に効き続けます。AIが集客力を底上げしていく時代において、購入後の不快な体験を減らすことこそが本質的なサービス差別化であり、早く取り組むほど長く恩恵を受けられる「資産」としての投資である——そんなメッセージでセッションは幕を閉じました。
セッション後の懇親会では、登壇者を交えて参加者同士の活発な情報交換が行われ、返品運用や予約販売の決済対応について具体的な相談が交わされる場面も多く見られました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。
購入後体験の設計、Recustomerにご相談ください
返品・交換管理、注文キャンセル、配送追跡、予約販売の決済対応(自動再オーソリ)まで、「買ったあと」の体験づくりをワンストップで支援します。
まずは30分のオンライン相談で、自社の購入後体験の課題をお聞かせください。
Recustomerについて詳しく見る
導入のご相談はこちら(30分オンライン)
関連記事