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  • Ryosuke Yamazumi

「サブスクの解約妨害」に法規制へ ― 消費者庁検討会が中間報告書、日本のEC事業者が今すべきこと

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消費者庁の有識者検討会が2026年9月9日、サブスクリプション(定額課金)サービスや商品の定期購入における「解約妨害」を禁止する規律を柱とした中間報告書を取りまとめました。禁止行為に対しては、国の認定を受けた適格消費者団体が差止め請求できる仕組みの導入も盛り込まれています。

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虚偽の説明で解約を思いとどまらせる、解約の申し出を拒否する、正当な理由なく解約処理を遅らせるといった行為が、消費者契約法改正を視野に規制の対象となる見通しです。サブスクリプションや定期購入を扱う日本のEC事業者にとって、法制化前の今から解約導線を点検すべき局面に入りました。

この記事の要点(30秒で読める)

  • 何が起きた? 消費者庁検討会が2026年9月9日、サブスクの「解約妨害」禁止を柱とする中間報告書を取りまとめた
  • 根拠法は? 消費者契約法の改正を視野に検討
  • 執行の仕組みは? 国認定の適格消費者団体による差止め請求を導入する方向
  • 背景データは? サブスク関連の消費生活相談は2021年度7,461件→2024年度15,752件と約2.1倍に増加
  • いつから? 早ければ2027年の通常国会に関連法案を提出見込み(確定スケジュールではない)

 

「解約妨害」とは

解約妨害とは、消費者が継続的なサービス契約を解約しようとした際に、事業者が虚偽の説明や不当な遅延、威迫などによって解約を妨げる行為の総称です。今回の中間報告書では、サブスクリプションサービスや定期購入などの継続的契約を対象に、この解約妨害を禁止する規律の導入が提言されました。

 

具体的には、次のような行為が禁止対象の例として挙げられています。

 

分類 禁止対象となる行為の例
虚偽説明 解約するかどうかの判断に通常影響する事項について、事実と異なる説明をする行為
断定的判断の提供 将来の不確実な事項について、断定的な判断を示す行為
拒否・遅延 解約の申し出を拒否したり、不当に遅延させたりする行為
欺瞞・威迫 消費者を欺いたり、威迫して困惑させたりする行為

 

中間報告書の詳細・背景

今回の中間報告書は、消費者庁の「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」がまとめたものです。2026年8月31日に公表された中間とりまとめ案をベースに、9月9日の会合で正式な中間報告書として取りまとめられました。

 

報告書の柱は、上記の禁止行為に対して国の認定を受けた適格消費者団体が差止め請求を行える仕組みの導入です。現行の消費者契約法では個々の消費者が個別に契約の取消しや損害賠償を求めることはできても、悪質な解約妨害の手口そのものを事前に差し止める手段が乏しいという課題認識が背景にあります。

 

背景には、サブスクリプション関連の消費生活相談件数の急増があります。消費者庁がPIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)を基に集計したデータによると、「サブスクリプション」に関する相談件数は2021年度の7,461件から2024年度には15,752件へと、3年間で約2.1倍に増加しています。

 

なぜ今起きているのか

背景には、サブスクリプション型ビジネスの急拡大と、既存法だけでは解約妨害の手口に十分対応できていないという認識があります。特定商取引法12条の6は定期購入の最終確認画面における表示義務を定めていますが、画面表示ルールを形式的に満たしつつ、解約手続き自体を複雑にしたり、電話窓口になかなかつながらせなかったりする手口には対応しきれていませんでした。

 

実はこの中間報告書と並行して、消費者庁の別の検討会(デジタル取引・特定商取引法等検討会)も2026年8月24日、「ダークパターン」全般を特定商取引法の改正で規律する中間取りまとめ案を公表しています。詳しくは「「ダークパターン」に法規制へ ― 消費者庁が解約導線を規律、年間3.2兆円被害の実態と日本のEC事業者が今すべきこと」で解説しています。今回の消費者契約法検討会の報告書は別の法律・別の検討会でありながら、「解約しにくい設計」を規律するという同じ方向性を持つ、いわば車の両輪です。

 

さらに国民生活センターは2026年8月19日、「解約したのに請求が続く」という相談が約1,600件寄せられたとして事業者名を公表しています。詳しくは「「解約したのに請求が続く」約1600件の相談 ― 国民生活センターの事業者名公表に見る、EC事業者が見直すべき解約導線」で解説しています。解約導線をめぐるトラブルは、規制論議と個別の被害報告の両面から可視化が進んでいる状況です。

2つの規制強化が並行して進行中

特定商取引法改正(デジタル取引・特定商取引法等検討会、8月24日中間取りまとめ)はダークパターン全般を対象とし、消費者契約法改正(消費者契約法検討会、9月9日中間報告書)はサブスク・定期購入の解約妨害に特化しています。どちらも「解約しにくい設計」を規律する方向で、EC事業者への実務インパクトは重なります。

 

日本のEC事業者への示唆

法制化にはまだ時間がありますが、EC事業者は施行を待たずに自社の解約導線を点検しておくべきです。特に定期購入・サブスクリプションを扱う事業者は、今回の規律案が禁止対象として挙げる行為に自社の運用が該当していないか、早めに確認する価値があります。

 

1. 解約導線の複雑さを点検する

解約ページにたどり着くまでのクリック数、電話窓口が必須になっていないか、解約ボタンの視認性を確認します。「解約の申し出の拒否・不当な遅延」が禁止対象例に挙がっている以上、解約リクエストを受け付けてから処理完了までの標準所要時間を社内で定義しておくことが重要です。

 

2. 契約時・解約時の説明内容を見直す

「今解約すると特典が失われる」「今しか解約できない」といった事実と異なる説明や、断定的な判断の提供に該当する表現がないか、解約引き止め画面の文言を洗い出します。カスタマーサポートのトークスクリプトも同様に点検対象です。

 

3. 適格消費者団体からの差止め請求リスクに備える

差止め請求は個々の消費者からの訴訟ではなく、認定を受けた団体が業界の慣行そのものを問題視して起こすものです。同業他社の解約導線が問題視された場合に自社の運用も横並びで見直しを迫られる可能性を踏まえ、法務・カスタマーサポート部門が連携した定点チェック体制を整えておきます。

 

4. 解約体験そのものを競争力に変える

規制対応をコストと捉えるだけでなく、解約のしやすさを打ち出すことで顧客の再購入・再契約につなげている事業者も存在します。解約をセルフサービス化し、理由のヒアリングと再提案を丁寧に設計することが、規制対応と顧客体験向上を両立させる方向性です。

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よくある質問

 

Q. 「解約妨害」とは何ですか?

解約妨害とは、消費者が継続的なサービス契約を解約しようとした際に、事業者が虚偽の説明や不当な遅延、威迫などによって解約を妨げる行為の総称です。今回の中間報告書は、サブスクリプションや定期購入をこの規律の対象としています。

 

Q. この規制はいつから始まりますか?

2026年9月9日時点では中間報告書が取りまとめられた段階で、法制化はこれからです。消費者契約法の改正を視野に、早ければ2027年の通常国会への関連法案提出が目指されていますが、報道ベースの見通しであり確定したスケジュールではありません。

 

Q. どのような行為が禁止対象になりますか?

事実と異なる説明、将来の不確実な事項についての断定的判断、解約の申し出の拒否・不当な遅延、消費者を欺いたり威迫して困惑させたりする行為が、禁止対象の例として挙げられています。

 

Q. 「適格消費者団体の差止め請求」とは何ですか?

内閣総理大臣の認定を受けた消費者団体が、個々の消費者に代わって事業者の不当な行為の停止を求めて訴訟を起こせる仕組みです。今回の中間報告書では、解約妨害に該当する行為をこの差止め請求の対象とする方向が示されています。

 

Q. 2026年8月24日に報じられた「ダークパターン規制」と同じ規制ですか?

別の検討会・別の法律です。8月24日の報道は特定商取引法改正を視野にしたダークパターン全般の規律案、今回は消費者契約法改正を視野にしたサブスク・定期購入の解約妨害に特化した規律案で、2つの規制強化が並行して進んでいます。

 

Q. サブスク関連の相談件数はどれくらい増えていますか?

消費者庁がPIO-NETを基に集計したデータによると、「サブスクリプション」関連の消費生活相談件数は2021年度7,461件→2024年度15,752件と、3年間で約2.1倍に増加しています。

 

Q. EC事業者は今から何をすべきですか?

解約ページまでの導線の複雑さ、解約時の説明文言、解約申込みから処理完了までの所要時間を点検することが重要です。適格消費者団体からの差止め請求リスクを踏まえ、法務・カスタマーサポート部門が連携して定期的にチェックする体制を整えておくことが推奨されます。

 

まとめ

  • 消費者庁検討会が2026年9月9日、サブスクの「解約妨害」禁止を柱とする中間報告書を取りまとめた
  • 消費者契約法の改正を視野に、国認定の適格消費者団体による差止め請求導入も検討されている
  • 禁止対象の例は虚偽説明・断定的判断・拒否や不当遅延・欺瞞や威迫の4類型
  • 背景にはサブスク関連相談件数の急増(2021年度7,461件→2024年度15,752件、約2.1倍)
  • 8月24日報道の特定商取引法改正(ダークパターン規制)とは別の検討会・別の法律が並行して進む
  • 法制化を待たず、解約導線・説明文言・処理速度の自主点検が今からできる対策
  • 早ければ2027年の通常国会に関連法案提出見込み(確定スケジュールではない)

 

参考・出典

  1. 日本経済新聞「サブスク契約に法規制、虚偽説明での解約妨害を禁止 消費者庁検討会」(2026年9月9日)
  2. 共同通信「サブスク解約妨害を規制 消費者庁、報告取りまとめ」(Yahoo!ニュース配信)
  3. TBS NEWS DIG「サブスク解約妨害の規制へ 消費者庁検討会で中間とりまとめ案公表 「現行の消費者契約法は対処できない」」(Yahoo!ニュース配信)
  4. 北日本新聞webunプラス「サブスク解約妨害を規制」(2026年9月9日)

 

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