
英国のIMRGとnShiftが2026年4月に消費者1,000人を対象に実施した調査で、85.6%が「返品ポリシー」をオンライン購入の決め手として重視していることが明らかになりました。調査ではさらに、返品を申請した時点で返金ではなく交換を提示された場合、66.1%が受け入れる可能性があると回答しています。
この調査結果は2026年8月11日に公表され、返品ポリシーが価格や配送条件と並ぶ「購入前の意思決定要因」になっていることを裏付けました。日本のEC事業者にとっても、返品・交換フローの設計を見直す好機といえます。
この記事の要点(30秒で読める)
- 何が分かった? 英国消費者の85.6%が返品ポリシーを購入の決め手として重視
- 交換への反応は? 返金の代わりに交換を提示されると66.1%が受け入れる可能性ありと回答
- 悪い返品体験の代償は? 42.3%が再購入意欲低下、28.8%が購入を完全に停止
- スピードへの期待は? 47.4%が返品開始まで1〜3分以内を期待
- 手数料への意識は? 頻繁な返品者への手数料は47.6%が公正と回答。一律の是非ではなく条件次第
- 日本のEC事業者への意味は? ポリシーの事前明示・交換誘導・手続き簡略化が実務の打ち手になる
リターン・エクスペリエンス(返品体験)とは
リターン・エクスペリエンス(返品体験)とは、返品の申請から受付・判定・返金または交換の完了までの一連の顧客体験を指す言葉です。従来は物流・コスト管理の対象として扱われがちでしたが、近年は購入前の意思決定や再購入率を左右する重要な顧客体験の一部と位置づけられるようになっています。
今回のIMRG×nShift調査「The Ecommerce Returns Opportunity」は、この返品体験が実際に消費者の行動へどう影響しているかを、英国消費者1,000人への調査で定量的に示した点に特徴があります。
調査の詳細 ― 何が明らかになったのか
調査によると、消費者の85.6%が「返品ポリシーの内容」をオンラインで購入するかどうかを決める際に重視すると回答しました。このうち45.6%が「非常に重要」、40.0%が「かなり重要」と回答しており、返品ポリシーはもはや購入後だけの論点ではありません。
返品体験が悪かった場合の顧客離脱も明確です。42.3%が同じ小売業者での再購入意欲が大きく低下すると回答し、28.8%はその小売業者での購入を完全にやめると回答しました。1回の返品対応の質が、将来の売上そのものを左右する構図が浮かび上がります。
| 調査項目 |
回答結果 |
| 返品ポリシーを購入決定時に重視する |
85.6%(非常に重要45.6% + かなり重要40.0%) |
| 返金より交換を受け入れる可能性がある |
66.1% |
| 悪い返品体験後、再購入意欲が大幅に低下 |
42.3% |
| 悪い返品体験後、購入を完全に停止 |
28.8% |
| 返品開始までに1〜3分以内を期待 |
47.4%(さらに30.1%が5分以内での完了を期待) |
| 郵送より店舗での返品を希望 |
70%超 |
| 頻繁な返品者への手数料を「公正」と回答 |
47.6%(返品手数料自体を「不公正」とする回答は21.5%) |
特に注目すべきは交換に関する結果です。返品を申請したタイミングで交換を提示された場合、66.1%が返金ではなく交換を受け入れる可能性があると回答しました。返品はすべて返金で処理せざるを得ないという前提そのものが崩れつつあることを示す数字です。
nShiftのプロダクト・スペシャリスト・ディレクターであるJyo Saikia氏は、レポートの中で「返品はもはや単なるコストではなく、顧客関係を左右する決定的な瞬間である」と述べています。
なぜ今、返品ポリシーが「購入の決め手」になっているのか
背景には、返品件数そのものの増加と、EC事業者による返品ポリシーの厳格化が同時に進んでいるという構造があります。全米小売業協会(NRF)が発表した「2025 Retail Returns Landscape」によると、2025年の米国の返品率は売上全体の15.8%、オンライン販売に限ると19.3%に達すると見込まれています。
一方で、事業者側は返品を無条件に受け入れる姿勢から一歩後退しています。同レポートでは、何らかの返品手数料を導入している事業者が2025年に72%へ達し、前年の66%から増加しました。返品件数の増加と事業者側の防衛的な政策変更が同時に進んだ結果、消費者にとって「このECは返品しやすいか」が購入前に確認すべき項目に変わったと考えられます。
もう一つの構造変化が、返品を「返金で終わらせない」発想の広がりです。nShiftのレポートは返品を顧客関係における決定的な瞬間と位置づけ、返金ではなく交換を提示することで、失われがちな売上を取り戻せると指摘しています。返品を単なるコストではなく、再購入や顧客ロイヤルティを左右する接点として捉える動きが、英国に限らず広がっています。
日本のEC事業者への示唆
まず着手すべきは、返品ポリシーの内容を購入前に分かりやすく提示することです。返品ポリシーが「決め手」になっているという調査結果は、商品ページや購入直前の画面で返品条件を明示することが、離脱防止と購入率向上の両方に効くことを示しています。返品期間や条件の基本的な整理は「ECサイトの返品期間はいつまで?法律・ルール・注意点を完全解説」も参考になります。
次に重要なのが、返品受付時点での「交換への誘導」です。66.1%が交換を受け入れる可能性があるという数字は、返品申請フローの中で自動的に交換候補(同商品の別サイズ・別カラーや、近い価格帯の代替商品)を提示する設計を導入すれば、返金に流れていた売上の一部を交換として維持できる可能性を示しています。返金は在庫と現金の両方を失いますが、交換であれば在庫の入れ替えで済み、売上そのものも維持できます。
返品開始のスピードも軽視できません。47.4%が1〜3分以内の申請開始を期待しているという結果は、返品申請フォームの入力項目を絞り、理由選択から返金・交換方法の選択までを最短の画面数で完結させる設計の重要性を裏付けています。手続きが複雑なほど悪い返品体験として記憶され、42.3%が示すような再購入意欲の低下につながります。
返品手数料の設計も、一律無料か一律有料かの二択ではありません。頻繁な返品者への手数料は47.6%が公正と考えている一方、返品手数料自体を不公正とする回答は21.5%にとどまっています。返品履歴に応じて手数料の有無を変える段階的な設計が、収益とロイヤルティのバランスを取りやすいことを示唆する結果です。
よくある質問
Q. 今回の調査はどのような機関が実施しましたか?
英国のIMRGとnShiftが共同で実施した「The Ecommerce Returns Opportunity」というレポートです。2026年4月に英国消費者1,000人を対象に調査が行われ、結果は2026年8月に公表されました。
Q. 返品ポリシーは購入決定にどの程度影響しますか?
85.6%の消費者が返品ポリシーの内容を購入の決め手として重視すると回答しており、45.6%は「非常に重要」と答えています。返品ポリシーは価格や配送条件と並ぶ、購入前の判断材料になっています。
Q. 返品時に交換を提示すると受け入れられますか?
66.1%の消費者が、返品時に返金ではなく交換を提示された場合は受け入れる可能性があると回答しました。返品をすべて返金で処理するという前提を見直す余地があることを示しています。
Q. 返品体験が悪いと顧客にどんな影響がありますか?
42.3%が同じ小売業者での再購入意欲が大幅に低下すると回答し、28.8%はその小売業者からの購入を完全に停止すると回答しました。1回の返品対応の質が将来の売上を左右します。
Q. 消費者は返品の手続きにどの程度のスピードを期待していますか?
47.4%が返品開始までに1〜3分以内、30.1%が5分以内での完了を期待していると回答しました。手続きが複雑なほど、悪い返品体験として記憶されやすくなります。
Q. 返品手数料はすべて無料にすべきですか?
必ずしもそうとは限りません。頻繁な返品者への手数料は47.6%が公正と考えている一方、返品手数料そのものを不公正と考える回答は21.5%にとどまり、条件に応じた段階的な設計への理解が進んでいます。
Q. 米国など他地域でも同様の傾向はありますか?
はい。全米小売業協会(NRF)の「2025 Retail Returns Landscape」によると、2025年の米国の返品率は売上全体の15.8%、オンライン販売に限ると19.3%に達し、返品手数料を導入する小売業者は72%(前年66%)に増加しています。返品体験の重要性が高まる傾向は英国に限りません。
Q. 日本のEC事業者はこの調査結果をどう活かせますか?
返品ポリシーの購入前の明示、返品申請時点での交換候補の自動提示、返品フォームの手続き簡略化、返品履歴に応じた手数料設計の見直しという4点が、実務上のポイントになります。
まとめ
- 英国IMRG×nShift調査(消費者1,000人)で85.6%が返品ポリシーを購入の決め手と回答
- 66.1%が返金より交換を受け入れる可能性があると回答。返品を「交換」に誘導する設計が売上維持の鍵
- 返品体験が悪いと42.3%が再購入意欲低下、28.8%が購入を完全に停止という重い代償
- 47.4%が返品開始まで1〜3分以内を期待。手続きの簡略化がロイヤルティを左右
- 返品手数料は一律ではなく、頻度に応じた段階的な設計への理解が消費者側にも進んでいる
- 米国NRF調査でも返品率15.8%(オンライン19.3%)、手数料導入72%と同様の傾向
- 日本のEC事業者にとってもポリシーの事前明示・交換誘導・手続き簡略化が実務上の打ち手になる
参考・出典
- Retail Technology Innovation Hub「Online returns policy an influence for majority of UK shoppers, new IMRG and nShift research finds」(2026年8月11日)
- nShift「What shoppers want from ecommerce returns: IMRG x nShift」
- National Retail Federation「2025 Retail Returns Landscape」
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