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  • Ryosuke Yamazumi

Zara・ASOSの「バーチャル試着」で返品率160bp改善 ― AIがサイズ違い返品に挑む、日本のEC事業者への示唆

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Zaraを展開するスペインのInditexは、AIによるバーチャル試着機能「Zara Try-on」を2026年3月時点で43市場・700万セッション超に拡大していると発表しました。ASOSもAIファッションプラットフォームAIUTAと提携したハイブリッド型のバーチャル試着を2026年2月に開始し、返品率が前年比160ベーシスポイント改善したと報告しています。

 

返品理由の多くを占める「サイズが合わない」「イメージと違う」という問題に、生成AIで正面から取り組む動きが、大手アパレルECで相次いで具体化してきました。

 

この記事では、Zara・ASOS・Googleの最新事例と、その背景にある返品コストの実態を整理したうえで、日本のEC事業者が今から検討すべき対応を解説します。

この記事の要点(30秒で読める)

  • 何が起きた? ZaraのAI試着「Zara Try-on」が43市場・700万セッション超に拡大。ASOSはAIUTAとの提携で返品率が160bp改善
  • バーチャル試着とは? 自分の写真やAIアバターに商品を着せた画像を数秒で生成し、購入前にサイズ・見え方を確認できる技術
  • なぜ重要? 米国NRF調査で2025年の小売返品額は8,499億ドル(売上の15.8%)、オンラインは19.3%に到達
  • 日本は? Googleが2025年10月に「バーチャルでお試し」を日本でも提供開始。国内アパレル各社もAI試着・スタイリング提案を実験中
  • 注意点は? バーチャル試着だけで返品はゼロにならない。サイズ起因以外の返品には購入後の対応設計が別途必要
  • 示唆は? 返品理由データの分析→サイズ起因カテゴリへの優先導入→残る返品への自動化対応、の三段構えが現実的

 

バーチャル試着とは

バーチャル試着とは、ユーザーが自分の写真をアップロードするか、体型に近いAI生成アバターを選択することで、実際の商品を着用したイメージ画像を生成し、購入前に画面上で確認できる技術です。「バーチャルフィッティング」「AI試着」とも呼ばれます。

 

初期のバーチャル試着は静止画の重ね合わせが中心で、生地の質感や体の動きに合わせたドレープ(垂れ方)を再現できませんでした。しかし拡散モデル(diffusion model)と呼ばれる生成AI技術の進化により、2024年頃には「よく見るとAI生成と分かる」水準だった画質は、2026年には実用に十分なフォトリアリスティックな品質に達しています。

 

入力の手間も簡素化が進んでいます。身長・体重・スリーサイズといった詳細な身体情報の入力が必要だった従来型に対し、現在の主流は「自撮り写真1枚」だけで完結するUXです。ASOSの事例では、写真をアップロードしてから試着結果が表示されるまで4〜7秒という、業界標準より速い処理速度を実現しています。

 

ニュースの詳細・背景

2025年末から2026年前半にかけて、大手アパレルECとプラットフォーマーがバーチャル試着機能を相次いで本格投入しています。特にZara・ASOS・Googleの3社の動きは、規模・提携形態がそれぞれ異なり、この技術が実験段階から実装段階に入ったことを示しています。

 

主体 開始時期 内容・結果
Zara(Inditex) 2025年12月半ば開始 自社アプリ「Zara Try-on」。2026年3月時点で43市場・700万セッション超に拡大(Inditex FY2025決算資料)
ASOS 2026年2月17日開始 AIUTAとの提携によるハイブリッド型。英米の約1万商品が対象、返品率が前年比160bp改善(サイズ・フィット施策全体の効果を含む)
Google 2025年10月8日 日本提供開始 「バーチャルでお試し」。Google検索・ショッピング上でトップス・ボトムス・ドレス・靴を試着可能

 

Zaraの仕組みは、顧客が自分の顔写真と全身写真から合成アバターを作成し、実際の商品を着用した画像を生成するというものです。現在はZara.com独占で提供されており、他のコンセプト(ブランド)への展開も進められています。

 

ASOSは自分の写真をアップロードする方式に加えて、AI生成アバターを選ぶ方式も選べる「ハイブリッド型」を採用しています。同社は、この施策を含むサイズ・フィット関連の改善によって返品率が前年比160ベーシスポイント改善したとしていますが、返品状況を顧客自身が確認できる透明性ツールなど他の施策の効果も含まれており、バーチャル試着単体の寄与を厳密に切り分けた数値ではない点には注意が必要です。

 

Googleの「バーチャルでお試し」は、EC事業者側の開発負担なしに検索・ショッピング経由で試着体験を提供できる点が特徴です。日本では2025年10月8日に発表され、数週間かけて順次利用可能になりました。

 

なぜ今、バーチャル試着への投資が加速しているのか

背景にあるのは、返品コストが「無視できる誤差」から「利益を左右する経営課題」に変わったという構造変化です。米国NRF(全米小売業協会)とHappy Returnsが2025年10月15日に公表した調査によると、2025年の米小売業の返品額は8,499億ドル(年間売上の15.8%)に達し、オンライン販売に限ると19.3%まで上昇しています。

 

返品理由の内訳を見ると、多くがサイズ違いや「画面で見たイメージと違った」という、購入前の情報不足に起因するものです。裏を返せば、購入前にAIで「着用イメージ」を正確に見せられれば、返品そのものを未然に防げる可能性があるということになります。

 

消費者側の要求水準も上がっています。同調査では無料返品を重視する消費者の割合は82%(前年76%)に上昇し、返品体験が悪かった場合に「そのブランドで再購入しない」と答えた消費者は71%(前年67%)に増加しました。Z世代(18〜30歳)は年間平均7.7件のオンライン返品を経験しているというデータもあり、返品の多さを前提にした事業設計が避けられなくなっています。

 

返品コストと消費者の期待水準がともに上がる中、購入前の試着体験に投資して「そもそも返品を発生させない」というアプローチへの関心が、2026年に入り一段と強まっています。

 

日本のEC事業者への示唆

日本でも、サイズ・フィット起因の返品はアパレルEC最大の課題の一つです。Zara・ASOS・Googleの動きを踏まえ、日本のEC事業者が検討すべきポイントを整理します。

 

1. 返品理由データを分解し、優先導入カテゴリを見極める

バーチャル試着が効くのは「サイズ・イメージ違い」による返品です。まずは自社の返品理由データを分解し、サイズ起因の比率が高いカテゴリ(トップス・ボトムス・靴など)から優先的に導入を検討するのが合理的です。

 

2. 自社開発ではなくSaaS・プラットフォーム連携から始める

Zara・ASOSのような大規模な自社開発をしなくても、Googleの「バーチャルでお試し」のように検索経由で提供される機能や、AIUTAのようなSaaS型ベンダーとの連携によって、開発負担を抑えたスモールスタートが可能になっています。まずは対象カテゴリを絞った試験導入から効果を検証するアプローチが現実的です。

 

3. バーチャル試着は「返品ゼロ」の魔法ではないと理解する

ASOSの事例が示すように、バーチャル試着単体の効果を切り分けるのは難しく、サイズ以外の理由(不良品・気分変わり・注文間違い等)による返品は残り続けます。購入前の試着体験づくりと、購入後に発生する返品・交換・キャンセル対応の自動化は、どちらか一方ではなく両輪で設計する必要があります。

 

購入前の体験にどれだけ投資しても、返品はゼロにはなりません。残る返品・交換をどれだけスムーズに処理できるかが、Zara・ASOSが同時に取り組んでいる「返品体験の可視化」とあわせて、顧客のリピート購入率を左右する次の焦点になります。

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よくある質問

 

Q. バーチャル試着(バーチャルフィッティング)とは何ですか?

ユーザーが自分の写真をアップロードするか、体型に近いAI生成アバターを選択することで、商品を着用したイメージ画像を生成し、購入前にサイズや見え方を確認できる技術です。生成AIの進化により、数秒でフォトリアリスティックな画像を作れるようになっています。

 

Q. Zara・ASOSはバーチャル試着でどんな結果を出していますか?

Zaraの「Zara Try-on」は2025年12月半ばの開始から43市場・700万セッション超に拡大(2026年3月時点)。ASOSはAIUTAとの提携で2026年2月にハイブリッド型を開始し、返品率が前年比160bp改善したと報告しています。

 

Q. なぜ今バーチャル試着への投資が加速しているのですか?

米国NRFの調査で2025年の小売返品額は8,499億ドル(売上の15.8%)、オンラインは19.3%に達しました。返品理由の多くがサイズ・イメージ違いであるため、購入前のAI試着で防ぐ投資対効果が高まっています。

 

Q. 日本でもバーチャル試着は使われていますか?

Googleが2025年10月8日、「バーチャルでお試し」機能を日本でも提供開始しました。トップス・ボトムス・ドレス・靴が対象で、Google検索やショッピングの商品画面から利用できます。

 

Q. バーチャル試着を導入すれば返品はゼロになりますか?

ゼロにはなりません。ASOSの改善数値にもサイズ・フィット施策全体の効果が含まれており、不良品や気分変わりなどサイズ以外が理由の返品は残ります。購入前の試着体験と、購入後の返品・交換対応の両方を設計する必要があります。

 

Q. 中小のEC事業者でもバーチャル試着は導入できますか?

Google「バーチャルでお試し」は開発負担なしに利用でき、AIUTAのようなSaaS型ベンダーも増えているため、大規模な自社開発なしに試せる選択肢が広がっています。まずは返品理由データを分析し、サイズ起因の返品が多いカテゴリから優先導入するのが現実的です。

 

まとめ

  • Zaraの「Zara Try-on」は43市場・700万セッション超に拡大(2026年3月時点)
  • ASOSはAIUTAとの提携で2026年2月にハイブリッド型を開始、返品率が前年比160bp改善
  • Googleは2025年10月8日に「バーチャルでお試し」を日本でも提供開始
  • 背景には米国で年間8,499億ドル(売上の15.8%)に達する返品コストの重さがある
  • 無料返品を重視する消費者は82%、返品体験が悪いと71%が再購入しないと回答
  • バーチャル試着は返品を減らす手段であり、ゼロにするものではない
  • 日本のEC事業者は返品理由データの分解 → 優先カテゴリへの試験導入 → 残る返品の自動化対応の三段構えが現実的

 

出典・参考文献

  1. Inditex「FY2025 Results」(2026年3月11日、Zara Try-on:43市場・700万セッション超)
  2. ASOS plc「ASOS launches hybrid approach to virtual try-on」(2026年2月17日)
  3. National Retail Federation「Consumers Expected to Return Nearly $850 Billion in Merchandise in 2025」(2025年10月15日)
  4. Web担当者Forum「Googleが画面上で服や靴の試着ができるAI機能「バーチャルでお試し」を日本でも提供」(2025年10月10日)
  5. PYMNTS.com「Retailers Bet on AI Fitting Rooms to Slash Costly Returns」(2026年4月)

 

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