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  • Ryosuke Yamazumi

予約商品の「発送前キャプチャ」はVisa/Mastercard規約違反? EC事業者が知らない決済リスクと対策

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「うちは予約商品を注文時に決済確定しているから、25日ルールの影響は受けない」——そう考えているEC事業者の方は、別のリスクを見落としている可能性があります。Visa・Mastercardの規約では、商品を発送するまで売上を確定(キャプチャ)してはならないと定められているからです。

 

予約販売・受注生産を行うEC事業者にとって、「いつ決済を確定するか」は売上とリスクのバランスを左右する重要な判断です。しかし、その判断の前提となるカードブランドの規約を正確に理解している事業者は多くありません。

 

この記事では、Visa・Mastercardの公式規約に基づき、「発送前キャプチャ」がなぜ規約違反になり得るのか、カスタムオーダー品の例外がなぜ一般的な予約商品には使えないのか、そして予約販売で規約を守りながら売上を守るにはどうすればよいのかを整理します。

 

この記事はこんな方におすすめです

  • 予約商品を注文時に決済確定しており「これで大丈夫」と思っている方
  • 25日ルール対策として「注文時キャプチャに切り替えれば解決」と考えている方
  • チャージバック率が上昇傾向にあり、原因を特定したい方
  • カードブランドの規約を正確に理解したうえで決済フローを設計したい方

 

目次

  1. 基本ルール:発送前に売上確定してはならない
  2. オーソリの有効期間 — 国際標準は10日。日本の「25日」はアクワイアラーの運用上限
  3. 予約販売で起きる構造的ジレンマ
  4. 「カスタムオーダー品」例外は一般的な予約商品には適用されない
  5. 「注文時キャプチャだから大丈夫」が危ない理由
  6. カード会社の監視強化トレンド
  7. 解決策:自動再オーソリで「発送時キャプチャ」を実現する
  8. よくある質問


この記事の要点(30秒で読める)

  • Visa/MCの原則: 「商品を発送するまで売上を確定してはならない」。発送前キャプチャは規約違反になり得る
  • 予約販売のジレンマ: 発送前にキャプチャすると規約違反。発送時にキャプチャするとオーソリが失効していて決済失敗
  • カスタムオーダー例外: Mastercardの例外規定は「顧客仕様の個別製造品」に限定。一般的な予約商品(新作スニーカー等)には適用されない
  • 監視強化: カード会社は不正対策として規約遵守の監視を厳格化する傾向にあり、今後指摘される可能性が高まっている
  • 解決策: 規約を守りながら売上を守るには、自動再オーソリで与信を維持し続け「発送時にキャプチャ」する仕組みが必要


基本ルール:発送前に売上確定してはならない

Visa・Mastercardの規約では、EC事業者は商品を発送するまでトランザクションを売上確定(キャプチャ)してはならないと明記されています。これは推奨事項ではなく、加盟店規約の基本ルールです。

 

Visaの公式紛争解決ガイドラインには以下の記載があります:

"Don't deposit transactions with your merchant bank until you have shipped the related merchandise."
(関連する商品を発送するまで、加盟店銀行にトランザクションを入金してはならない)

 

Mastercardも加盟店契約の標準条項で同様に規定しています:

"Merchant shall not submit a Transaction to Bank until Merchant has performed its obligations to the Cardholder in connection with the Transaction."
(加盟店は、カード会員に対する義務を履行するまで、銀行にトランザクションを送信してはならない)

 

つまり、「注文時にオーソリ(仮売上)→ 発送時にキャプチャ(売上確定)」が原則です。予約商品であっても、商品が購入者の手元に向かう前にキャプチャすることは、この原則に反します。

 

オーソリの有効期間 — 国際標準は10日。日本の「25日」はアクワイアラーの運用上限

Visaは2024年4月にオーソリからクリアリング(売上確定処理)までの最大期間を改定しました。この改定により、業態ごとにオーソリの有効期間が厳格に定められています。

 

Visa のオーソリ有効期間(2024年4月〜)

取引タイプ 最大オーソリ期間
対面取引 / 加盟店起点 5暦日
EC(CNP・消費者起点) 10暦日
日本国内取引(domestic) 4暦日
EAS適用のCNP取引
Extended Authorization Service(有料・手数料0.08%)
最大30暦日
宿泊・レンタカー等 最大30暦日

 

Mastercard のオーソリ有効期間

オーソリ種別 クリアリング期限
Final Authorization(金額確定型) 4日以内
Pre-Authorization(金額未確定型) 30日以内
Undefined Authorization(未定義) 2025年6月17日以降禁止

 

「25日」の正体 — Visa/MCのグローバルルールではなく、日本のアクワイアラーの運用上限

EC業界で「25日ルール」と呼ばれている数値は、Visa・Mastercardのグローバルルール文書に直接記載された数値ではありません。

 

Visaの有料オプション(EAS)で最大30暦日、MastercardのPre-Authorizationで最大30日という上限の範囲内で、日本のアクワイアラー(決済代行各社)が運用上の上限として「25日」を設定したものです。

 

つまり25日は「ブランドが決めた期限」ではなく「日本の決済代行が裁量で設定した上限」です。Visaの国際標準はECで10暦日、日本国内取引で4暦日であり、25日はそこからの延長運用に過ぎません。今後、アクワイアラーの運用方針変更やVisa/MCの追加規制によって、さらに短縮される可能性があります。

 

海外発行カードについてはEASの適用外となるケースが多く、1〜7日と、さらに短い制限が適用されます。越境ECは特に注意が必要です。

 

予約販売で起きる構造的ジレンマ

予約販売を行うEC事業者は、発送前キャプチャの規約と、オーソリの有効期間という2つのルールの間で構造的なジレンマに直面します。どちらを優先しても問題が生じる構造です。

 

注文時
オーソリ取得(与信枠確保)

数週間〜数ヶ月(予約期間)

オーソリ失効(国際標準: 10日 / 日本アクワイアラー運用: 最大25日)

発送時 — ここでキャプチャすべき(規約上)

だがオーソリが切れている
→ 再オーソリが必要
→ カード限度額超過 / 有効期限切れで失敗リスク

 

どちらを選んでも問題があるのが現状です。

 

選択肢A:発送前にキャプチャ 選択肢B:発送時にキャプチャ

・Visa/MC規約違反

・チャージバックリスク増大

・オーソリ失効で決済失敗リスク

=売上消失

 

多くのEC事業者は、この2択の存在自体を認識していないまま、選択肢Aで運用しているのが現状です。

 

このジレンマの解決策を先に知りたい方は

→ Recustomer Secureの詳細

 

「例外はカスタムオーダー品のみ」予約商品には適用されない

Mastercardの加盟店契約には、カスタムオーダー品に対する例外規定があります。ただし、この例外は「顧客の仕様に基づいて個別に製造される商品」に厳格に限定されており、一般的なECの予約商品には適用されません。

 

Mastercardの規定:

"Merchant may transmit a Transaction that effects a full prepayment of custom-ordered merchandise, manufactured to a Cardholder's specifications"
(加盟店は、カード会員の仕様に基づいて製造されるカスタムオーダー商品の全額前払いトランザクションを送信してもよい)

 

分類 具体例 例外適用
カスタムオーダー品
顧客仕様で個別製造
名入れジュエリー、オーダースーツ、カスタム家具 該当する
一般的な予約商品
既製品の先行予約
新作スニーカー、限定コレクション、新作ゲーム、コスメの先行販売 該当しない

 

カスタムオーダー品は、顧客仕様で作るためキャンセルされると他の顧客に転売できません。加盟店のリスクが高いため、例外として発送前の全額前払いが認められています。

 

一方、一般的な予約商品は既製品の先行予約であり、誰が買っても同じ商品です。キャンセルされても他の顧客に販売可能なため、この例外は適用されません。

 

「注文時キャプチャだから大丈夫」が危ない理由

25日ルールの対策として「オーソリ(仮売上)ではなく注文時に即キャプチャ(売上確定)すれば、オーソリ失効の問題は起きない」と考える事業者がいらっしゃると思います。確かにオーソリ失効の問題は回避できますが、別の、より深刻なリスクを抱えることになります。

 

・規約違反リスク: 前述のとおり、発送前のキャプチャはVisa/MCの基本ルールに反する。今まで問題にならなかったのは「見逃されていた」だけで、規約上は違反状態

 

・チャージバックリスクの増大: 購入者が「商品が届かない」を理由にチャージバックを申請した場合、発送前にキャプチャしていると加盟店側が紛争で不利になる。規約に沿った運用をしていないため、カードブランドの仲裁でも加盟店側が敗訴する可能性が高い

 

・返金対応の増加: 予約から発送までの間にキャンセルが発生した場合、すでにキャプチャ済みのため返金処理が必要になる。仮売上(オーソリ)段階ならキャンセル=取消で済むが、実売上後の返金は会計処理も複雑になる

 

「今まで問題なかったから大丈夫」は危険な判断

カード会社が規約違反を即座に指摘するとは限りません。しかし、不正利用被害の増加(2024年:555億円、過去最多)を背景に、カードブランドは加盟店の決済フローに対する監視を強化しています。

 

Visaのオーソリ期間改定やMastercardのUndefined Authorization廃止・ペナルティ導入はその一環であり、日本のアクワイアラーが25日上限を設定したのもこの流れに沿った動きです。「今まで問題なかった」ことが、今後も問題にならないことの保証にはなりません。

 

カード会社の監視強化トレンド

2024年〜2026年にかけて、EC決済のルールは急速に厳格化しています。発送前キャプチャの規約違反が「見逃される」可能性は、年々低下しています。

 

  • 2024年4月: Visaがオーソリからクリアリングまでの最大期間を改定。ECは10暦日、日本国内は4暦日が標準に
  • 2025年4月: 3Dセキュア2.0の義務化。本人認証の厳格化
  • 2025年6月: MastercardがUndefined Authorization(未定義オーソリ)を禁止
  • 2025年7月〜: Mastercardが過剰オーソリに対するTPE Fee(ペナルティ手数料)を段階的に引き上げ(0.25%→0.30%→0.35%)
  • 2026年7月: 日本のアクワイアラーが運用上限を25日に設定(いわゆる「25日ルール」)
  • 2026年9月30日: カード有効性確認目的の仮売上が禁止(Visa: Misuse of Authorization Fee)

 

これらは個別の変更ではなく、「EC決済の安全性を国際水準に引き上げる」という一連の流れです。この流れの中で、発送前キャプチャという「グレーだが見逃されてきた慣習」が、今後も見逃され続けると考えるのはリスクの高い判断です。

 

特に、25日ルールへの対策として「注文時キャプチャへの切り替え」を検討している事業者は注意が必要です。25日ルールの問題を回避するために、発送前キャプチャの規約違反リスクを新たに抱え込むことになるからです。

 

解決策:自動再オーソリで「発送時キャプチャ」を実現する

予約販売で規約を守りながら売上を確保する唯一の方法は、「オーソリの有効期限が切れる前に能動的に再オーソリを取得し続け、発送のタイミングでキャプチャ(売上確定)する」ことです。

 

この方法なら:

  • Visa/MCの規約を遵守: 売上確定は発送時。発送前キャプチャの規約違反リスクがゼロ
  • チャージバック耐性が向上: 「発送後にキャプチャ」の正しい運用なので、紛争時に加盟店の立場が強い
  • 25日ルールにも対応: オーソリ期限の短縮を受けて自動で再取得するため、失効の心配がない

 

ただし、この一連の制御ロジックには特許が存在します。

 

特許第7721200号(Recustomer社)

以下の一連の制御ロジックに対して特許が認められています。

 

  1. オーソリの有効期限が切れる前に、自動で再オーソリを繰り返し実行して与信を維持する
  2. 「出荷(購入確定)」などのイベントを検知して、自動更新をストップさせ、実売上に移行する

 

決済代行が公開している再オーソリのAPI間口を手動で呼び出すこと自体は問題ありませんが、上記の「自動ループ+出荷検知停止」を独自開発すると特許侵害リスクがあります。

 

つまり、「発送時キャプチャ」を規約通りに実現するための最も確実な手段は、この特許を持つRecustomer Secureを活用することです。Recustomer Secureは、特許取得済みの自動再オーソリ技術で「発送時キャプチャ」を実現します。

 

  • 既存のカート・決済代行を変えずに導入可能
  • オーソリ期限切れ前に自動で再オーソリ → 発送検知で自動キャプチャ
  • Visa/MC規約に完全準拠した決済フローに移行できる
  • 25日ルールとの同時対応が可能

 

「注文時キャプチャ」という応急処置ではなく、規約準拠の根本解決を検討されている方は、まずはご相談ください。

 

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よくある質問(FAQ)

 

Q. 予約商品を注文時に決済確定するのは規約違反ですか?

Visa・Mastercardの規約では、商品を発送するまで売上を確定(キャプチャ)してはならないと定められています。予約商品を注文時にキャプチャしている場合、規約違反に該当する可能性があります。ただし、カスタムオーダー品(顧客仕様で個別製造する商品)にはMastercardの例外規定があります。

 

Q. 発送前キャプチャをするとどうなりますか?

購入者から「商品未着」を理由にチャージバック(売上の強制返金)を申請されるリスクが高まります。規約違反の状態では、カードブランドの紛争仲裁で加盟店側が不利になります。また、カード会社の監視強化により、将来的に加盟店契約に影響する可能性もあります。

 

Q. カスタムオーダー品の例外は予約販売に使えますか?

一般的な予約商品には使えません。Mastercardの例外は「顧客の仕様に基づいて個別に製造される商品」に限定されています。名入れジュエリーやオーダースーツは該当しますが、新作スニーカー・限定コレクション・コスメの先行販売などは既製品の先行予約であり、例外に該当しません。

 

Q. ECのオーソリ有効期間は何日ですか?

Visaの国際ルールではEC取引(CNP)のオーソリ有効期間は最大10暦日、日本国内取引は4暦日が標準です。有料オプション(EAS)で最大30暦日まで延長でき、日本のアクワイアラーはこの範囲内で25日を運用上限として設定しています。「25日」はVisa/MCのグローバルルールではなく、日本のアクワイアラーの運用値です。海外発行カードは1〜7日と、さらに短い制限が適用されます。

 

Q. 予約販売で規約を守りながら決済を確保するにはどうすればよいですか?

規約を守るには「発送時にキャプチャ」する必要がありますが、予約期間中にオーソリが失効するため、期限前に自動で再オーソリを繰り返して与信を維持し続け、発送検知でキャプチャする仕組みが必要です。この一連の制御はRecustomer社が特許を取得しており、Recustomer Secureとして提供しています。

 

Q. 25日ルール対策として注文時キャプチャに切り替えるのはダメですか?

25日ルール(オーソリ失効)の問題は回避できますが、発送前キャプチャの規約違反リスクを新たに抱え込むことになります。一方の問題を解決するために別の問題を作る構造であり、根本解決にはなりません。

 

まとめ

 

  • Visa/MCの基本ルール: 商品を発送するまで売上を確定(キャプチャ)してはならない
  • 予約商品を注文時にキャプチャしている場合、規約違反に該当する可能性がある
  • カスタムオーダー品の例外は「顧客仕様の個別製造品」に限定。一般的な予約商品には適用されない
  • 予約販売には構造的ジレンマがある:発送前キャプチャ=規約違反、発送時キャプチャ=オーソリ失効
  • カード会社の監視は厳格化傾向。「今まで問題なかった」は今後の保証にならない
  • 25日ルール対策として注文時キャプチャに切り替えると、規約違反リスクを新たに抱える

関連記事

 

 

出典・参考文献

 

  1. Visa「Dispute Resolution(紛争解決ガイドライン)
  2. Visa「Visa Core Rules and Visa Product and Service Rules(2026年4月版)
  3. Visa「Authorization Framework変更通知
  4. Mastercard「Transaction Processing Rules(2025年6月版)
  5. LawInsider「加盟店契約標準条項(Documenting Transactions)
  6. Mastercard「Mastercard Rules(2026年6月版)
  7. Mastercard「Security Rules and Procedures Merchant Edition(2026年2月版)
  8. Visa「Account Number Verification Service
  9. Verisave「Mastercard's 2026 Excessive Authorization Rules

 

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