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  • Ryosuke Yamazumi

返品申請をセルフ化すると返品率は上がるのか ― 実測データで検証する

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結論から言うと、返品ポリシーの中身を変えずに申請フローだけをセルフ化しても、返品率は基本的に増えません。「返品を簡単にすると返品が増えるのではないか」は、返品・交換の導入検討で最も多く出る懸念のひとつですが、実際に運用しているEC事業者の実測データは、この懸念とは異なる結果を示しています。

 

この記事では、申請セルフ化を実施した事業者の実測データと、返品ポリシーそのものを緩和した事業者の実例をもとに、なぜ返品率が上がらないのか、そして「返品率が低い」ことの裏に潜むリスクまでを検証します。

この記事の要点(30秒で読める)

  • 年間出荷480万件規模のアパレルECで申請セルフ化後、CS問い合わせは半減し、返品件数はむしろ微減
  • セール品まで返品可能にした事業者でも、返品率は特に上がらず売上は増加
  • ポリシーを変えない限り、行動が変わるのは返品する約5%の顧客だけ
  • むしろ「返品率が低い」ことが購入自体の機会損失を示している場合がある
  • 増やさない設計の鍵はポリシーの自動判定と条件分岐

 

返品申請のセルフ化とは

返品申請のセルフ化とは、これまで電話やメールでのやり取りを経て受け付けていた返品・交換の申請を、購入者自身がWeb上で完結できるようにする仕組みです。購入者が注文履歴から対象商品を選び、理由を選択するだけで申請が完了し、返送用の伝票発行までオンラインで完結します。

 

この変更を検討する事業者から最も多く出る懸念が「申請のハードルを下げると、これまで面倒で諦めていた返品まで増えるのではないか」というものです。しかし、実際に導入した事業者の実測データはこの懸念を裏付けていません。

 

実測データ1: 年間出荷480万件規模のアパレルECでは問い合わせが半減し返品は微減

年間出荷約480万件規模のアパレルEC事業者は、返品申請をセルフ化した結果、CSへの問い合わせ件数が半減しました。この事業者では、それまで返品の申し出は100%が電話やメールなどの問い合わせ経由でした。申請フローをセルフ化したことで、この問い合わせ自体が完全になくなり、CS全体の問い合わせ件数として見ても半減という実績が出ています。

 

この事業者の担当者は、社内から「返品が増えるのでは」という懸念の声が上がっていたことを認めたうえで、実際には「逆に少し減った」と証言しています。申請を簡単にしたことで返品が増えるどころか、むしろ微減したという結果です。

 

実測データ2: セール品まで返品可能にしても返品率は変わらず売上は増えた

あるラグジュアリーブランドのECでは、これまで対象外だったセール品についても返品を可能にするポリシー変更を行いました。この変更は、通常であれば「返品対象が広がるほど返品率も上がる」と懸念されやすい施策です。

 

しかし、この事業者の担当者は「それでも返品率は特に上がらなかったので、売上は上がっている。やはりプラスに働いている」と評価しています。返品できる範囲を広げたことが、購入のハードルを下げて売上増加に寄与した一方で、返品率そのものへの悪影響は見られなかったという実例です。

 

なぜ返品率は増えないのか ― 行動が変わるのは返品する約5%だけ

返品ポリシーの内容自体を変えない限り、申請の手間を減らしても返品率が増えない理由は単純です。返品を経験する購入者は全体の一部にすぎず、その他の大多数の購買行動は、申請フローがどれだけ簡単になっても変わらないためです。

 

この論点は商談の現場でも繰り返し議論されてきました。「返品・キャンセルが増えるのではないか」という懸念は、返品・交換の導入検討で確認できた反論の中でも上位に入る頻出項目です。その多くが「返品ポリシーを変えなければ返品率は変わらない。返品体験を知るのは実際に返品する一部の顧客だけで、残りの大多数の購買行動は変わらない」という説明で解消しています。

 

むしろ、申請フローに理由選択や画像添付などの必須項目を設けることで、軽い気持ちでの申請の一部が自然に離脱し、問い合わせ自体が減るという効果も報告されています。返品率が上がるとすれば、それは送料無料キャンペーンなど返品を増やす施策を意図的に実施した場合に限られ、通常の申請セルフ化そのものが原因になることは基本的にありません。

 

逆に「返品率が低い」ことの危険性

返品率の低さを単純に「良いこと」と捉えるのは早計です。返品ポリシーがわかりにくい、あるいは申請の手続きが煩雑であるために、購入者が「返品しない」のではなく「そもそも購入しない」という選択をしている可能性があるためです。

 

実際に、返品できないことが購買の判断基準になっているという声は、ブランド側の担当者からも上がっています。「返品できなければ、自分が買い物客だとしても、返品できないからオンラインで買わないというのは、買わない理由になる」という指摘は、返品ポリシーの寛容さが購入の後押しとして機能していることを示しています。

 

返品率だけを見て安心するのではなく、返品ポリシーが購入判断そのものに与えている影響まで含めて評価する視点が必要です。返金と交換では売上への影響が大きく異なる点については、「返金後に買い直す顧客は5% ― 返品を交換に寄せた場合の売上インパクトを試算する」で詳しく解説しています。

 

増やさずに体験を良くする設計 ― ポリシーの自動判定と条件分岐

返品率を増やさずに申請体験だけを良くする鍵は、ポリシーの自動判定と条件分岐です。購入からの経過日数やSKU、会員ランクといった条件に応じて、申請の可否をシステム側が自動で判定する仕組みを組み込みます。

 

これにより、ポリシー上は対象外である購入後8日目・10日目といった期限外の申請を自動で拒否できるようになります。人が個別に対応していた運用では「事情を説明すれば通る」という慣習が生まれがちですが、これを自動判定に置き換えることで、かえって返品率が下がる事例も確認されています。

 

返品・交換の可否をSKUや購入経過日数などの条件から動的に自動判定する仕組みは、Recustomerが特許第7768617号として技術的裏付けを持つ領域です。ポリシーをコードの奥に固定的に埋め込むのではなく、事業者側が管理画面から条件分岐を柔軟に設定・変更できる設計にすることで、季節や商材ごとにポリシーを調整しながら、判定の一貫性も保てます。

 

運用パターン 申請体験 ポリシー逸脱への耐性
電話・メールでの人的受付 悪い(待ち時間・営業時間の制約) 低い(個別対応で「情」により期限が形骸化しやすい)
セルフ申請フォームのみ(判定なし) 良い 中程度(申請自体は自動だが承認判断は人手)
セルフ申請+ポリシー自動判定 良い 高い(条件外の申請を機械的に拒否)

 

加えて、返品・交換の申請回数に応じて顧客にタグを付け、申請回数が多い顧客だけ人による確認を厳格化するという運用も有効です。全顧客に同じ厳格さを適用する必要はなく、リスクの高い一部の顧客だけに人的コストを寄せることで、大多数の顧客の申請体験を損なわずに悪用リスクだけを抑えられます。

 

自社での開発とツール導入のコスト比較については「返品対応システムの自社開発とツール導入、コストで比較する」もあわせてご覧ください。

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よくある質問

 

Q. 返品申請をセルフ化すると返品は増えますか?

返品ポリシーの内容自体を変えない限り、基本的に増えません。年間出荷480万件規模のアパレルECの実測では、申請セルフ化後にCS問い合わせが半減し、返品件数はむしろ微減しました。

 

Q. 返品率の平均・目安はどれくらいですか?

業種・商材・単価によって大きく異なるため、単一の平均値で自社の状況を判断するのは適切ではありません。返品理由の内訳を把握したうえで、交換への転換率とあわせて評価することが重要です。

 

Q. 返品ポリシーを緩めると売上は増えますか?

セール品を含めて返品可能にした事業者の実例では、返品率は特に上がらず、売上は増加しました。返品できないことが購入を諦める理由になっている購入者が一定数存在するためです。

 

Q. 返品を増やさずに申請体験を良くするにはどうすればいいですか?

申請フローに必須項目を設けて軽い申請を自然に減らすことに加え、SKU別・購入経過日数別のポリシー自動判定で期限外の申請を機械的に拒否する設計が有効です。「人に言えば通る」という運用の緩みがなくなり、返品率が下がる事例もあります。

 

Q. 返品を繰り返す顧客への対策はありますか?

申請回数に応じてタグを付け、申請回数が多い顧客だけ人による確認を厳格化し、通常の顧客は自動承認にする運用が有効です。全顧客に同じ厳格さを適用する必要はありません。

 

Q. 返品率が低いことは良いことですか?

必ずしも良いとは言えません。返品ポリシーがわかりにくい、または申請が面倒なために「そもそも購入しない」という選択をしている購入者が隠れている可能性があります。

 

Q. セルフサービス化でCSの問い合わせは本当に減りますか?

実測データでは、返品の申し出が100%問い合わせ経由だった事業者で、セルフ化後に問い合わせ件数が半減しています。申請フローの必須項目によって軽い問い合わせ自体が減る効果も確認されています。

 

まとめ

  • 返品ポリシーの内容を変えない限り、申請セルフ化そのものは返品率を増やさない
  • 年間出荷480万件規模のアパレルECでは、セルフ化後に問い合わせ半減・返品は微減
  • セール品まで返品可にした事業者でも返品率は変わらず売上は増加
  • 行動が変わるのは返品する一部の顧客だけで、大多数の購買行動は不変
  • 「返品率が低い」ことが購入自体の機会損失を隠している場合がある
  • 増やさない設計の鍵はポリシーの自動判定・条件分岐・悪用対策のタグ運用

 

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