「月に数百万円の未回収が出る可能性がある」──。
クレジットカード決済の"オーソリ25日ルール"について、この1ヶ月でEC事業者から実際に聞いた言葉です。
Recustomerではこの1ヶ月、数十社のEC事業者や決済関係者の方々と直接お話ししてきました。聞けば聞くほど分かってきたのは、懸念が「予約販売の決済が切れる」という一点ではないことです。
認知、売上の未回収、会計処理、在庫運用、顧客対応。この記事では、現場で実際に聞いた声をできる限りそのまま紹介しながら、浮かび上がってきた懸念を整理します。
この記事の要点(30秒で読める)
- 認知: 大手でも「役員レイヤー以外は誰も知らなかった」。社内で決済のルール変更と販売企画の間に橋がかかっていない
- 実害: 「月に数百万円の未回収が出るかも」「代引きに切り替えたが追いつかない」という声がすでに出ている
- 射程: 船便遅延・文字入れギフト(納期40日)・抽選販売など、予約販売ではない通常注文にも影響が及ぶ
- 誤解: 「先に決済しているから大丈夫」には規約・チャージバック・会計処理の3つの落とし穴がある
- 対策: 動き始めた会社は「注文の棚卸し」「決済代行の適用日確認」「経理の巻き込み」「期限設定」から着手している
現場で聞いた声マップ ― 懸念は1つではなかった
まず、この1ヶ月で聞いた代表的な声を一覧にします。
同じルール変更でも、立場によって浮かび上がる懸念がまったく違うことが分かります。
| 現場の声 |
立場 |
浮かび上がった懸念 |
| 「月に数百万円の未回収が出るかもしれない」 |
予約販売が主力のEC |
売上の未回収 |
| 「役員以外、誰も知らなかった」 |
大手アパレル企業 |
社内の認知格差 |
| 「代引きに切り替えたが、追いつかない」 |
受注生産のEC |
手動対応の限界 |
| 「うちは予約販売じゃないから関係ない」 |
幅広いEC |
通常注文・長納期への影響の見落とし |
| 「先に決済しているから大丈夫」 |
即時決済運用のEC |
規約・チャージバック・会計処理 |
| 「"いつ届くのか"の問い合わせが増えるのが怖い」 |
少人数運営のEC |
顧客対応の負荷 |
オーソリ25日ルールとは ― 30秒でおさらい
オーソリ25日ルールとは、Visa・Mastercardのブランドルール変更を受けて、これまで決済代行会社によって60〜90日間保持できたオーソリ(与信枠)の有効期限が最大25日に短縮される変更のことです。
適用時期は決済代行会社ごとに異なり、2026年7月から秋にかけて順次切り替わります。
注文から発送まで25日以上かかると、決済しようとした時にはもう与信が消えている。そういうルール変更です。
制度の詳細は解説記事「オーソリ25日ルールとは?」にまとめています。本記事では「現場で何が起きているか」に絞って紹介します。
声①「役員以外、誰も知りませんでした」― まず、認知の壁
商談やヒアリングを重ねて最初に痛感したのは、認知の低さです。複数ブランドを展開する大手アパレル企業との商談では、まさに「役員レイヤー以外は誰も知らなかった」という言葉が出ました。年商規模の大きな会社でも、です。
理由を探っていくと、構造的な問題が見えてきます。決済まわりの変更情報は決済代行会社からの告知で届きますが、それを受け取るのは経理や情報システムの担当者です。
一方で、予約販売や入荷待ち販売を企画するのはEC事業部やマーケティングです。「決済のルール変更」と「販売企画」の間に橋がかかっていない会社がほとんどでした。
もちろん、すでにアンテナを張っている会社もあります。大手玩具メーカーのECは「予約も再入荷販売もやっているから気になっていた」と、対応先の選定に入っていました。
産直食品のECからは、「オーソリ 25日」と自分で検索して調べた上で問い合わせをいただきました。知っている会社はもう動いていて、知らない会社はまだ存在にすら気づいていない──この二極化が起きています。
声②「月に数百万円の未回収が出るかもしれない」― すでに実害も
一方で、少数ですが、すでに深刻な影響が出始めている会社もあります。
タイトルにも掲げた「月に数百万円の未回収が出る可能性がある」は、予約販売を主力にするECの方の言葉です。
「出荷前にオーソリが切れてしまって、代引きに切り替えたんですが、追いつかない」という声もありました。これは25日ルールが適用される前の話です。
従来の60〜90日ですら、受注生産や長納期の商売では期限切れが起きていた。それが25日になったらどうなるか、を各社が急いで計算し始めています。
BtoB向けの部品を受注販売しているECからは、「納品まで90日を超えるケースが多くて、クレカのオーソリが気になって自分で調べた」という問い合わせをいただきました。自ら危機感を持って連絡をくださる会社が、7月に入って増えています。
影響は予約や受注生産だけではありません。あるフォーマル系のアパレルECは、自宅で試着してから購入を確定するサービスについて「試着期間を考えると、この仕組み自体が25日に引っかかりそうだ」と相談に来られました。
決済を確定せずに商品を先に届けるビジネスモデルは、実は世の中に思った以上に多いのです。
声③「うちも対象ですか?」― 予約販売ではない会社から
「うちは予約販売をやっていないので、関係ないですよね?」。
ヒアリングで意外なほど多かった反応です。
ただ、実際に話を聞いていくと、予約販売をしていない会社からも懸念は次々に出てきました。
海外生産のアパレルECでは、船便の遅延で"通常の注文"が期限切れになり、実際にキャンセルが発生していました。海外発行のカードでは、オーソリの期限が国内よりさらに短いケースがあるためです。
年間30万件近くを出荷する菓子メーカーのECからは、「文字入れのギフト商品は、通常注文でも納期が最長40日かかる」という相談がありました。予約販売ではなく、ふつうの注文です。
観光土産のECからは「抽選販売で、当選者だけ決済する方式をとっている。これは対象になるのか」という質問も受けました。
大手の生活雑貨小売からは、逆に「通常注文にもこの対策は使えるのか」という確認依頼をいただいています。
つまりこれは「予約販売の問題」ではなく、「注文から出荷までの日数の問題」です。受注生産、カスタムオーダー、産直や海外取り寄せ、抽選販売──自社の注文に「出荷まで25日を超えうるもの」が1つでもあれば、当事者です。
声④「先に決済しているから大丈夫」― 決済の外側にある懸念
もう1つ、よく聞いた反応が「うちは注文時に即時決済しているので、特に困っていません」というものです。
たしかに、注文と同時に売上を確定してしまえば、オーソリの期限は関係なくなります。ただ、この運用には3つの落とし穴があります。
1つ目は規約です。商品の発送前に売上を確定する行為は、カード加盟店規約に抵触する可能性があります。
2つ目はチャージバックです。「商品が届いていないのに請求された」という申し立てに弱い構造になります。
3つ目は会計です。決済上は入金されても、会計上の売上計上は出荷時であり、入金と計上のズレは前受金の管理を複雑にします。
ある家具ECは「年度末は売上計上が期をまたぐのが嫌で、受注自体を止めている」と話していました。販売機会を、会計都合で自ら閉じているわけです。
似た誤解に「Shopifyに移行するから関係ない」もあります。ある小売チェーンのECは「移行後は即時売上になるから関係ない」という認識でしたが、出荷まで半年かかる商品があり、前受金の管理と売上計上のズレという問題はそっくり残ることが分かりました。
印象的だったのは、あるアパレル企業の反応です。即時決済のリスクをお伝えしたところ、その場で「経理に共有します」と。
決済の話は、EC担当だけでは判断が完結しないのです。
声⑤「力技です」― 現場の工夫と、その限界
すでに課題に気づいている会社の工夫には、頭が下がるものがありました。
ある寝具のD2Cブランドは、在庫がないのにECへ在庫を登録して予約注文を受け、受注管理システム側でわざとエラーを起こして出荷を止め、入荷したら倉庫システムを手動で操作して流す運用を組んでいました。ご本人いわく「力技です」と。
化粧品系のD2Cでは、欠品した商品を予約受付に切り替える作業が手動で、毎朝1時間以上かかっているそうです。
月額10ドルほどの海外製アプリで対応している会社もありました。ただよく聞くと、予約の受付上限が設定できない、オーソリの自動延長には対応していない、サポートは英語のみ、という穴がいくつもあります。手動での再オーソリ(与信の取り直し)も理屈上は可能ですが、注文件数が増えれば破綻しますし、更新漏れはそのまま売上の消失になります。担当者の頑張りで支える運用は、繁忙期にいちばん弱い。
一方で、慎重な声も正直に紹介します。「予約や再入荷の販売を始めると、"いつ届くのか"という問い合わせが増えるのが怖い」──少人数で運営しているECほど、この不安は切実でした。
決済の仕組みだけでなく、顧客対応まで含めた運用設計が要る、というのはその通りだと思います。
動き始めた会社は、何をしているか
この1ヶ月で「様子見」から「対応」に動いた会社には、共通の行動がありました。
- 自社の注文を棚卸しする: 予約販売に限らず、「注文から出荷までの最大日数」を商品タイプごとに洗い出す
- 決済代行会社の適用時期と挙動を確認する: 適用日は各社バラバラで、期限超過分を自動キャンセルする会社もあれば、注文は残る代わりに国際ブランドからのペナルティが加盟店側に転嫁される仕組みの会社もある
- 経理・財務を早めに巻き込む: 売上計上・前受金・返金対応は現場だけで決められない
- 期限を切る: 「来年の予約販売の受付開始までに決める」と締め切りから逆算して要件を固める
どれも特別なことではありませんが、「決済エラーが出てから」ではなく「出る前に」やるかどうかで、失うものの大きさが変わります。
声を集めてみえたこと ― これは決済担当だけの問題ではない
こうして声を並べてみて感じるのは、これが「決済担当だけの問題」ではないということです。
未回収という売上の懸念、売上計上のズレという会計の懸念、予約切替や再オーソリという運用の懸念、「いつ届くのか」という顧客対応の懸念。
一つのルール変更から、部署をまたいで別々の懸念が立ち上がっています。だからこそ「うちの場合はどこに効いてくるのか」を早めに棚卸しした会社ほど、落ち着いて動けています。
7月に入り、検索も問い合わせも明らかに加速しています。さらに9月30日以降は、カードの有効性確認だけを目的とした0円オーソリも原則禁止になります。
決済代行会社やカートベンダーの側でも、再オーソリの延長機能を用意するなどの対応が出始めています。ただ、その内容も提供時期も各社まちまちで、「自社の販売形態で本当に足りるのか」を判断する作業は、結局それぞれのEC事業者に残ります。
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本記事で紹介した現場の声も含めて、25日ルールの全体像と対応策を30分で解説します。お申し込みはこちら(無料・30分)
よくある質問(FAQ)
Q: 予約販売をしていなければ、25日ルールの影響はありませんか?
A: いいえ。船便遅延を含む海外取り寄せ、文字入れなどのカスタムオーダー、産直、抽選販売など、注文から出荷まで25日を超えうる注文があれば対象です。
海外発行カードは、オーソリの期限がさらに短いケースがあります。
Q: 注文時に即時決済(売上確定)していれば問題ありませんか?
A: オーソリ期限の問題は回避できますが、発送前の売上確定はカード加盟店規約に抵触する可能性があるほか、チャージバックに弱くなり、入金と売上計上のズレが前受金管理を複雑にします。経理・財務を含めた確認をおすすめします。
Q: オーソリが期限切れになるとどうなりますか?
A: 決済代行会社によって扱いが異なります。期限超過分を自動キャンセルする運用を始める会社もあれば、注文は残る代わりに国際ブランドからのペナルティが加盟店側に転嫁される仕組みの会社もあります。
ご自身の契約先がどちらの挙動かは、決済代行会社への確認が必要です。
Q: 手動の再オーソリで対応できますか?
A: 少量なら理屈上は可能ですが、注文件数が増えると破綻し、更新漏れはそのまま売上の消失になります。繁忙期に最も弱い運用のため、件数が多い場合は自動化の検討をおすすめします。
Q: 25日ルールはいつから適用されますか?
A: 適用時期は決済代行会社ごとに異なり、2026年7月から秋にかけて順次切り替わります。また2026年9月30日以降は、カードの有効性確認だけを目的とした0円オーソリも原則禁止になります。
Q: まず何から始めればいいですか?
A: ①商品タイプごとに「注文から出荷までの最大日数」を洗い出す、②契約している決済代行会社の適用日と期限超過時の挙動を確認する、③経理・財務を巻き込む、の3つが動き始めた会社の共通行動です。
まとめ
・オーソリ25日ルールの認知はまだ低く、大手でも「役員以外知らなかった」という状態。社内の情報連携が最初の壁
・「月に数百万円の未回収」「代引き切替が追いつかない」など、実害はすでに出始めている
・影響は予約販売に限らず、「注文から出荷までの日数」が25日を超えうるすべての注文に及ぶ
・「即時決済だから大丈夫」には規約・チャージバック・会計の3つの落とし穴がある
・動き始めた会社は、注文の棚卸し・決済代行の適用日確認・経理の巻き込み・期限設定から着手している
Recustomerでは、オーソリを自動で更新し続け、出荷を検知した時点で決済を確定する仕組みを、特許技術をベースに開発・提供しています。まずは自社の注文に25日超えがあるかの確認からでも、お気軽にご相談ください。
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Recustomer Secureは、特許技術をベースにオーソリを自動で維持・更新し、出荷検知で決済を確定します。
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