
配送を「注文後のコスト」と切り離さず、送料無料ラインから受取完了まで一つの利益設計として見るべき時期に来ています。カウネットが2026年10月26日に公表した全国920人の調査では、自宅で再配達を防ぐ工夫として「在宅している日時を指定する」が70.7%で最多でした。
同じ調査では、送料無料ラインが引き上げられた場合でも46.7%が「まとめ買いや『ついで買い』をして、引き続き無料ラインを目指す」と回答しています。EC事業責任者にとって重要なのは、送料を単純に無料化するか有料化するかではなく、客単価・粗利・初回配達完了率を同じ指標の束で管理することです。
受取選択設計とは
受取選択設計とは、購入者が注文時と出荷後に、受取日時・場所・方法を選び直せる状態をつくることです。単に日時指定欄を設置するのではなく、配送通知から変更画面へ迷わず移れる導線までを含みます。
調査結果からは、購入者がすでに再配達を避けようとしていることが分かります。慢性的なドライバー不足や物流網の逼迫を受け、「なるべく再配達にならないようにしようと思うようになった」と答えた人は80.9%でした。
| 調査で確認された行動・意識 | 自宅での回答 | ECでの判断 |
| 在宅している日時を指定する | 70.7% | 注文時・出荷後の日時変更を優先 |
| 送料無料のためのついで買い経験 | 65.0% | 送料無料ラインを客単価向上に活用 |
| ライン引き上げ後もまとめ買い | 46.7% | 粗利を確認しながら価格テスト |
カウネット調査で見えた、送料と受取行動のつながり
調査は2026年9月8日から14日まで、カウネットモニカ会員の全国男女920人を対象にインターネットで実施されました。物流の人手不足による配送料高騰や配送遅延を「知っており、深刻な問題だと感じている」人は68.5%です。
自宅で意識的に行う再配達防止策は日時指定が70.7%で最多でした。日時や受取場所の変更、置き配・宅配ボックス、通知サービスもそれぞれ4割を超えており、購入者は複数の選択肢を使い分けています。
さらに、自宅向けの買い物で送料無料ラインに届かせるための「ついで買い」を経験した人は65.0%でした。送料無料ラインを引き上げた場合も46.7%がまとめ買いを選ぶという結果は、送料設計が客単価と配送原価の双方を動かすことを示しています。
なぜ今、配送を利益の指標で見る必要があるのか
配送コストが上がる局面で、送料無料を一律に維持すると注文数が増えても粗利が残らないことがあります。一方、送料を急に転嫁すれば購入率が落ち、結果として獲得コストを回収できない可能性があります。
受取失敗も同じです。再配達そのものの費用をEC事業者が直接払わない場合でも、遅延問い合わせ、未受取キャンセル、返送、返金、再発送が発生すれば注文利益は削られます。
経営判断のポイント: 「配送費/売上高」だけでなく、初回配達完了率、配送問い合わせ率、未受取返送率、再発送率、注文当たり限界利益を同じダッシュボードで確認します。
国土交通省も2026年度の「再配達削減PR月間」で、置き配や宅配ロッカーなど多様な受取方法と、確実に受け取れる日時・方法の指定を重点項目に挙げています。受取選択は一時的な利便性施策ではなく、物流を持続させるための標準要件になりつつあります。
日本のEC事業者が売上と粗利を守る4つの実務
1. 送料無料ラインを限界利益から逆算する
平均注文額だけで線を引かず、商品粗利から決済手数料、梱包費、出荷費、送料、返品見込み費用を差し引きます。そのうえで現行ライン、少額引き上げ、会員限定無料など複数案の注文当たり利益を比較します。
2. 日時指定をチェックアウトの脇役にしない
自宅では70.7%が日時指定を使って再配達を防いでいます。入力欄を見つけやすくし、指定できない商品や地域では理由を明示して、期待と実際の配送条件をずらさないことが重要です。
3. 出荷後通知を「見るだけ」で終わらせない
出荷・配達予定・持ち戻りの通知から、受取日時や場所を変更できる画面へ直接つなげます。商品特性に合わせた通知と変更導線は「食品ECの配送追跡とキャンセル」でも詳しく整理しています。
4. 商品特性に応じて受取方法を出し分ける
置き配は便利ですが、高額品、要冷蔵品、破損しやすい商品で一律に選べる状態が最適とは限りません。商品の価格・サイズ・温度帯・補償条件に応じて、安全に提示できる受取方法を決めます。
再配達有料化への消費者意識と通知設計は「再配達有料化に52.7%が賛成」も参考になります。今回の調査と合わせると、料金だけで行動を変えるのではなく、変更しやすい受取導線を先に整える必要性が見えてきます。
よくある質問
Q. 受取選択設計とは何ですか?
購入者が注文時や出荷後に、受取日時・場所・方法を選び直せるようにする設計です。配送通知と変更導線をつなぎ、初回配達で受け取れる確率を高めます。
Q. 今回の調査はどのように行われましたか?
カウネットモニカ会員の全国男女920人を対象に、2026年9月8日から14日までインターネットで実施されました。結果は10月26日に公表されています。
Q. 送料無料ラインは引き上げてもよいですか?
一律の正解はありません。限界利益、平均注文額、送料原価、追加購入率を使って複数案を試算し、顧客層別にテストしてください。
Q. 再配達を減らすには何から始めるべきですか?
日時指定の見つけやすさを改善し、出荷時と配達前の通知から受取日時・場所を変更できる導線を整えることが出発点です。
Q. 配送通知の効果は何で測りますか?
通知開封率だけでなく、初回配達完了率、受取変更率、配送問い合わせ率、再購入率、注文当たりの配送関連費用を合わせて見ます。
Q. 置き配はすべての商品で勧めるべきですか?
一律には勧めません。高額品、要冷蔵品、破損しやすい商品などは、商品の性質や補償条件に応じて選択肢を出し分けます。
まとめ
- カウネットの全国920人調査では、自宅の再配達防止策は日時指定70.7%が最多
- 物流課題を深刻と感じる人は68.5%、再配達を避けようと思う人は80.9%
- 自宅向けの買い物で送料無料のためのついで買い経験は65.0%
- 送料無料ライン引き上げ後も46.7%がまとめ買いを選ぶと回答
- 送料無料ライン、日時指定、配送通知を一つの利益設計として改善する
次の一歩を、負担の軽い順に選べます
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参考・出典
- 株式会社カウネット「配送サービスについての意識調査」(2026年10月26日)
- 株式会社カウネット(PR TIMES)「約7割が物流課題を深刻視。再配達防止策は『日時指定』が最多、自宅の置き配も4割超に」(2026年10月26日)
- 国土交通省「再配達削減PR月間 特設ページ」(2026年10月28日閲覧)