
返品特約とは、通信販売で「返品を受けるか」「どんな条件で受けるか」「返送料をどちらが負担するか」を事業者が定め、広告に表示するルールのことです。表示していない場合は、商品の到着から8日以内の返品を、送料お客様負担で受けることになります(特定商取引法第15条の3)。
この記事では、アパレル・雑貨のEC事業者向けに、返品特約を「どこに・どう書くか」を条文と消費者庁のガイドラインに沿って整理します。商品ページと最終確認画面にそのまま使える文例も紹介します。
返品特約とは?押さえる表示ルール4つ
返品特約は、契約どおりの商品を届けたときに、お客様の都合による返品をどう扱うかを決めたものです。特定商取引法と消費者庁のガイドラインから、EC事業者が押さえるべき表示のルールは次の4つに整理できます。
| # |
ルール |
根拠 |
| 1 |
返品特約を表示しないと、到着後8日以内・送料お客様負担の返品を受けることになる |
特定商取引法 第15条の3 |
| 2 |
表示する場所は「商品ページ(広告)」と「最終確認画面」の両方 |
特定商取引法 第11条・第12条の6 |
| 3 |
返品の可否・返品の条件・返品の送料負担の3点は、ほかの記載より目立たせる |
消費者庁ガイドライン |
| 4 |
「お客様都合の返品」と「不良品・誤配送」は分けて書く |
消費者庁ガイドライン |
書かなければ「8日以内・送料お客様負担」で返品を受ける
通信販売にはクーリング・オフがありません。その代わり、返品特約を広告に表示していない場合、お客様は商品を受け取った日から8日以内であれば、返送料を負担して返品できます(法第15条の3)。
返品特約を表示していれば、その内容が優先されます。「返品不可」も、表示していれば有効です。
逆に何も書いていないと、セール品や下着類のように返品を受けたくない商品も、8日以内の返品の対象になります。返品期間の考え方は返品はいつまで?ケース別の期限、クーリング・オフとの違いはクーリングオフとは?で詳しく解説しています。
返品特約を表示する場所は「商品ページ」と「最終確認画面」の両方
返品特約は、書いてあるだけでは足りません。お客様が申し込む前に目にする場所に表示する必要があります。
商品ページ(広告)への表示:法第11条
特定商取引法第11条は、通信販売の広告に返品特約を表示することを求めています。ECサイトでは、商品ページが「広告」にあたります。
最終確認画面への表示:法第12条の6
2022年6月1日の改正法施行以降は、注文確定ボタンの直前の画面(最終確認画面)にも、申込みの撤回・解除に関する事項として返品特約の表示が必要です(法第12条の6)。カートに入れた後の画面で返品の条件が消えていないか、確認しておく必要があります。
「ご利用ガイド」にまとめて書くときの条件
すべての商品に共通するルールを「ご利用ガイド」などのページ(ガイドラインでは「共通表示部分」)にまとめる方法も、ガイドラインは分かりやすい表示と考えられる場合があるとしています。その条件として示されているのが、次の3点です。
- 各商品ページに「到着後○日以内に限り返品可」「送料はお客様負担」などの要点を表示し、「詳細はご利用ガイドを御参照ください」等のリンクから共通ページへ移動できる
- 広告から申込みに至るすべての段階で、メニュー等から共通ページを開ける
- 共通ページでは「返品に関するお知らせ」のような見出しを立て、返品特約がどこに書いてあるかが一目で分かる
ガイドラインは、何十条にも及ぶ購入規約の中に返品特約を区分せずに書く方法を、分かりにくい表示の例として挙げています。利用規約の一条項として埋もれさせず、「返品・交換について」のような独立した見出しで区分してください。
返品特約の重要事項3点は、ほかの記載より目立たせる
消費者庁のガイドラインは、次の3点を「返品特約における重要事項」と呼んでいます。返品トラブルの主な原因になっているため、ほかの事項より明瞭に表示することが必要とされています。
- 返品の可否(返品を受けるか、受けないか)
- 返品の条件(期間・商品の状態など)
- 返品に係る送料負担の有無(返送料をどちらが負担するか)
ガイドラインが挙げている表示の工夫は、商品の価格や申込先など必ず確認される事項の近くに置く、商品の価格と同じ文字の大きさにする、色文字・太字を使う、返金方法など返品特約のほかの事項より大きな文字にする、といったものです。インターネットの場合は、パソコンの標準設定で12ポイント以上の文字で表示することも例として示されています。
「埋もれている」と判断されやすい表示
反対に、ガイドラインが「容易に認識できるよう表示していないおそれがある」としているのは、次のような表示です。
- 商品ページに返品特約の表示がまったくない
- 膨大な画面をスクロールしないとたどり着けない場所や、ページの隅に表示している
- 極めて小さな文字で表示している
- 「返品について」等の見出しがなく、ほかの説明に紛れている
- 「返品についての詳細はこちら」の案内が極めて小さい、または何度もページを移動しないと共通ページに着かない
対象外の商品は「どこまで含むか」が分かるように書く
返品不可の商品を設ける場合は、その範囲がお客様に分かる書き方にする必要があります。ガイドラインは、分かりやすい例として次のような書き方を挙げています。
- 「下着類(靴下を含み、色柄付きのTシャツを含まず。)は返品不可。」
- 「飲食料品(サプリメントは含まず。)は返品不可。」
一方で「下着類、飲食料品等、購入後価値が極めて低下するものは返品不可。」とだけ書く方法は、分かりにくい例とされています。肌着のように着ることがあるTシャツや、栄養補助のサプリメントが対象に入るのかどうかが読み取れないためです。
アパレル・雑貨なら、セール品・下着類・ピアスやイヤリング・名入れ商品など、迷いやすい商品がどちらに入るのかを括弧書きで明記しておくと、問い合わせと申請の可否をめぐるやり取りを減らせます。
「お客様都合」と「不良品・誤配送」は見出しを分けて書く
返品特約は、契約どおりの商品を届けた場合のルールです。届いた商品が不良品や注文と違うもの(契約不適合)だった場合の販売業者の責任は、これとは別の扱いになります。
ガイドラインは、両者の区別がつかない表示をした場合、その表示は契約どおりの商品についての返品特約だけを定めたものと解され、不良品などの場合の責任は民法・商法の一般原則によるとしています。「返品不可」と書いたつもりでも、不良品まで返品不可にできるわけではありません。
返品・交換のページでは、次のように見出しを2つに分けて書くのが安全です。
- 【お客様のご都合による返品・交換】受付期間・商品の条件・返送料・対象外の商品・返金
- 【不良品・誤配送の場合】連絡の期限、返送料・再送料の負担、良品への交換または返金
返送料の設計そのものについては、返品送料負担の考え方もあわせてご覧ください。
返品特約の文例(アパレル・雑貨)
ここまでのルールを、アパレル・雑貨のECで使える文例にすると次のようになります。○の部分は自社の条件に置き換えてください。
商品ページに置く短い表示
返品・交換:到着後○日以内・未使用(タグ付き)に限り可/お客様都合の返送料はお客様負担(交換は無料)
詳しくは「返品・交換について」をご確認ください。
価格やカートボタンの近くに、価格と同じ大きさの文字で置きます。重要事項3点(可否・条件・送料負担)がこの2行に入っていることがポイントです。
「返品・交換について」ページの書き出し
【お客様のご都合による返品・交換】
受付期間:商品到着日から○日以内に、返品・交換の申請をお願いします。
条件:未使用・未洗濯で、タグ・付属品・箱がすべて揃っている商品に限ります。室内での試着は「未使用」として扱います。
返送料:返品の場合はお客様のご負担、サイズ・カラー交換の場合は当店負担です。
この後に、対象外の商品・返金の方法と時期・不良品と誤配送の扱い・申請方法を続けます。全文の表記例は、記事末尾の返品ポリシー設計テンプレートに収録しています。
最終確認画面の表示
最終確認画面では、注文する商品の名称や価格の表示に加えて、返品特約の要点を表示し、詳細ページへのリンクを置きます。返品条件が商品によって異なる場合は、ガイドラインの例のように「返品A:送料お客様負担の返品可」「返品B:原則返品可だが、条件あり」「返品C:返品不可」とパターン分けし、商品ごとにどれが当てはまるかを示す方法があります。
予約商品を扱う場合の最終確認画面や特商法表記の考え方は、予約販売の特定商取引法表記で解説しています。
返品特約を書く前に決める12項目
返品特約の文面は、返品ポリシーの中身が決まって初めて書けます。何をどこまで受けるかが決まっていないまま書くと、表示とお客様対応が食い違います。
決める価値が大きいのは「交換」の扱いです。Recustomerの2026年上半期のデータでは、返品理由の6割以上が商品の欠陥ではなく「合わなかった」ことによるものでした。
| 返品理由 |
構成比 |
| サイズが合わない |
45.3% |
| イメージと違う |
18.9% |
| ミスマッチ計 |
64.2%(アパレルは69.8%) |
出典:Recustomer「Returns, Exchanges & Delivery Report 2026 上半期」。選択式の返品理由回答を対象に、事業者ごとの構成比を等ウェイトで平均(回答30件以上の事業者)。
サイズやイメージの違いなら、交換を用意しておけば返品になるはずだった注文を売上として残せます。返品特約を書く前に、少なくとも次の12項目を決めておく必要があります。
- 受けるかどうか:返品の可否/交換の可否/期間/起算日
- 商品の条件:商品の状態/対象外の商品
- お金:送料(お客様都合)/送料(不良・誤配送)/返金の方法と時期
- 手続き:申請の方法/返送の方法/例外の判断
それぞれの項目で何を決めるか、アパレル・雑貨で決めるときの観点、決めた内容をどの画面に表示するかは、チェックリストの形でテンプレートにまとめています。
返品ポリシーが売上にどう効くかという全体像は、返品ポリシーとは?記載すべき項目と書き方で解説しています。
書いた返品特約を、運用で崩さないために
返品特約を書いた後に崩れやすいのは、申請の受付と判断です。Recustomerの2026年上半期のデータでは、返品・交換の申請の61.1%が営業時間外(平日18時〜翌9時と土日)に届いていました。
例外の判断が担当者ごとに変わると、同じ条件のお客様に違う回答をすることになります。表示したルールと実際の対応がずれると、返品特約を丁寧に書いた意味が薄れてしまいます。
Recustomerの返品・交換は、決めたポリシーをそのまま運用に乗せる仕組みです。返品可否を自動判断する動的返品ポリシーの特許技術(特許第7768617号)で、設定したルールに沿って申請を判定します。
- 申請は24時間受付。Recustomerで承認された返品申請の78.7%は、申請から1時間以内に承認されています
- サイズ・カラー交換を申請画面で選べるので、返品になるはずだった注文を売上として残せます
よくある質問
Q. 返品特約を表示しないとどうなりますか?
お客様は、商品を受け取った日から8日以内であれば、返送料を負担して返品できることになります(特定商取引法第15条の3)。返品を受けたくない商品がある場合も、表示がなければこのルールが適用されます。
Q. 「返品不可」と書いておけば、返品を受けなくてよいですか?
お客様都合の返品については、返品不可と広告に表示していれば、その内容が優先されます。ただし、不良品や誤配送の場合の販売業者の責任は返品特約とは別の扱いになるため、「返品不可」の表示で免れるものではありません。
Q. 返品特約は利用規約の中にまとめて書いてもよいですか?
ガイドラインは、共通ページにまとめる方法も分かりやすい表示と考えられる場合があるとしています。ただし、何十条もある規約の中に区分せずに埋もれさせるのではなく、「返品・交換について」のような見出しで区分し、各商品ページには要点と共通ページへのリンクを表示する必要があります。
Q. 最終確認画面には何を表示すればよいですか?
注文する商品の名称や価格に加えて、返品の可否・条件・送料負担の要点を表示し、詳細ページへのリンクを置きます。2022年6月1日の改正法施行以降、最終確認画面への表示が必要です(特定商取引法第12条の6)。
Q. 返品特約の文字の大きさに目安はありますか?
消費者庁のガイドラインは、商品の価格と同じ文字の大きさにする、色文字・太字を使うなどの例を挙げています。インターネットの場合は、パソコンの標準設定で12ポイント以上の文字が例として示されています。
まとめ
- 返品特約を表示しないと、到着後8日以内・送料お客様負担の返品を受けることになる。「返品不可」も表示していれば有効
- 表示する場所は商品ページ(法第11条)と最終確認画面(法第12条の6)の両方
- 返品の可否・条件・送料負担の3点は、価格と同じ大きさ・太字などでほかの記載より目立たせる
- 対象外の商品は「下着類(靴下を含む)」のように範囲が分かる書き方にする
- お客様都合と不良品・誤配送は、見出しを分けて書く
- 文面を書く前に、交換の扱いを含む12項目を決めておく
決める項目12のチェックリストと、○を埋めるだけで使える「返品・交換について」ページの表記例(コスメ・食品の補足つき)は、返品ポリシー設計テンプレートにまとめています。自社の表示を見直す際にお使いください。
返品ポリシー設計テンプレートをダウンロード(無料) →
出典・参考文献
- e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」(第11条・第12条の6・第15条の3)
- 消費者庁「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」
- 消費者庁「特定商取引法ガイド」
- Recustomer「Returns, Exchanges & Delivery Report 2026 上半期」
本記事は、返品特約の表示を考えるための一般的な整理です。個別の法的判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。