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  • Ryosuke Yamazumi

返品対応システムの自社開発とツール導入、コストで比較する

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返品対応システムの自社開発を検討する際、最も見落とされがちなのは「作れるかどうか」ではなく「作った後どこまで解決できるか」です。実際の商談では、既存の問い合わせフォームを流用して返品受付と自動返信を内製した企業が、「解決できたのは当初描いていた課題の2〜3割だった」と振り返った事例が記録されています。

 

返品対応の最大の競合は、実は他社の返品SaaSではなく「内製・手運用」です。この記事では、内製が成功したケースと限界に直面したケースの両方を正直に示しながら、隠れたコストと、自社開発かツール導入かを判断するための基準を解説します。

この記事の要点(30秒で読める)

  • 内製で解決できた課題は当初描いていた範囲の2〜3割にとどまった実例がある
  • 一方でリードタイムを3〜4週間→3日に短縮できた内製成功例もある
  • エンジニアがいる会社ほど「作れるけどいつやれるのか」で止まりやすい
  • 隠れコストはポリシー変更ごとの改修費・API1本約100万円
  • 判断基準は月間件数×ポリシー分岐数×開発リソースの3軸

 

返品対応システムの「自社開発とツール導入」とは

返品対応システムの自社開発とは、返品受付フォームからポリシー判定・返送指示・返金処理までの一連の業務を、社内エンジニアやカートベンダーへの発注で構築することです。対してツール導入とは、これらの機能を専門の外部サービスとして月額・従量課金で利用することを指します。

 

商談データを横断すると、返品・交換・キャンセル領域で最も多く言及される「競合」は、他社の返品SaaSではなく内製・自社開発・手運用でした。名指しの競合SaaSの合計を上回る規模で、「自分たちでやる」という選択肢が検討の俎上に上がっています。

 

内製で解決できたのは「当初描いた課題の2〜3割」だった実例

ある大手アパレル企業では、既存の問い合わせフォームを流用して返品受付と自動返信を内製し、実際に運用を開始しました。フォームさえ用意すれば返品受付は成立するように見えますが、実際に振り返ると「解決できたのは当初描いていた課題の2〜3割」だったと担当者自身が整理しています。

 

この会社の内製化方針は「自分たちでできることはまず自分たちでやる」というものでした。方針自体は合理的ですが、会員ランク別のポリシーや期間限定キャンペーンといった条件分岐、返送状況の可視化、CSの工数削減までを含めた「業務全体の自動化」には届かず、フォームという入口だけが自動化された状態にとどまったことがうかがえます。

 

内製が成功したケースも正直に書く ― リードタイム3〜4週間→3日

内製がすべて失敗するわけではありません。ある大手リユースチェーンでは、返品連絡票の手入力作業をレポート一括抽出の仕組みに置き換えることで、リードタイムを3〜4週間から3日に短縮しました。この会社ではその後「最大の競合は社内の運用改善だった」と語られ、当初の導入検討理由だった返品遅延そのものが解消されています。

 

興味深いのは、この会社が海外オフショア拠点の運用改善についても「AIを入れてランニングコストを払うより、海外の人間を使った方が安い」という判断をしていた点です。内製の成否は、対象業務が「システムでなければ解けない複雑さ」を持っているか、それとも「運用改善で十分」な範囲かの見極めで大きく分かれます。

 

内製できる会社ほど「作れるけど、いつやれるのか」で止まる

グループ内にエンジニア会社を持ち、返品システムをすでに自社開発済みの大手リユース企業もあります。この会社は「作れるものは作る」という方針を持ちながらも、実際には「作れるがリソース奪い合いで『いつやれるのか』が課題」と自ら整理していました。

 

皮肉なことに、エンジニアリソースを持つ会社ほどこの構造にはまりやすい傾向があります。返品システムの改修は他の開発案件と優先順位を競い合う立場になり、後回しにされ続けるからです。この会社は最終的に「ツール導入なら日々のアップデートも得られるため、内製と併用するハイブリッドが理想」という結論に至っています。実際、ある大手アパレル企業の担当者からも「スケールすることを前提に考えると、変に自前で実装して経路依存的にビルトインしてしまうのは意味がない」という声が上がっています。同様に、ある大手生活用品ECの担当者は「社内でスクラッチ開発が終わるのを待つより、先にツールを入れてしまった方がROIの面でも良さそうだ」と判断しています。

 

隠れコスト ― ポリシー変更ごとの改修費とAPI1本100万円

内製・カートベンダー活用の最大の落とし穴は、初期構築費だけでは見えない「継続コスト」です。商談では「25日ルールのような規制対応を個別開発しても、次の短縮が来ればまた無駄になる」「カートベンダーは作れても、ポリシー変更のたびに改修費がかかる」という声が繰り返し出ています。

 

条件分岐を1本追加するだけのAPI改修でも、約100万円規模のコストがかかるケースが商談で語られています。カートベンダーへの作り込み依頼でも、会員ランク別ポリシーや期間限定の返送料無料キャンペーンといった複数ルールを都度開発すると、1回の改修に200万円規模の費用がかかった例もあります。

内製の3つの隠れコスト

  1. 返品ポリシーを変更するたびに発生する改修費
  2. カート・決済側の仕様変更に追随するための保守対応
  3. 条件分岐・例外処理を1本追加するごとのAPI開発費(約100万円規模)

比較の軸に置くべきは、この「開発・保守コスト」と「ポリシー変更への追随速度」、そして「運用品質」の3点です。Recustomerは動的な返品ポリシーの自動判定について特許第7768617号として技術的裏付けを持っていますが、内製との比較で強調すべきはこの継続コストの差であり、特許の独占性を根拠に語るべきではありません。

 

判定表 ― 月間件数×ポリシー分岐数×開発リソースで3択に分ける

自社が内製・ハイブリッド・ツール導入のどれに向いているかは、次の3つの軸で概ね判断できます。

 

条件 月間返品件数 ポリシー分岐数 向いている選択
件数少・単純 〜100件/月 1〜2パターン 内製で十分なケースが多い
件数中・条件増加中 100〜300件/月 3〜5パターン ハイブリッド(内製の入口+ツールで条件分岐を吸収)
件数多・複雑 300件/月〜 会員ランク別・期間限定等 ツール導入が開発・保守コストで優位

 

開発リソースが潤沢にあるように見える会社でも、返品システムの改修は他の開発案件と優先順位を競います。エンジニアリソースの「有無」ではなく「他の案件に取られない優先順位を確保できるか」で判断することが、内製の実現可能性を見誤らないコツです。

 

返品申請をセルフ化しても返品率自体は増えないというデータについては「返品申請をセルフ化すると返品率は上がるのか ― 実測データで検証する」で、返金と交換の売上インパクトの差については「返金後に買い直す顧客は5% ― 返品を交換に寄せた場合の売上インパクトを試算する」で解説しています。CS体制を増やさずに返品件数の増加に耐える設計については「CS担当1人で月200件の返品を回す ― 人を増やさずに処理量を倍にする体制設計」をご覧ください。

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よくある質問

 

Q. 返品システムは自社開発できますか?

受付フォームと自動返信程度であれば自社開発は可能です。ただし実際にそれで解決できた課題は当初描いていた範囲の2〜3割にとどまった実例があり、会員ランク別ポリシーやキャンペーン条件の分岐まで含めた作り込みは、要件が増えるたびに改修が発生する構造になります。

 

Q. 返品ツールの導入費用の目安は?

内製の場合、条件分岐を1本追加するAPI改修だけで約100万円かかるケースが商談で語られています。カートベンダーに作り込みを依頼した場合も、ポリシー変更のたびに数百万円規模の改修費が発生することがあります。ツール導入は初期費用・月額固定費なしの従量課金で始められる場合があり、改修のたびに見積もりを取る必要がありません。

 

Q. 内製と導入、どちらを選ぶべきかの判断基準は?

月間の返品件数、ポリシーの条件分岐の複雑さ、社内エンジニアリソースの空き具合の3つで判断します。件数が少なく条件もシンプルなら内製、件数が多いか条件分岐が複雑になるほど、開発・保守コストとポリシー変更への追随速度の面でツール導入が優位になります。

 

Q. 内製が向いている会社の特徴は何ですか?

グループ内にエンジニア組織を抱え、返品件数が少なくポリシーもシンプルな会社です。ただしエンジニアリソースがある会社ほど「作れるがいつやれるのか」という優先順位の問題で開発が止まりやすく、ツールを併用してアップデートの恩恵を受けるハイブリッド運用を選ぶ実例もあります。

 

Q. カートベンダーに返品機能を作ってもらうのはどうですか?

簡易的な返品受付であれば作成できますが、会員ランク別のポリシーや期間限定の返送料無料キャンペーンなど複数ルールの複雑な運用は、都度の追加開発になり費用も時間もかかります。ポリシー変更が頻繁に発生する事業者ほど、この追加開発費が積み上がっていく傾向があります。

 

Q. 内製の隠れコストにはどんなものがありますか?

主に3つあります。(1)返品ポリシーを変更するたびに発生する改修費、(2)カート・決済側の仕様変更に追随するための保守対応、(3)条件分岐や例外処理を1本追加するごとのAPI開発費です。初期構築費だけで比較すると内製が安く見えても、運用を続けるほどこれらの費用が積み上がります。

 

まとめ

  • 返品対応の最大の「競合」は他社SaaSではなく内製・手運用
  • 内製で解決できたのは当初描いた課題の2〜3割だった実例がある
  • 一方でリードタイムを3〜4週間→3日に短縮できた内製成功例もある
  • エンジニアがいる会社ほど「作れるけどいつやれるのか」で止まりやすい
  • 隠れコストはポリシー変更ごとの改修費・API1本約100万円
  • 判断基準は月間件数×ポリシー分岐数×開発リソースの3軸
  • 比較軸は開発・保守コスト/ポリシー変更追随/運用品質であり、特許の独占性ではない

 

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