
2026年10月23日、消費者庁はAliExpressの運営会社が日本の「製品安全誓約」に署名したと発表しました。このニュースがEC事業者に示すのは、危険な商品を売り場から下げるだけでなく、購入済みの顧客へ通知し、返品・交換・返金まで迷わせない購入後体験の重要性です。
製品安全誓約とは
製品安全誓約とは、オンラインマーケットプレイスで販売されるリコール製品や安全ではない製品から消費者を守る、官民協働の自主的な取組です。OECDの声明を踏まえ、消費者庁などの関係省庁とオンラインマーケットプレイス運営事業者が策定し、2023年6月29日に始まりました。
誓約本文は12項目で構成され、規制当局から通知を受けた商品の削除、出品者への製品安全情報の提供、リコール情報を消費者へ届ける仕組みなどを扱います。法律そのものではなく、既存の法的枠組みを超えて事業者が自主的に取り組む位置づけです。
重要な視点:商品ページの削除は「これから買う人」を守る施策です。購入済み顧客を守るには、注文データから対象者を特定し、通知、回収、交換・返金までつなぐ別の運用が必要です。
AliExpress運営会社の署名で何が変わるのか
消費者庁の発表によると、新たに署名したのはAlibaba.com Singapore E-Commerce Private Limitedで、対象となる運営サービスはAliExpressです。同社は、日本市場で関係省庁や出店事業者などと連携し、誓約内容を履行するとコメントしています。
通販通信ECMOは、今回の参加で署名事業者が合計11社になったと報じました。同媒体によれば、規制当局から要請された安全ではない製品やリコール製品は2営業日以内の削除が求められ、2026年9月は対象4件がすべて2営業日以内に削除されました。
| 段階 | 必要な対応 | 守る利益 |
| 販売停止 | 対象SKUの特定、商品ページ・広告・出荷の停止 | 事故拡大と追加損失の防止 |
| 購入者通知 | 対象注文の抽出、使用中止と対応方法の案内 | 顧客の安全と信頼 |
| 返品・交換 | 回収ラベル、集荷、代替品、返金状況の可視化 | 返金による売上流出と離脱の抑制 |
なぜ今、販売後の製品安全が重要なのか
マーケットプレイスでは、多数の出品者と商品が国境を越えて流通します。販売時点の審査だけで危険性を完全に見抜くのは難しく、行政やメーカーから新しい情報が出た後に、対象商品を速やかに止める運用が欠かせません。
一方、EC事業者が本当に向き合うべき損失は、対象商品の返金額だけではありません。案内が遅い、返送方法が分からない、問い合わせても状況が見えないといった体験は、同じ顧客の次回購入まで失わせます。安全対応はコンプライアンスだけでなく、将来売上を守る顧客維持の仕事でもあります。
日本のEC事業者が売上と信頼を守る5つの実務
1. 商品単位ではなく注文単位で対象者を特定する
SKU、ロット、販売期間、仕入先を注文データへ結び付け、誰にどの商品が届いたかを抽出できる状態にします。対象範囲を広げすぎると不要な返品と返金が増え、狭すぎると安全リスクが残ります。
2. 販売停止と出荷停止を同じ手順にする
商品ページだけを非公開にしても、倉庫に連携済みの注文が出荷されれば被害は増えます。EC、OMS、倉庫、広告の停止担当と連絡先を一枚の手順書にまとめ、判断時刻を記録します。
3. 通知から返品申請までを一続きにする
通知には、対象商品の見分け方、危険性、使用中止の要否、返品方法、交換・返金の選択肢、問い合わせ先を載せます。顧客に注文番号の検索や長い説明を求めず、対象注文から申請画面へ進める導線が理想です。
4. 交換できる商品は返金だけで終わらせない
安全が確認された代替品を用意できる場合、交換を先に提示すれば顧客の目的を満たしながら売上を残せます。ただし、交換を強制せず、返金を含む選択肢と所要日数を明確に示すことが前提です。
5. 対応状況を経営指標として残す
通知到達率、申請率、回収率、交換率、返金完了日数、問い合わせ件数を追います。対応速度だけでなく、返金になった売上のうち交換で残せた金額と、その後の再購入率まで見れば、購入後体験への投資判断につながります。
よくある質問
Q. 製品安全誓約は法律ですか?
A. 法律そのものではなく、法的枠組みを超えた官民協働の自主的な取組です。オンラインマーケットプレイス上のリコール製品や安全ではない製品から消費者を保護することを目的としています。
Q. 今回、新たに署名した事業者はどこですか?
A. Alibaba.com Singapore E-Commerce Private Limitedです。運営するオンラインマーケットプレイス名はAliExpressです。
Q. 自社ECも2営業日以内に商品を削除する義務がありますか?
A. 2営業日以内という指標は製品安全誓約に署名したオンラインマーケットプレイスの取組です。自社ECに同じ誓約が直ちに適用されるという意味ではありませんが、リコール時の社内目標として参考になります。
Q. リコール時は返金だけ用意すれば十分ですか?
A. 十分とは限りません。対象商品の特定、購入者への通知、使用中止案内、回収方法、交換または返金、進捗確認まで一続きで設計する必要があります。
Q. リコール通知には何を書くべきですか?
A. 対象商品と識別方法、危険性、使用中止の要否、返品・回収方法、交換・返金の選択肢、問い合わせ先、更新日を明示します。確認済みの事実と調査中の事項を分けることも重要です。
Q. 返品・交換の仕組みは売上保全にどう役立ちますか?
A. 対象外商品の返品まで増やすのではなく、該当購入者を正確に特定し、交換可能な場合は代替品へ案内することで、返金による売上流出と顧客離脱を抑えやすくなります。
まとめ
- AliExpress運営会社は2026年10月23日、日本の製品安全誓約に署名した
- 誓約は12項目から成り、法的枠組みを超えた官民協働の自主的な取組である
- 販売停止だけでなく、購入者特定、通知、回収、交換・返金までが購入後体験になる
- 交換率や再購入率まで追うと、安全対応を売上・利益の言葉で評価できる
次の一歩を、負担の軽い順に選べます
いきなりご相談でなくてもかまいません。情報収集の段階なら資料から、具体的にご検討中ならオンラインでの個別相談をご利用ください。
参考・出典
- 消費者庁「製品安全誓約(日本国)」
- 消費者庁「製品安全誓約(日本国)に新たに加わるオンラインマーケットプレイス運営事業者について」(2026年10月23日)
- 通販通信ECMO「『製品安全誓約』にアリババが新たに署名、合計11社に」(2026年10月26日)