
防げる返品とは、破損や誤出荷、梱包不備など、受注・倉庫・配送工程の改善によって発生を抑えられる返品です。米物流企業ITF Groupは2026年9月30日、返品をCS部門だけの問題にせず、上流の物流判断まで遡って捉えるべきだとする「Retail Reality Check Report」を公表しました。
日本のEC事業者にとって重要なのは、米国の返品額そのものではなく、返品理由と物流データをつなぎ、返金で失う売上と再配送費を改善可能な単位で見る考え方です。返品を受け付けた後の効率だけでなく、発生前の工程まで管理対象にすると、利益を守る打ち手が見えやすくなります。
防げる返品とは
防げる返品は、購入者の好みやサイズ選択だけでは説明できず、事業者側の業務品質に原因がある返品です。代表例は、商品破損、誤商品、数量違い、検品漏れ、梱包不備、配送条件との不一致です。
一方、すべての返品を物流の責任にする考え方ではありません。返品理由を細分化し、改善できる原因と、交換・返金で顧客関係を守るべき原因を分けることが出発点です。
| 返品理由の例 | 確認する工程 | 主な改善指標 |
| 破損・汚損 | 検品、梱包、荷扱い、配送 | SKU・倉庫・配送会社別の発生率 |
| 誤商品・数量違い | 受注連携、ピッキング、出荷検品 | 出荷件数当たりの誤出荷率 |
| 遅延・指定違い | 出荷予定、配送約束、例外通知 | 遅延注文のキャンセル・返品率 |
| イメージ・仕様違い | 商品情報、画像、サイズ表記 | 商品ページ・SKU別の返品理由 |
ITF Groupの発表で示されたこと
ITF Groupの発表は、返品、輸送費、繁忙期対応を別々の課題として扱うと、共通する物流上の原因を見落とすと指摘しています。倉庫での不適切な荷扱いや輸送中の接触回数の多さは、後日「返品」という別部門の数字に表れ、元の判断と切り離されやすいという主張です。
発表が参照したNRFとHappy Returnsの2025年調査では、米国小売業の返品総額は8,499億ドル、年間売上に占める返品率は15.8%と推計されました。オンライン売上の返品率は19.3%、返品全体の9%は不正とされています。
数値の対象に注意:これらは米国市場の2025年推計であり、日本の返品率や市場規模を示す数字ではありません。本記事では、返品を原因別に分解する必要性を考える参考データとして扱います。
ITF Groupは、運賃の安さだけで配送会社を評価すると、遅延、破損、返品へコストが移る場合があるとも述べています。これは同社の見解ですが、日本のECでも「配送単価は下がったのに、返品・再配送・問い合わせを含む総コストは増えた」という状態を見逃さないための問いとして使えます。
なぜ返品と物流が別々に管理されるのか
返品はCSやEC運営、梱包と出荷は倉庫、輸送は配送会社が担当し、費用も別の予算に分かれがちです。そのため、配送単価、出荷速度、返品率が別々の会議で報告され、同じ注文で起きた出来事として結び付きません。
購入者が選ぶ返品理由も、「不良品」「その他」など粗いままだと原因を追えません。自由記述だけに頼れば集計しにくく、倉庫や配送会社へ改善を依頼する根拠も弱くなります。
さらに、返品率を下げることだけを目標にすると、申請条件を厳しくして数字を抑える方向へ進みかねません。経営が見るべきなのは、顧客の権利や利便性を損なわずに、事業者側の失敗で生じる返品をどれだけ減らせたかです。
日本のEC事業者への示唆:返品を利益の問題としてつなぐ
破損や誤出荷が起きると、商品代金の返金だけでなく、往復送料、再配送、検品、廃棄または再販、問い合わせ対応の費用が発生します。返金だけを損失として数えると、安い配送や梱包資材が本当に利益へ貢献したか判断できません。
反対に、交換で要望を満たせれば、返金で消えるはずだった売上を残せる可能性があります。返品理由を正確に取り、交換可能な在庫と選択肢を早く示すことは、物流改善と同時に進めるべき売上維持策です。
経営指標は「返品率」一つでは足りません。防げる返品の発生率、返品1件当たり総コスト、交換転換率、再配送率、同じ理由の再発率を並べると、利益に効く改善へ優先順位を付けやすくなります。
EC事業責任者が進める5つの実務アクション
- 返品理由を改善可能な粒度へ分ける:破損、誤商品、数量違い、梱包不備、遅延など、工程へ戻せる選択肢を設けます。
- 注文単位でデータをつなぐ:受注、倉庫、配送、返品、交換、問い合わせの履歴を注文番号で追えるようにします。
- 総コストを測る:返金額に加え、往復送料、再配送費、作業時間、再販時の値下げまで確認します。
- 原因別に担当を決める:商品情報、検品、梱包、配送、返品受付のどこが改善を持つかを明確にします。
- 交換と通知を同時に整える:防げなかった返品では、交換候補、返金状況、次の手続きを分かりやすく示し、離脱を防ぎます。
最初から大規模なシステム統合を目指す必要はありません。返品理由を一つ追加し、上位原因を毎月レビューするところからでも、返品を「処理件数」ではなく「利益改善の入口」として扱えます。
よくある質問
Q. 防げる返品とは何ですか?
商品破損、誤出荷、梱包不備、配送条件との不一致など、購入者の都合だけではなく、受注・倉庫・配送工程の改善で発生を抑えられる返品を指します。
Q. 今回のニュースは日本の返品市場の統計ですか?
いいえ。ITF Groupの発表とNRF/Happy Returnsの数値は米国市場を対象としています。本記事では数値を日本市場へ直接当てはめず、管理方法の示唆として紹介しています。
Q. 返品率だけを追うと何が分からないのですか?
顧客都合、商品情報、検品、梱包、誤出荷、配送破損など原因の違いが一つの比率に混ざり、改善すべき工程と利益への影響を特定しにくくなります。
Q. 最初に追加すべき返品理由は何ですか?
破損、誤商品、数量違い、梱包不備、配送遅延など、社内工程や配送に結び付けて改善できる理由を、購入者が迷わない選択肢として設けます。
Q. 返品を減らすと顧客体験が悪くなりませんか?
申請を拒むのではなく、返品の原因自体を減らす取り組みであれば、購入者の手間を減らせます。発生した返品は交換や迅速な返金を選べる状態にすることが重要です。
Q. 返品管理を売上・利益の指標にするにはどうすればよいですか?
返金額だけでなく、往復送料、再配送費、検品・再販コスト、問い合わせ工数、交換で維持できた売上を注文単位でひも付けて確認します。
まとめ
- ITF Groupは2026年9月30日、返品を物流判断まで遡って捉えるレポートを公表した
- NRF/Happy Returnsは、米国の2025年返品総額を8,499億ドル、返品率を15.8%と推計した
- 日本のECでは米国の数値を転用せず、返品理由と物流データをつなぐ管理方法を参考にする
- 返金額だけでなく、送料、再配送、検品、問い合わせを含む総コストで改善を判断する
- 防げなかった返品では交換を提示し、売上維持と顧客体験を両立させる
次の一歩を、負担の軽い順に選べます
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参考・出典
- ITF Group(GlobeNewswire配信)「ITF Group Report: Retail's $849.9 Billion Returns Problem Traces Back to a Freight Decision, Not Customer Service」(2026年9月30日)
- National Retail Federation「2025 Retail Returns Landscape」(2025年10月15日)
- National Retail Federation「Consumers Expected to Return Nearly $850 Billion in Merchandise in 2025」(2025年10月15日)