
ECの購入後体験をめぐる課題は、たいてい3つに分かれて相談されます。「返品・交換の対応に人手がかかる」「発送後の『商品はまだ届かないのか』という問い合わせが減らない」「カートに入れたまま購入をためらわれてしまう」。それぞれ担当している部署も見ている数字も違うため、別々のツールで解決するのが自然に見えます。
ただ、この3つは購入者から見ると1本の流れの上にあります。買うかどうか迷う → 買ったあと届くまで待つ → 届いたものが合わなければ返すという順番です。この流れを分断せずにつなぐと、それぞれを個別に改善したときとは違う結果が出てきます。この記事では、Recustomerの「お試し購入」「配送追跡」「返品・交換」を併用する構成で何が変わるのかを解説します。
プロダクト併用(購入前後の一気通貫)とは
プロダクト併用とは、購入前の意思決定・配送中の状況共有・購入後の返品交換という3つの局面を、同じ基盤の上でつなぐ構成です。購入者にとっては「試せる」「追跡できる」「返しやすい」が同じストア体験の中でそろい、事業者にとっては購入前後の業務とデータが1つの管理画面に集まります。

それぞれを別のツールで導入した場合との違いは、購入者が次の局面に移るときに体験が途切れないことです。お試し購入で届いた商品を返送する際に、返品・交換と同じセルフサービス画面と同じ自動集荷がそのまま使えます。配送追跡の案内画面から返品の申請に進むこともできます。事業者側も、返品率・問い合わせ件数・購入率という別々に見ていた数字を、同じ注文データの上で並べて見られるようになります。
3プロダクトそれぞれの役割
お試し購入:購入のハードルを下げる
お試し購入は、購入者が自宅で商品を試してから購入を確定できる決済体験を提供するプロダクトです。サイズや色、素材感が実物でないと判断できない商材では、「合わなかったらどうしよう」という不安が購入をためらう最大の理由になります。手元で確認してから確定できるようにすることで、この不安を購入前に取り除きます。
効果が出やすいのは、アパレル・シューズ・ジュエリー・家具など、実店舗で試すことが購入の前提になっていた商材です。試着や試用ができないというオンラインの制約を埋める位置づけになります。
配送追跡:発送後の不安と問い合わせを減らす
配送追跡は、発送後の配送状況を購入者に自動で案内するプロダクトです。注文が完了してから商品が届くまでの期間は、購入者にとって情報がない時間になりがちで、そこで生まれるのが「商品はまだ届かないのか」という問い合わせです。この問い合わせはCSにとって件数が多い一方、回答内容は配送状況の転記であることが多く、自動化の余地が大きい領域です。
配送状況を購入者が自分で確認できる状態にすると、問い合わせそのものが発生しなくなります。加えて、追跡ページは注文後に購入者が繰り返し訪れる画面になるため、ストアからの案内を届けられる接点にもなります。
返品・交換:申請と処理を自動化する
返品・交換は、購入者からの申請受付から可否判定、返送の集荷手配、返金・在庫戻しまでを自動化するプロダクトです。購入者は氏名と注文番号を入力するだけで申請でき、返品ポリシーに沿った受付可否は自動で判定されます。返送は佐川急便・ヤマト運輸の自動集荷に対応しており、購入者が伝票を書く必要はありません。集荷にかかる費用の負担(購入者・店舗)はストアの設定で選択します。
返品・交換単体での自動化範囲や連携できるシステムはECの返品・交換対応の基本とRecustomerと連携できるシステム一覧で解説しています。
併用で生まれる購入体験のループ
3つを併用したときに起きるのは、機能が3つ増えることではなく、購入体験が循環し始めることです。
| 局面 |
購入者が感じること |
事業者にとっての意味 |
| 購入前(お試し購入) |
試せるなら買ってみよう |
迷って離脱していた層が新規購入に進む |
| 配送中(配送追跡) |
いつ届くか分かるので待てる |
「まだ届かない」問い合わせが発生前に解消 |
| 購入後(返品・交換) |
合わなくても手間なく返せた |
返品体験が次の購入の判断材料になる |
順番に見ると分かりやすくなります。「試せる」ことが最初の購入を後押しし、「追跡できる」ことが届くまでの不安をなくし、「返しやすい」ことが次にもう一度買う判断につながります。そして次の購入では、また「試せる」から始まります。1つずつ導入した場合はそれぞれの局面が改善されるだけですが、3つがそろうと購入者の中でこのループが閉じます。
ポイント: 返品しやすさは、返品を増やす仕組みではなく再購入を支える仕組みとして働きます。「返せなかったらどうしよう」という不安が購入前の離脱の理由になっているなら、返品体験の整備は購入前の課題への打ち手にもなっています。
商材との相性:アパレル・ファッションで併用が選ばれる理由
3プロダクトの併用は、サイズや素材感が購入の判断を難しくする商材で特に選ばれています。アパレルのD2Cブランドでは、「自宅で試してから確定できる」お試し購入で購入前の迷いを減らし、配送追跡で届くまでの不安をなくし、返送の手間がない返品体験で「合わなかったら」への答えを最初から用意する、という組み合わせで運用されています。
重要なのは、購入率という購入前の数字が、返品・交換という購入後の仕組みと切り離せない形で動く構造にある点です。購入前の施策として広告やLPの改善を積んでも、「合わなかったときにどうなるか」への答えが用意されていなければ、迷いは残ります。購入後の体験を整えることは、購入前の意思決定を支える施策でもあります。なお、それぞれのプロダクトの効果は商材・価格帯・返品ポリシーによって異なるため、導入時は自社の数字で試算することをおすすめします。
導入は1プロダクトから段階的に始められる
3つを同時に導入する必要はありません。どのプロダクトからでも単体で始められ、あとから追加できます。
- 返品・交換から始める:CSの工数が課題として明確な場合。効果が工数削減として数字に出やすく、社内での説明がしやすい入口です
- 配送追跡から始める:問い合わせ件数の内訳で配送状況の確認が上位を占めている場合。購入者向けの案内画面を用意するところから着手できます
- お試し購入から始める:カート離脱や購入率が課題の場合。試着・試用ができないことが離脱理由になっている商材で効果が出やすくなります
あとから追加する場合も、注文データの連携やストアの設定は共通の基盤を使うため、最初の導入時の設定を引き継げます。カート・OMSの連携構成はOMS連携で返品・交換はどこまで自動化できるか、Shopify以外のカートでの構成はW2連携・CSV連携・カスタムAPI連携の3ルートで解説しています。
よくある質問
Q. 3プロダクトを同時に導入する必要がありますか?
必要ありません。返品・交換、配送追跡、お試し購入はそれぞれ単体で導入でき、運用を開始したあとに追加することもできます。追加時も注文データの連携設定は共通の基盤を使うため、あらためて構築し直す必要はありません。
Q. どのプロダクトから始めるのがよいですか?
いま数字で見えている課題から選ぶのが確実です。CSの対応工数が課題であれば返品・交換、問い合わせ件数の内訳で配送状況の確認が多ければ配送追跡、購入率やカート離脱が課題であればお試し購入が入口になります。
Q. お試し購入を導入すると返品が増えませんか?
試してから確定する体験を提供するため、返送が発生する前提の運用になります。そのため、返品・交換の自動化とあわせて導入し、返送の受付と処理が人手を増やさずに回る状態にしておくことが実務上のポイントになります。返品率や返送件数の見方はEC返品率の考え方で解説しています。
Q. 配送追跡はどの配送会社に対応していますか?
国内の主要配送会社の配送状況を取り込んで購入者に案内できます。利用中の配送会社が対象かどうかは、構成をお伺いしたうえで個別にご確認ください。
Q. Shopify以外のカートでも3プロダクトを併用できますか?
できます。RecustomerはShopifyアプリとしての提供に加えて、ECプラットフォームとのAPI連携、注文データのCSV連携、自社基幹システムとのカスタムAPI連携に対応しています。カートの種類によって併用できるプロダクトが制限されるわけではありません。
Q. 管理画面は3プロダクトで分かれますか?
分かれません。返品・交換の申請状況、配送追跡の設定、お試し購入の注文をまとめて扱えるため、担当者が複数のツールを行き来する必要はありません。
まとめ
返品・交換、配送追跡、お試し購入は、それぞれ単体でも工数削減や問い合わせ削減といった効果が出るプロダクトです。ただ3つを併用すると、「試せる」が新規購入を後押しし、「追跡できる」が届くまでの不安をなくし、「返しやすい」が次の購入につながるという購入体験のループが生まれます。導入は1プロダクトからでよく、いま数字で見えている課題を入口にすれば段階的に広げられます。
出典・参考文献
関連記事