
物流テクノロジー企業のLocusは2026年9月22日、注文画面に出す配送枠を実際の物流能力と照合する「Delivery Promise Management」を発表しました。倉庫の出荷締切から幹線輸送、配達車両のルートまでを確認し、守れる配送予定だけを顧客へ提示する仕組みです。
配送予定日は、注文後の案内事項であると同時に、購入を決める条件でもあります。早い日付を表示して受注できても、約束を破れば問い合わせ、キャンセル、補償対応が増え、次の購入まで失いかねません。
配送約束管理とは
配送約束管理とは、顧客に配送日や時間帯を提示する前に、注文をその日程で届けられるかを物流データで判定する考え方です。英語ではDelivery Promise Managementと呼ばれます。
従来の「通常3〜5日で発送」のような固定表示は分かりやすい反面、繁忙期の倉庫、欠便、地域別の配達容量を十分に反映できません。配送約束管理では、次のように表示前と注文後をつなげます。
| 判断の段階 | 確認する情報 | 顧客に見せる内容 |
| 注文前 | 在庫、出荷締切、配送先 | 候補となる配送日 |
| 注文時 | 幹線便、配達拠点、車両・配送会社の容量 | 実行可能な日付・時間帯だけ |
| 注文後 | 出荷進捗、遅延兆候、再計画 | 変更が必要な場合の早い通知 |
要点: 「いつ届くか」を物流部門が注文後に回答するのではなく、売り場が約束する前に実現可能性を確かめます。
ニュースの詳細 ― 倉庫から玄関先までを1秒未満で照合
Locusの発表によると、新機能は出荷元倉庫の締切、配達拠点へつなぐ幹線輸送、最終配達車両のルートを順に確認します。回答は1秒未満で返し、実行できる配送枠だけを注文画面へ渡す設計です。
対象は日付だけを示す通常配送のほか、大型品や設置を伴う商品の時間予約、サービス水準に応じた有料枠、環境負荷を抑える配送選択肢です。自社配送、外部の配送会社、両者を組み合わせたネットワークにも対応するとしています。
Locusは、ある小売事業者の過去1週間の注文データを使い、車両能力を意図的に制限したテストも公表しました。注文の98.5%に実行可能な配送枠を提示し、枠を提示できなかった注文の割合は3.6%から1.5%へ減り、58%減少したとしています。
数値の読み方: 98.5%と58%は、Locusが1社分の過去データで行った自社テストです。業界平均でも、日本のECへ導入した際の効果保証でもありません。
残る1.5%には無理な日程を出さず、「ルートが満杯」「締切を過ぎた」「稼働する車両がない」といった理由を返す設計です。売れない理由を隠すのではなく、改善すべき制約を運用側へ渡せる点が特徴です。
なぜ今、配送予定日の精度が売上に直結するのか
注文画面では、短い納期ほど購入を後押ししやすく見えます。ただし、その日付を物流側が守れなければ、受注時に得た売上がキャンセルや返金で消え、CS対応や再配送の費用まで残ります。
配送状況が分からず、遅延連絡も遅ければ、「いつ届くのか」という問い合わせが増えます。利用日が決まった商品では、予定を組み直せないことが次回購入を遠ざけます。
だから競うべき数字は「最短何日」だけではありません。約束した日に届けた割合と、守れないと分かった時点でどれだけ早く知らせられたかを見ます。
この2つが購入後体験の土台です。
日本のEC事業者が売上・利益のために見直すこと
大がかりな物流システムを先に導入する必要はありません。まず「守れない配送予定が、どれだけ売上と利益を削っているか」を見える状態にします。
1. 配送予定遵守率を売上指標と並べる
注文時に約束した日付と、実際の配達完了日を注文単位で記録します。全体平均だけでなく、商品、倉庫、配送先地域、配送会社、繁忙期に分けると、ずれの発生源が見えます。
同じ区分で、遅延後のキャンセル率、返金・値引き・ポイント補償、配送問い合わせ率、再購入率も比較します。配送の改善を「物流費」だけで判断せず、残せた売上と対応費の両方で評価できます。
2. 表示日を決めるデータを棚卸しする
商品別・拠点別の在庫、当日出荷の締切、倉庫の処理上限、幹線便、配送会社のサービスレベルを一覧にします。注文画面の予定日が、どのデータを使い、どの頻度で更新されているかも確認します。
在庫はリアルタイムでも、倉庫の休日や配送会社の締切が固定設定のまま、という分断は珍しくありません。まず遅延が多い一つの経路からつなぐほうが、投資対効果を検証しやすくなります。
3. 「早い枠」より「守れる枠」をテストする
一部の商品や地域で、余裕を持たせた配送予定を表示し、購入率と配送予定遵守率を同時に測ります。購入率だけを見て元へ戻すと、注文後に発生する損失を取りこぼします。
標準配送と、実現可能な場合だけ選べる有料の短納期配送を分ける方法もあります。速さを全員への無料約束にせず、物流能力と粗利に合う選択肢として設計します。
4. 遅延兆候を顧客通知につなげる
予定を守れない可能性が出たら、問い合わせを待たずに知らせます。現在地だけでなく、新しい見込み日、変更理由、受け取り方法を変えられるか、キャンセル条件を一つの案内にまとめます。
配送追跡は荷物の場所を見せるだけの機能ではありません。約束の変更を早く伝え、顧客が次の行動を選べるようにする売上防衛の接点です。
よくある質問
Q. 配送約束管理とは何ですか?
注文画面で配送予定日や時間帯を提示する前に、倉庫の締切、幹線輸送、配達拠点、車両や配送会社の処理能力を照合し、実行可能な選択肢だけを表示する考え方です。
Q. 従来の配送予定日表示と何が違いますか?
固定日数や過去の平均だけで算出するのではなく、注文時点の在庫、締切、輸送便、配達容量を使って配送枠の実現可能性を確かめる点が違います。
Q. Locusの98.5%という数値は業界平均ですか?
いいえ。Locusが1社分の過去1週間の注文データを使い、配送能力を意図的に絞って実施した自社テストの結果です。
業界全体の平均や導入効果を保証する数値ではありません。
Q. 日本のEC事業者も同じ製品を導入すべきですか?
今回の発表だけで一律に導入を判断する必要はありません。まず配送予定遵守率、遅延起因のキャンセル、配送問い合わせ、補償費を計測し、改善余地が大きい商品や地域で小さく試すのが現実的です。
Q. 配送枠を狭めると売上が下がりませんか?
選択肢を減らしすぎれば購入率を下げる可能性があります。ただし守れない短納期を表示すると、遅延後のキャンセル、問い合わせ、値引きや補償、再購入の減少につながるため、購入率と約束遵守率を一緒に見る必要があります。
Q. 最初に連携すべきデータは何ですか?
商品別・拠点別の在庫、出荷締切、倉庫処理能力、幹線便の時刻、配送会社のサービスレベル、地域別の配達可能日を整理します。すべてを一度に統合せず、遅延の多い区間から始めます。
まとめ
- Locusは2026年9月22日、物流の実容量から守れる配送枠だけを提示する新機能を発表した
- 同社テストの98.5%と58%は1社分の過去データによる結果で、一般的な効果保証ではない
- 守れない短納期は、キャンセル、返金、問い合わせ、補償、再購入の減少を通じて利益を削る
- 日本のEC事業者は配送予定遵守率と購入率を並べ、商品・地域を限定したテストから始められる
- 遅延兆候を追跡通知へつなぎ、顧客が早く次の行動を選べるようにする
次の一歩を、負担の軽い順に選べます
いきなりご相談でなくてもかまいません。情報収集の段階なら資料から、具体的にご検討中ならオンラインでの個別相談をご利用ください。
参考・出典
- Locus(PR Newswire配信)「Locus Launches Delivery Promise Management Access Ahead of Peak Season 2026」(2026年9月22日)
- Locus「Delivery Promise Management: Capacity-Checked Slots」
- Locus「7 Things to Know About Locus Delivery Promise Management」(2026年9月23日)