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  • Ryosuke Yamazumi

EUで衣料品の「売れ残り破棄」禁止スタート ― リサイクルもNG、返品商品の扱いとEC事業者への示唆

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EUで2026年7月19日、大企業による売れ残り衣料品・靴・アクセサリーの「破棄」を禁じる新規則が施行されました。対象は新品未使用の売れ残り品で、単純な焼却・埋立てはもちろん、リサイクルに回すことさえも規則上は「破棄」とみなされる点が特徴です。

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この記事では、規則の正式名称や適用範囲、なぜ今このルールが生まれたのかという背景に加え、ECが日々扱う「返品」商品がどのように位置づけられるのか、そして日本のEC事業者が今から押さえておくべき実務ポイントを、一次情報に基づいて解説します。

この記事の要点(30秒で読める)

  • 何が起きた? EUのESPR(エコデザイン規則)に基づき、大企業に衣料品・靴などの売れ残り破棄を禁止する規定が2026年7月19日に施行
  • 対象は? 従業員250名超・年間売上高5,000万ユーロ超などの基準で判定される「大企業」(海外親会社が大企業なら子会社も対象になり得る)
  • 何が「破棄」扱い? 焼却・埋立てだけでなく、リサイクルに回すことも規則上は破棄に該当
  • 返品商品は? 消費者返品で損傷・劣化した商品は例外的に破棄可能。ただし状態の良い返品品は売れ残り品と同様の扱いになり得る
  • 開示義務は? 2027年以降、大企業は廃棄数量・理由・処理方法の年次開示が必要に
  • 中堅企業は? 適用開始は2030年7月19日から。マイクロ・小企業は対象外

 

ESPR(エコデザイン規則)とは

ESPR(Ecodesign for Sustainable Products Regulation、持続可能な製品のためのエコデザイン規則)とは、EUが2024年7月19日に発効させた、製品の環境負荷低減を目的とする包括的な規則です。EU規則番号は2024/1781で、対象製品ごとに耐久性・修理可能性・リサイクル性などの要件を段階的に定めていく枠組みとなっています。

 

その中でもとりわけ注目を集めているのが、売れ残った衣料品・衣料品アクセサリー・靴の「破棄」を禁止する規定です(規則附属書VIIに規定)。欧州委員会は2026年2月9日、この禁止規定を具体化する委任規則を採択し、2026年7月19日から大企業を対象に適用が始まりました。

 

2026年7月19日に何が変わったのか

7月19日以降、EU域内で事業を行う「大企業」は、売れ残った衣料品・靴・アクセサリーを破棄すること自体が原則として禁止されます。ここでいう「大企業」は、一般に従業員250名超、または年間売上高5,000万ユーロ超といった基準(EUの企業規模区分に準拠)で判定されるとされています。

 

注意すべきは、資本関係による合算ルールです。ある事業者の株式を25%以上、大企業が保有している場合、その事業者自身の規模が小さくても「大企業」とみなされる可能性があります。EU域内に小規模な子会社・現地法人を置く日系ブランドも、親会社の規模次第では対象になり得る点に注意が必要です。

 

適用は段階的で、中堅企業(従業員50〜249名程度)への適用開始は2030年7月19日からです。マイクロ企業・小企業は今回の破棄禁止の対象外とされています。

 

企業区分 破棄禁止の適用開始 目安となる規模基準
大企業 2026年7月19日〜(施行済み) 従業員250名超 または 年間売上高5,000万ユーロ超 など
中堅企業 2030年7月19日〜 従業員50〜249名程度、売上高5,000万ユーロ以下 など
マイクロ・小企業 対象外 従業員50名未満 など

 

なぜ「リサイクルに回すこと」までもが「破棄」なのか

ESPRにおける「破棄」の定義は非常に広く、埋立て・焼却だけでなく、リサイクルやエネルギー回収に回すことも「破棄」に含まれます。これは、リサイクルであれば環境負荷が小さいという従来の発想とは一線を画す考え方です。

 

規則が優先するのは、廃棄物として処理する前段階の「再利用(リユース)」「再販」「リファービッシュ(再整備)」です。欧州環境庁(EEA)の試算では、欧州市場に出回る繊維製品のうち4〜9%が使用されないまま破棄されており、量にして年間26万4,000〜59万4,000トンに達するとされています。

 

「返品」商品はどう扱われるのか

規則は、輸送・保管・小売店舗での取り扱い中、あるいは「消費者による返品」の過程で損傷・劣化・汚損した商品については、例外的に破棄を認めています。裏を返せば、この例外に該当しない、状態の良い返品商品は「売れ残り品」と同様に、安易な破棄が難しくなる可能性があるということです。

 

EC事業者にとって、この点は実務上のインパクトが大きいテーマです。返品された商品を検品し、再販可能なものとそうでないものを仕分けるプロセスの精度が、これまで以上に問われることになります。

 

なぜ今、この規制が生まれたのか

背景にあるのは、ファストファッションの拡大に伴う大量生産・大量廃棄への批判の高まりです。EU域内では近年、ECの普及によって返品率が上昇する一方、シーズンオフの在庫やブランドイメージ維持のための売れ残り品廃棄が繰り返し問題視されてきました。

 

ESPR自体は2024年7月に発効しており、今回の破棄禁止は「発効から2年後に大企業へ適用する」というあらかじめ定められた段階施行の一環です。今後、欧州委員会は委任行為を通じて対象製品カテゴリを衣料品・靴以外にも拡大できる仕組みになっており、他業種への拡大も視野に入っています。

「破棄を止める」だけの規制ではない

開示義務も同時に導入されており、大企業は2027年以降、廃棄した数量・理由・処理方法(リサイクル/エネルギー回収/廃棄)の内訳を年次で報告する必要があります。「こっそり燃やす」ことが許されない設計になっている点が今回の規制の本質です。

 

日本のEC事業者への示唆

直接の適用対象になるのは、EU域内に大企業として拠点を持つ、または大企業の子会社にあたる日系ブランドですが、実務的な示唆は対象外の事業者にも及びます。以下の4点を押さえておくとよいでしょう。

 

1. EU向け越境EC・現地法人は規模の合算ルールを確認する

EU域内に販売子会社・現地法人を持つアパレル・雑貨ブランドは、自社単体の規模だけでなく、親会社との資本関係も含めて「大企業」判定の対象にならないか確認しておく必要があります。

 

2. 返品商品の検品・仕分けフローを今のうちに整備する

「状態の良い返品品を安易に廃棄できない」という発想は、規制対象外の事業者にとっても他人事ではありません。返品を受け取った後、再販・アウトレット出品・リファービッシュへ回すフローが整っているかどうかは、今後のブランド評価にも関わってきます。

 

3. 廃棄数量・理由を記録する体制を今から作る

2027年以降の開示義務では、廃棄した数量・理由・処理方法の内訳を報告することが求められます。直接の対象外であっても、返品・売れ残り品の処理実績を数値で把握しておくことは、今後の情報開示要請やサステナビリティ経営の観点で有用です。

 

4. 「返品を止める」から「返品後にどう活かすか」への発想転換

この規制は、返品や売れ残りの「発生自体」ではなく「発生した後にどう処理するか」に焦点を当てています。返品率を下げる努力と並行して、返品された商品をスムーズに再販・交換ルートに戻す運用体制を持つことが、EU規制の有無にかかわらず求められる時代になっています。

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よくある質問

 

Q. ESPR(エコデザイン規則)とは何ですか?

ESPR(Ecodesign for Sustainable Products Regulation)とは、EUが2024年7月19日に発効させた、製品の環境負荷低減を目的とする規則(EU規則2024/1781)です。耐久性・修理可能性・リサイクル性などの要件を製品カテゴリごとに段階的に定めています。

 

Q. 今回の破棄禁止はいつから、誰が対象ですか?

2026年7月19日から、EU域内の「大企業」(一般に従業員250名超または年間売上高5,000万ユーロ超などの基準)を対象に、衣料品・衣料品アクセサリー・靴の売れ残り品の破棄が禁止されました。中堅企業への適用は2030年7月19日からで、マイクロ・小企業は対象外です。

 

Q. なぜリサイクルに回すことも「破棄」扱いになるのですか?

ESPRにおける「破棄」の定義が、埋立て・焼却だけでなくリサイクルやエネルギー回収への引き渡しも含む、広い概念だからです。規則が優先するのは、廃棄物処理の前段階にあたる再利用・再販・リファービッシュです。

 

Q. 返品された商品も破棄禁止の対象になりますか?

消費者返品の過程で損傷・劣化・汚損した商品は例外的に破棄が認められています。ただし、それ以外の状態の良い返品商品は、売れ残り品と同様に安易な破棄が難しくなる可能性があります。

 

Q. 違反した場合の罰則はありますか?

罰則の具体的な内容は加盟国ごとに定められることになっており、規則自体が罰則額を一律に定めているわけではありません。各国当局が遵守状況を確認し、違反に対して制裁を科す仕組みです。

 

Q. 日本のEC事業者は直接の規制対象になりますか?

EU域内に大企業規模の拠点や子会社を持たない限り、直接の適用対象にはなりません。ただし、EU向け越境ECを行う事業者や、規制の考え方が国内外に波及する可能性を踏まえ、返品商品の再販・仕分け体制を見直す動きが今後広がると考えられます。

 

まとめ

  • EUで2026年7月19日、大企業を対象に衣料品・靴・アクセサリーの売れ残り品の破棄を禁止するESPR規則が施行
  • 「破棄」の定義は広く、埋立て・焼却だけでなくリサイクルも該当する
  • 消費者返品で損傷・劣化した商品は例外的に破棄可能だが、状態の良い返品品は対象になり得る
  • 中堅企業への適用は2030年7月19日から、マイクロ・小企業は対象外
  • 2027年以降、大企業には廃棄数量・理由・処理方法の年次開示義務も課される
  • 日本のEC事業者にとっても、返品商品を検品し再販・交換ルートに戻す体制の重要性が高まっている

 

出典・参考文献

  1. European Commission, Environment「Ban on destruction of unsold clothes and shoes enters into application」(2026年7月17日)
  2. CMS Law「New EU Rules to Prevent the Destruction of Unsold Textiles」
  3. Beveridge & Diamond(bdlaw.com)「EU Clarifies Ban on Destruction of Unsold Apparel, Clothing Accessories, and Footwear」

 

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