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  • Ryosuke Yamazumi

カスハラ対策が全事業主の義務に ― 「たらい回し・待ち時間」47.1%から考えるEC購入後対応

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2026年10月1日、労働施策総合推進法の改正により、カスタマーハラスメント(カスハラ)の防止措置が、労働者を雇用するすべての事業主に義務づけられました。ECの電話、メール、チャット、SNSで購入後対応を担う現場も対象です。

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同じ時期に公表された問い合わせ窓口従事者の調査では、カスハラ経験者が考える発生要因の最多が「企業のたらい回し・過度な待機時間」の47.1%でした。従業員を守る体制整備と、顧客を長く待たせない購入後オペレーションは、別々の課題ではありません。

ニュースの要点

法対応の目的は、従業員に我慢を求めることではなく、個人任せにしない仕組みをつくることです。EC事業責任者には、相談・記録・エスカレーションの整備に加え、問い合わせがこじれる前の自己解決導線と担当間連携の見直しが求められます。

 

カスタマーハラスメント対策の義務化とは

カスタマーハラスメント対策の義務化とは、顧客等からの社会通念上許容される範囲を超えた言動によって労働者の就業環境が害されないよう、事業主が組織的な防止措置を講じるルールです。2026年10月1日に施行されました。

 

厚生労働省は、カスハラを「顧客等の言動」「社会通念上許容される範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」という3要素で定義しています。電話やSNS上の言動も対象です。

 

確認項目公表された内容EC運営での確認先
施行日2026年10月1日社内方針、相談窓口、研修
対象労働者を雇用するすべての事業主CS、物流、店舗、SNS運用、委託先との連携
調査で最多の発生要因たらい回し・過度な待機時間 47.1%転送回数、保留時間、解決時間
調査で最多の発生チャネル電話 61.5%録音、引き継ぎ、上席接続の手順

 

法律が求める体制と、問い合わせ現場の実態

 

事業主に求められる5つのまとまり

主な措置は、方針の周知、相談体制、事実確認と被害者への配慮・再発防止、悪質な行為への対処体制、相談者のプライバシー保護などです。担当者一人に判断を背負わせない仕組みが要ります。

 

正当な苦情や返品・返金の申し出まで、カスハラとして一律に排除するルールでもありません。要求の内容と手段を分け、合理的な配慮や消費者の権利にも留意して判断します。

 

560人調査で見えた「顧客側だけではない」要因

株式会社リンクは、問い合わせ窓口業務に従事する男女560人を調査しました。過去1年間にカスハラに該当すると感じた行為を受けた人は47.0%、仕事への意欲が低下した人は55.6%でした。

 

発生要因の最多は「企業のたらい回し・過度な待機時間」47.1%で、「特権意識」36.2%を上回りました。録音やAI検知などを対策に活用できているとの回答は26.3%でした。

数字の読み方

この調査は、待ち時間がカスハラを引き起こす因果関係を証明したものではありません。カスハラ経験者が考える背景を尋ねた結果であり、顧客の不当な言動を企業側の責任に置き換える材料でもありません。

 

なぜ今、購入後対応の設計が問われるのか

ECの購入後には、配送状況、住所変更、キャンセル、返品条件、返金時期など、注文情報を見なければ答えられない質問が集中します。窓口だけを増やしても、注文・配送・返品の情報が分断されたままでは、確認待ちと担当間の往復が増えます。

 

株式会社リンクの調査では、該当経験が発生したチャネルは電話が61.5%で最多でしたが、担当者には調査と判断の時間が必要です。この時間差が、保留や転送として表れます。

 

日本のEC事業者が売上・利益を守るための実務

損失は問い合わせ対応の人件費だけではありません。解決前に顧客が離脱すれば、キャンセルや返金で売上が消え、次回購入の候補からも外れます。

 

逆に、注文変更や交換で解決できる案件を早く見分けられれば、返金に流れる売上を残せます。従業員保護の体制と購入後体験の改善を、同じ経営指標の中で扱う理由です。

 

見直す場所現場の指標売上・利益との接続
自己解決導線注文100件あたりの問い合わせ件数定型対応の工数を減らし、例外対応へ時間を回す
担当間の引き継ぎ転送回数、再問い合わせ率解決前のキャンセルと顧客離脱を抑える
返品・キャンセル判断解決時間、交換転換率返金で消える売上を交換で残す
従業員保護上席接続時間、相談後のフォロー離職・欠勤と採用教育コストを抑える

 

1. 問い合わせ理由を「購入後の工程」で分ける

配送、注文変更、キャンセル、返品受付、返金待ちで分類します。初回応答時間、解決時間、転送回数、再問い合わせ率を並べると、滞留箇所が見えます。

 

2. 定型案件は自己解決、例外案件は人へつなぐ

配送状況や手続きの進捗は自己解決できる導線を用意します。破損、誤配送、例外的な返品は、経緯を保持したまま人へつなぎます。

 

3. 打ち切りではなく、エスカレーション条件を決める

暴言、威圧、長時間拘束などが起きたときの上席接続条件を決めます。記録の保存と対応後のフォローも手順に含めます。

 

4. 法対応と利益改善を別々に集計しない

相談件数に加え、問い合わせ後のキャンセル率、交換転換、再購入も確認します。現場を守る施策と売上維持を同じ会議で評価できます。

法務上の注意

本記事は公表資料をもとにした一般的な実務整理です。個別の言動がカスハラに該当するか、具体的な社内規程や対応方法については、厚生労働省の指針を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。

 

よくある質問

 

Q. カスタマーハラスメントとは何ですか?

顧客等の言動で、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、それによって労働者の就業環境が害されるものです。3要素をすべて満たす場合が対象です。

 

Q. EC事業者もカスハラ対策義務化の対象ですか?

2026年10月1日から、労働者を雇用するすべての事業主に防止措置が義務づけられました。電話、メール、チャット、SNSなどの顧客対応も検討対象です。

 

Q. 事業主に求められる主な措置は何ですか?

方針の明確化と周知、相談体制の整備、事実確認と被害者への配慮・再発防止、悪質な行為への対処体制、相談者のプライバシー保護などです。

 

Q. 顧客からの苦情はすべてカスハラになりますか?

正当な苦情や改善要求まで一律にカスハラと扱うものではありません。要求内容や手段、業務の性質、従業員の状況などを踏まえて判断します。

 

Q. なぜ待ち時間やたらい回しの改善が必要ですか?

株式会社リンクの調査では、カスハラ経験者が考える発生要因の最多が「企業のたらい回し・過度な待機時間」47.1%でした。因果関係を証明する調査ではありませんが、購入後対応の滞りを点検する材料になります。

 

Q. EC事業者は何から着手すべきですか?

問い合わせ理由、初回応答時間、解決時間、転送回数、再問い合わせ率を可視化し、自己解決できる定型案件と人が扱う例外案件を分けます。同時に、従業員向けの相談・エスカレーション手順を整備します。

 

まとめ

  • 2026年10月1日から、労働者を雇用する全事業主にカスハラ防止措置が義務づけられた
  • 問い合わせ窓口調査では、カスハラ経験者が考える発生要因の最多が「たらい回し・過度な待機時間」47.1%だった
  • 従業員保護は、方針・相談窓口・記録・エスカレーション・事後フォローまで組織で設計する
  • ECでは、配送・キャンセル・返品・返金の自己解決導線と担当間連携を整え、問い合わせがこじれる前の摩擦を減らす
  • 対応工数だけでなく、キャンセル、交換転換、再購入まで追うと、購入後対応のROIを判断しやすい

 

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参考・出典

  1. 厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されました!」
  2. 厚生労働省 Webマガジン「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」(2026年8月20日)
  3. 株式会社リンク「問い合わせ窓口業務におけるカスタマーハラスメント実態調査」(2026年10月1日)
  4. ECのミカタ「カスハラ『たらい回し』『過度な待機時間』が最大の発生要因 リンク調査」(2026年10月8日)
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